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2005.09.24 (土)

「 小泉政権が警戒すべき陥穽は環境が生み出す独裁体制と公明党に対する過大評価 」

『週刊ダイヤモンド』    2005年9月24日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 609

予想どおり、小泉純一郎首相は圧倒的な勝利を得た。300に迫る296もの議席を得た小泉自民党が極力注意すべき点は、いわゆる小泉独裁体制の陥穽にはまらないことだ。

これまでにも、少なからぬ政治家が“小泉独裁”“ファッショ”という表現で首相批判を展開した。それらの多くは、首相が人の忠告を聞かない思い込みの強い性格だという皮相な次元で語られてきた。だが、真に警戒すべきは、首相の性格次元での事象より、首相を取り巻く環境が首相に独裁的な権限を許してしまうことだ。

民主主義と全体主義は、その本質において必ずしも対立する概念ではない。それらは相通じ合う性質を持つ。民主主義の最も醜悪なケースが、ヒトラーの台頭と彼の暴走を、熱狂をもって支持したナチス時代の全体主義だった。

政治評論家の遠藤浩一氏は、首相が選挙という民主主義的な手続きを経て、公明党と合わせて全議席の三分の二を手にし、憲法改正以外すべて可能になったことの意味は深刻だと説く。遠藤氏は選挙前に、自民党は単独で300議席到達の可能性あり、と予測していた(「諸君!」10月号)。“小泉首相が8月1日の靖国参拝を断行すれば”という条件つきながら、自民党の300議席の大勝を予測したのは、私の知る限り、氏一人である。氏が指摘した。

「首相にものを言えない雰囲気になりつつあります。国民の圧倒的支持を得た政権の力は、誰も否定出来ない強さを持ち、偉業を達成する力にも、国家を悲劇に導く力にもなり得ます」

首相自身よりも、首相を取り巻く環境が独裁体制を生み出していきかねない、との警告だ。

遠藤氏はまた、それを加速するのが公明党だと分析する。自民大勝で、自公の力関係は逆転した。先週の当欄で指摘したように、この大勝を、自公連立から脱出して自民党らしい党を築いていくきっかけにすることは十分に可能だ。そのためには、自民党は公明党とは異なる政党だという明確な意識を、自民党議員が持たなければならない。

だが、大勝した自民党に、連立を解消する動きは皆無であるばかりか、選挙直後に連立協定書に署名するなど、逆コースを進みつつある。遠藤氏はその理由を、参議院で自民党が過半数を持っていないことに加えて、公明党への過大評価があると指摘する。

「今回、小選挙区で当選した自民党219人中190人が公明党の推薦を得ており、勝率は八割を超えます。自民党は、公明党の支援が支持を底上げしてくれたと考えているのです」

自民党議員のあいだに「比例は公明党に!」と叫ぶことへの抵抗感がなくなっていると語ったのは、中川秀直・国会対策委員長だ。

中川氏はこうも語った。
「公明党との協力は、非常にうまくいっています。なんの問題も抵抗感もありません」

一方の公明党側には“八分の一理論”への思いがあるといわれる。国会を支配するには全議員の二分の一を持てばよい。さらにその半分、つまり全体の四分の一で首相の座を取れる。さらにその半分、八分の一で主流派の主導権を取れる。かくして、八分の一で日本の政治を支配出来るという考えだ。

将来における公明党単独政権への言及が公明党内部から聞こえてくるが、八分の一理論を念頭におけば、自民党に入り込むことによって、それも不可能ではない。そんな旨味のある連立から公明党が離れる理由はない。むしろ公明党も、国民の強い支持を得た小泉首相に逆らわずに、首相の“独裁”をもり立てていく方向で動く可能性がある。だからこそ私たちは、自民党に大勝をもたらした責任を果たすためにも、心して小泉政治を監視しなければならないのだ。

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