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2005.10.15 (土)

「 米国メディアの情報源秘匿問題で“不可解な”新展開 対岸の火事ではない報道姿勢 」

『週刊ダイヤモンド』    2005年10月15日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 612

米国のメディアに再度不可解な展開が生じている。今回の“不可解”は9月29日、情報源の秘匿を理由に法廷侮辱罪に問われ収監されていた「ニューヨーク・タイムズ(NYT)」紙のジュディス・ミラー記者が、それまで隠し続けていた情報源を明かし、釈放されたことだ。

そもそもこの事件は、保守系コラムニストのロバート・ノバック氏がジョー・ウィルソン元駐ガボン大使の妻を実名で中央情報局(CIA)の工作員だと報じた2003年に遡る。ウィルソン元大使はブッシュ大統領のイラク政策を公に批判しており、氏の妻に関する情報はブッシュ政権内から報復のためにリークされたのではないかと疑われた。一方、CIA工作員の実名は国家機密であるため、それを暴露した人物を特定する捜査が行なわれ、ミラー記者は捜査への協力を拒んで収監されたのだ。

当初から事件にはいくつかの疑問があった。まず、最初にCIA工作員の実名を公表したのはノバック氏だが、彼は情報源についてまったく発言していない。彼のコラムの後追い調査をした記者が2人いて、その1人が今回釈放されたミラー記者だった。もう1人は雑誌「タイム」のマシュー・クーパー記者で、タイム社はクーパー記者の取材ノートを連邦大陪審に提供、すべての情報源を明らかにして訴追を免れた。

NYTのミラー記者のみ、情報源の秘匿を守り通すと宣言し、7月に収監されたが、じつは彼女はこの件でまったく記事を書いていない。

不可解な点があるが、米のメディアは、NYT社とミラー記者を支持した。ジャーナリズムで守るべきものの一つが情報源だ。匿名を条件に情報を得たからには、その匿名性は最後まで守らなければならない。圧力の下、情報源を明かさなかったミラー記者に、米国内外から多くの支持が寄せられたのは当然だ。

しかし、彼女は約3ヵ月の収監を経て、突然、情報源は、チェイニー副大統領の補佐官のルイス・リビー氏だったと明かして釈放されたのだ。CIA工作員の実名を漏らしたのがリビー氏だったことは、クーパー記者の取材ノートおよび証言によってすでに明らかにされていた。

また、リビー氏の代理人は今回のミラー記者の件について「ミラー氏が(リビー氏の名前を出して)証言することは、一年以上も前に了承していた。彼女の証言拒否は、ほかの情報源を守るためかと思っていた」と語った。リビー氏の名前はすでにクーパー記者がリビー氏の合意を得たうえで明らかにしているのであるから、公平に見て、リビー氏代理人のコメントは信じられる。

状況を眺めて明白なのは、ミラー記者の行動原理の不可解さだ。NYTは今回の件について苦しい社説や記事を書いている。10月3日の社説では「連邦政府が仕事をやり遂げようとする記者を収監するのを、世界中が見つめていたと認識するのは(米国の)恥である」「ミラー記者の事例を機に、記者への保護規定を連邦裁判所にも広げるべきだ」などと書いた。

他方、「ジャーナリストの権利に負の影響か」とのサブタイトルを付けた同日のシーライ氏のコラムで「情報源について語らない記者も、一定期間収監すれば、刑務所暮らしがつくづくいやになり、最後には妥協すると見られかねない」「(当局が)知りたい情報を告白させるには、記者をただ刑務所にブチ込めばいいという声さえ出てくる」との懸念も表明した。

少なからぬ記者たちが、詳細な情報が明らかにされるまでミラー記者の件については判断を下せないと述べており、私も同様である。

メディアの役割と責任は非常に大きく重い。そのことを自覚するだけに、米国メディアで起きた不可解な事件に目が吸い寄せられる。

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トラックバック: 4件

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「 米国メディアの情報源秘匿問題で“不可解な”新展開 対岸の火事ではない報道姿勢 」

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