「 羽田空港を国際化しアジアのハブに、日韓間にシャトル便を 」
『週刊ダイヤモンド』 2001年2月24日号
オピニオン縦横無尽 第385回
昨年暮れに日経BP社がインターネット上で羽田を国際便にも使用すべきか否かのアンケート調査をしたところ、95.6%が「すべき」と答えた。この調査結果は、私の実感でもある。
首都圏からのアクセスが便利になる、国内線との接続が容易になるという理由に加えて、羽田がアジアのハブ空港になるべきだと答えた人も右の調査では3割以上に達した。
羽田を国際空港にという議論は、扇千景国土交通相の提案でクローズアップされ、その後、また、沈静化してしまっているが、前向きに考えるべき課題だ。日経BP社の調査をみるまでもなく、羽田の国際化は、まさに国民の望むことである。利用者が求めている首都圏発国際便のサービスが事実上無視され続けている現状は直していくべきだ。また、日本がアジアのハブとしての力を発揮していくためにも、時間的に、したがって経済的にも負担の大きい成田のみでの首都圏国際便の受入れという現状は改善していくべきだ。
現在、羽田は“千葉県側の配慮”や“英断”によって、深夜と早朝の国際チャーター便および国際ビジネス自家用機の乗入れが許されている。たしかに、成田闘争の歴史と犠牲の数々を想えば、千葉県側の苦労は並大抵のものではない。現在も続くそうした苦労に対して、国際線の独占で報いてきた歴史的経緯もよくわかる。
が、羽田にもっと自由な国際線の乗入れを許したとしても、成田が衰退していくわけでは決してない。なんといっても、日本に期待されている国際便受入れの容量は、成田空港の容量をすでに上回っているとみられるからだ。
たとえば日本と韓国の人間の往来をみてみよう。日韓間にはざっとみて、毎日、1万人が往き来している。昨年でみると、日本から韓国を訪れた人は210万人、韓国からは116万人が訪日した。うち、240万人あまりが成田・ソウルの国際線を利用している。
航空会社に問い合わせれば東京・ソウル便の予約がそう容易ではないことがすぐにわかるだろう。混んでいて希望どおりの日時のフライトがとれないことも珍しくない。利用者側からみれば、増便と、成田のみならず羽田からのフライトが最も好ましい。
21世紀の日本の行く末を考えれば、朝鮮半島との距離を、実態としてもっと縮めていくことは必須だ。日本がアジア諸国でより広く深く受け容れられ、重要な役割を果たしていこうとするときに、最も厳しい対日批判は往々にして、韓国から起きがちである。
それは両国間に今も色濃く横たわる歴史問題とそれに対する見方において、相互に感情的な側面を処理しきれていないことが、大きな原因だ。歴史は、その国その国によって見方が異なるにしても、幅広く活発な交流を重ねていくことで癒され、理解されていく部分は少なからずある。
そのためには多くの人びとが、単に仕事目的だけでなく、学生時代から、または子ども時代から交流を進めていくことが大切だ。より多く触れ合う機会を可能にすることで、互いのあいだのさまざまな壁は、自然に低くなっていくはずだ。
韓国の金大中大統領が、先に羽田・ソウル間にシャトル便を飛ばそうと提言した。もしそれが実現すれば、交流の幅はぐんと広がる。日韓がよりよく理解し合い、よりよい関係を築いていくのに、必ず、シャトル便は役立つはずだ。それに、近づいてきつつあるワールドカップサッカーゲームに関しての人の往来もスムーズにいくだろう。
目前の課題も長期の課題も、シャトル便であらかた片付くのではないか。羽田をまずシャトル便のために開放し、次により積極的な活用を考えるべきときだ。