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2005.09.22 (木)

「 小泉新政権への国民の責務 」

『週刊新潮』 '05年9月22日号
日本ルネッサンス 第182回

1993年10月、カナダの与党、進歩保守党が総選挙で大敗、キャンベル首相も落選し、154議席からわずか2議席に転落した。政権与党から泡沫政党への転落。小選挙区制度の下ではことほど左様に勝敗が劇的に分かれることを示した一例である。

9月11日の総選挙ではまさしく小選挙区制の効果が現れた。自民党は単独絶対安定過半数を優に超える296議席を手にした。公明党と合わせれば327議席で、全議席の3分の2を超える。仮に参議院で法案が否決されても、再び衆議院で成立させることの出来る力を得たのだ。一瀉千里、怒濤の勝利を片方にもたらした選挙制度は、私たちが是として選んだ制度である。

新自民党は、しかし、一体どんな党になるのか。高い支持を与えた有権者の責務として考えなければならないことは多い。

投票当日夜の選挙番組で石原伸晃氏が興味深いことを言った。「新たに入ってきた若い人たちは、僕から見てもデジタルな人たちでよくわからない」と。

“デジタルな人々”は“自民党らしくない人々”ということになろうか。“これまでの”自民党の香りとは異る香りをもった人々と言ってもよいだろう。

新しい人材は、いずれも実力を備えた人々である。猪口邦子氏は上智大学教授で、2002年から04年まで軍縮会議日本政府代表部特命全権大使を務めた。

佐藤ゆかり氏は財務省税制問題研究会、経済産業省産業構造審議会、自民党財政改革研究会などに名を連ねるエコノミストである。藤野真紀子氏は料理関係の雑誌やテレビ番組で活躍し、「カリスマ主婦」で政治と料理には相通ずるものがあると述べる料理の達人である。

こうした新人材が自民党内でどのようなポジションを得て、どんな活躍を展開していくのかは、現時点ではわからない。ただひとつわかっているのは、私たち有権者は、自民党の新しい人材が、“郵政民営化”に賛成であること以外、この人たちをほとんど知らないということだ。

“新しい人材”の腹の中

大勝した小泉首相には課題が山積している。たとえば拉致問題である。2004年5月22日に、首相は2度目の訪朝で述べた。「平壌宣言が守られている限り、日本は北朝鮮に経済制裁を行わない」と。

しかし、北朝鮮は米国に対し、2005年2月、自ら核を製造していると宣言した。平壌宣言など当初から守っていない。横田めぐみさんのものとされたお骨が他人のものであったことも判明しているいま、日本政府は経済制裁を科すという政治の意思を明らかにすべきなのだ。

北朝鮮の核とミサイルを討議する場としての6カ国協議の進展を待つのではなく、制裁を宣言しなければならないのは、そうせずには日本政府の言葉は実行を伴わないと世界に示すことになるからだ。

この対北朝鮮外交について、自民党新人たちはどう考えるだろうか。または東シナ海の海底資源についてはどうか。日本の総選挙の間、中国海軍の駆逐艦が春暁天然ガス田の周囲を遊弋(ゆうよく)している姿がはじめて確認されている。

日本政府は、中川昭一経済産業大臣が帝国石油に同海域での試掘権を与えた。しかし、民間企業の帝国石油が実際に試掘を始めるには作業の安全が担保されなければならない。中国海軍の軍艦が展開する海域で日本企業の試掘の安全を担保するのは海上保安庁の仕事ではなく、海上自衛隊の仕事である。東シナ海資源問題は、経産省の手をはなれ、防衛庁、外務省なども一体となって取り組まなければならない課題になっているのだ。

憲法改正も焦眉の急を要する。靖国神社問題については首相が参拝を取りやめれば、中国側は圧力が功を奏したと考えるであろう。その種の圧力の構図の中に日本が埋没すれば、あらゆる歴史問題が日本を攻める材料となる。首相が参拝しないことで日中関係により深い影がさす次元に立ち至っているからこそ、参拝が重要なのだ。

これら一連の問題を新しい人材はどう考えるのだろうか。

肥大した政権を監視せよ

今回の選挙では、よい意味での自民党らしさを備えている平沼赳夫氏や古屋圭司氏、そして、若手ながらなかなかの人材である城内実氏らが、皆、党を排斥された。城内氏は落選したが、平沼氏と古屋氏は無所属で当選した。

しかし、その彼らを小泉自民党はいまも将来も排斥し続ける構えである。彼らの掲げる政策をみても、また、途中で妥協せずに無所属で選挙を戦った方法をみても、彼らは高く評価すべき人々だ。

無論、郵政民営化に反対して党を放逐される仕儀に至ること自体、読みが甘いという非難もある。しかし、たとえば、平沼氏と古賀誠氏、高村正彦氏らを較べてみるのもひとつの見方だ。

古賀氏も高村氏も、ベテランの政治家であり、各々の派閥やグループでの実力者だ。彼らはそうした立場で郵政民営化反対論を展開し、周囲に影響を与え、そして最後の投票の場面で議場から姿を消した。投票を棄権し、のちに郵政民営化に賛成し、公認をもらい無事当選した。その行動によって、彼らは政界で指導的立場に立つ資格は失ったと、私は思うが、それにしても、こうした人物らが、ベテランとして自民党内に残ったことの意味は深刻だ。

よき保守としての自民党の色彩は、新しい人材によって変えられ、加えて古い人材によってもまた変えられていくのではないか。

私たちは小泉首相のこれまでの政治信条も、知っておかなければならない。かつて小泉首相はPKOで自衛隊を海外に出すことにも反対だった。その人物が、イラクへの自衛隊派遣を決めた。首相はかつては政治改革にも反対だった。派閥解消にも反対で、派閥こそが自民党だと語っていた。

首相が心をひるがえして決めたイラクへの自衛隊の派遣も政治改革も派閥解消も私は正しい方向だと思う。だから、現在の政策を支持する立場だ。だが、かつて小泉首相は異なる考えを抱いていた。変化はどのような理由によるのか、小泉首相は説明していない。変化の方向が正しいとしても、背後にある理由がわからないために、首相の政策には常に一抹の不安を抱かざるを得ない。

だからこそ、この人物にオールマイティの力を与えたいま、私たちは心して小泉首相と新自民党をチェックしなければならない。力を与えた者にはその力を持つに至った者を厳しく監視し、自らの判断が正しかったのかどうかを謙虚に省みる責任がある。小泉政権に期待すると共に、私たちにはこの肥大化した政権と共に歩む覚悟が必要なのである。

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