「“実利優先”“主義主張なし” 韓国・李大統領の政治危機」
『週刊ダイヤモンド』 2008年6月21日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 744
韓国の李明博大統領が政権発足100日あまりで早くも危機に陥っている。2月末の就任時には0%を超えた支持率が、現在10%台に急落。6月10日には全閣僚が辞意を表明した。
この緊急事態を招いた直接の原因は米国産牛肉輸入の全面解禁に踏み切ったことだ。4月19日の米韓首脳会談を前に、李大統領は盧武鉉前大統領の反米左翼路線を打ち消し、親米路線を打ち出す象徴の一つとして、全面解禁を決定したのだが、世論は、国民への十分な説明もなく大統領が強権を行使したと受け止めた。
テレビも新聞も、「国民に狂牛病の肉を食べさせるのか」と感情的に報じ、国民の怒りをあおった。一連の報道はBSEに関するごく初期の報道がそうであったように、きわめて非科学的だ。へたり込む牛の映像を頻繁に流し、米国ではBSEの牛肉で男児が死亡したと事実誤認の報道を繰り返す。結果として、大統領の支持率は下がり、全閣僚が辞意を表明するに至ったのだ。
状況打開に向けてどんな手があるだろうか。本来ならBSEについて語り、報道の誤りの指摘を徹底するべき局面だ。だが、大統領はそれをせずに国民に「世論の意見に十分耳を傾けなかった」と謝罪した。ここまでくれば閣僚らの辞意表明を受けて責任閣僚を更迭し、混乱の収拾に乗り出すだろう。
しかし、それで問題が解決されるとは思えない。理由は、あらゆる分野に旧政権時代の勢力が温存されているからだ。彼らの基本的価値観は反米、反日、親北朝鮮である。彼らは李大統領の一挙手一投足を眺めながら、韓国政治の流れをかつての金泳三、金大中、盧武鉉政権の左翼方向へと引っ張っていこうとする。
そのような政治勢力に対して、大統領は無防備、無力である。彼が掲げる旗印は、経済的な利害損得に立脚する「実用主義」でしかない。それではイデオロギーを掲げて闘争を挑む北朝鮮シンパには、歯が立たないのだ。
李大統領に期待されたのは「韓国の失われた一五年」と呼ばれる左傾化路線をまともな保守路線に引き戻すことだった。しかし、これまで、その期待に応えていない。
大統領就任後の最初で最大の課題は4月9日の総選挙だった。そこで早くも大統領は重大な間違いを犯した。ハンナラ党の公認候補を自らが中心となって党本部で決定したのだが、選ばれたのはほとんどが大統領に近い人物たちだったのだ。考え方や信念において信頼できる政治家や力量あるベテラン政治家はほとんどが公認漏れとなった。
取り巻き重視の手法はハンナラ党内に深い亀裂を生じさせた。そして同党議員の約6割が初当選の新人議員となった。国会運営がスムーズにいかず、本来生じるはずのない摩擦や不協和音で政権基盤が弱まるのは当然である。
総選挙では、李大統領の国家観の欠如を示すもう一つの事例が際立った。キャンペーンで、安全保障問題にも北朝鮮の核の問題にもひと言も触れなかったのだ。早稲田大学客員研究員の洪辭虫≠ヘ、大統領は韓国政治の直面する厳しさを理解していないと語る。
「韓国には金日成の主体思想を信奉する政党が厳然として存在します。朝鮮労働党の南支部といわれる民主労働党、主体思想を信奉する統合民主党など、親北左派の政党が299議席のうち89を取りました。ハンナラ党の国会議員の補佐官などのなかに約30人の民主労働党の党員が存在すると見られます。彼らは大統領の隙を突こうと虎視眈々です。主義主張もなしに経済優先の実利主義で、この政治的危機を乗り越えることはできないのです」
6月10日にソウル市街を埋めた約10万の人びとは牛肉問題批判を超えて大統領の辞任要求を掲げるに至った。背後には約1,700の左派系市民団体がいると見られている。韓国はいまだ南北朝鮮の厳しい闘いの現場なのだ。
真鍋かをりさん
「眞鍋かをりさんとの対談動画をアップします!!」
(城内実の「とことん信念」ブログ)
先日、城内実さんと対談された真鍋かをりさん。
普段ほとんどテレビを観ない私(喜八)です…
トラックバック by がんばれ城内実(きうちみのる) — 2008年06月22日 13:02