「 歴史捏造のNHKは朝日と同じだ 」
『週刊新潮』 2021年3月11日号
日本ルネッサンス 第941回
慰安婦に関する嘘は、朝日新聞が喧伝した吉田清治という詐話師の捏造話が発端となって世界に広まった。戦時朝鮮人労働者は強制的に狩り出され、賃金も貰えない奴隷労働者だったという嘘は、NHKの報道が発端だったと言える。
朝日新聞は2014年に、吉田清治に関する記事の全てを、間違いだったとして取り消した。他方NHKは、彼らの報じた長崎県端島、通称軍艦島を描いた「緑なき島」が今日まで続く徴用工問題の元凶となっているにも拘わらず、訂正を拒み続けている。
「緑なき島」は1955(昭和30)年に報じられた20分間のドキュメンタリーである。端島を含む明治産業革命遺産の研究における第一人者、加藤康子氏が66年前のドキュメンタリーの問題を指摘した。
「炭鉱の坑内の映像はやらせをしています。それに合わせてナレーションの原稿もドラマチックに書いたのでしょう」
「緑なき島」で描かれている端島炭鉱の坑内映像は誰が見ても奇妙だ。まず鉱夫たちが次々に坑道に入っていく。皆作業服をきっちり着込みランプ付きのヘルメットをかぶり、丈夫そうな靴も履いている。
ところが、実際に石炭を掘る次の場面では、全員がふんどし一丁の裸体になっている。ヘルメットのランプはなくなっている一方、腕時計だけはきっちりはめているのもチグハグだ。
「当時端島の炭鉱を経営していた三菱鉱業は保安規定で作業服、ランプ付きヘルメットなしで坑内に入ることを固く禁じています。裸で石炭を採るなど、あり得ないことでした。また、坑道は海中深く掘り下がっています。ランプがなければ真っ暗です。それに昭和30年当時、腕時計は高価で貴重でした。石炭採掘現場に時計も含めて私物を持ち込むというのはなかったことです」と、加藤氏が語る。
「緑なき島」ではまた、坑道は高さがなく、鉱夫たちは全員這いつくばって作業している。だが、これも端島ではあり得ないことだった。
「日本発の歴史捏造」
先述したように端島は海底深く、1100メートルまで斜め竪形に掘り込んでいる。三菱の規定では坑道の高さは1.9メートル以上とされていたが、映像では、坑道の高さがないかわりに、空間が水平に広がり、そこで裸の男たちが這って働いている。だが、実際の端島の坑道にはこのような平場の採掘現場はなかった。
明らかにこれは端島炭鉱の映像ではあり得ない。加藤氏の「やらせ」だという指摘は間違いないだろう。事実、映像を見た元島民全員が、「これは端島じゃない」と証言している。
NHKがやらせで報じたこの映像は韓国に伝わり、朝鮮人鉱夫がこのような形で酷使されたという「事実認定」へとつながっていった。その一例が韓国の国立歴史館に展示されている写真であろう。それは高さのない坑道で上半身裸の男性がうつぶせになって石炭を掘っている写真だ。朝鮮人がこんな形で奴隷労働させられたという象徴的な一葉だ。だが写真の男性は朝鮮人ではなく日本人だ。戦後、廃鉱になった炭鉱で盗掘しているのを、日本人の写真家が撮影したものであることが確認されている。そのベタ焼きも残っている。
66年前のNHKの報道は、厳しい安全管理のルールが徹底されていた現実の炭鉱では明らかにあり得なかった嘘のイメージを作り出した。事実に反する内容であるにも拘わらず、それがドキュメンタリー映像として独り歩きを始めた。韓国が触発され、前述の裸で盗掘する男性の写真に飛びついた。写真はユネスコの明治産業革命遺産登録に反対する韓国側の運動の中で、ニューヨークのタイムズ・スクエアに反日のスローガンと共に掲げられた。さらに2018年10月には、韓国大法院が彼らの云う徴用工問題で日本企業に賠償を命ずるとんでもない判決につながった。
66年前NHKが報じた「緑なき島」のやらせ映像は、現在の問題に直結しているのである。「それだけではない」と指摘するのは麗澤大学客員教授の西岡力氏だ。
「1974年に三菱重工爆破事件が起きました。犯人たちは日本人ながら、大学時代に朴慶植氏の書いた『朝鮮人強制連行の記録』を学んで、日本が朝鮮人を酷い目に遭わせた、その日本企業に報復のテロをしなければならないと考えた。三菱重工がターゲットにされましたが、理由は朝鮮人戦時労働者を使っていたということです」
爆破事件は74年8月30日。しかし、彼らは9月1日、関東大震災で「朝鮮人が虐殺された」とするその日に、復讐を企てていた。しかし日曜日でオフィス街の丸の内には人がいない。土曜もいない。そこで金曜日の8月30日が犯行日になった。
「つまり犯人たちは日本企業が本当に朝鮮人に奴隷労働をさせたと信じ込んでしまった。そうした印象を強烈に与える映像をNHKが作っていた。66年前から始まった日本発の嘘が語り継がれ、広がり、深刻化していった。慰安婦と同じ、日本発の歴史捏造なのです」(西岡氏)
“悪者”のイメージ
さて、加藤氏の働きがあり、昨年3月に産業遺産情報センターが東京・新宿区に開設された。そこには端島の暮らしが、多くの元島民の証言と共に展示されている。VTRの映像と肉声で、端島では日本人も朝鮮人も平和で協調的に暮らしていたことを私たちは知ることができる。
それに反発したのか、NHKがまたもや動いた。66年前の「緑なき島」で描いた奴隷労働こそが島の実態だったと言うかのような「実感ドドド! 追憶の島~ゆれる歴史継承」という番組を、昨年10月16日、九州、沖縄ローカルで放送したのだ。加藤氏も島民もNHKの取材に応じたが、まともには取り上げてもらえず、反対に“悪者”のイメージで取り上げられた、と憤る。
元島民の皆さん方は昨年11月20日にNHKに抗議文と質問状を送った。論点は四つである。➀炭坑内の映像の検証、➁韓国を含む全世界への訂正、➂複製等を残すことなく完全撤収、➃元島民の誇り、自尊心を踏みにじったことへのお詫び、である。
NHKの回答は「別の炭鉱で撮影された映像が使用されたという事実は確認されませんでした」という木で鼻を括ったようなものだった。
「あのドキュメンタリーを見た元島民全員が、あれは端島の炭鉱ではないと証言しているのです。報道機関として、やらせを否定するのなら、その証拠を示すべきでしょう」
加藤氏の憤りはもっともだ。そんなNHKになぜ、私たちは受信料支払いを強要されなければならないのか。公共放送だからというのが理由らしいが、国益を損ない、日本人の名誉を傷つけるこんな虚偽放送を続けるNHKを許してはならないだろう。