「ノーベル物理学賞受賞が示唆する大学改革の見直しの必要性」
『週刊ダイヤモンド』 2008年10月18日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 760
三人の日本人学者がノーベル物理学賞を受賞した。受賞のニュースは、金融危機や株式市場の落ち込みで意気消沈しかけていた日本に、大きな喜びをもたらしてくれる。
若き時代に三氏が取り組んだのは、宇宙や物質の成り立ちにかかわるきわめて根源的現象の理論的解明である。各紙は三氏の業績について、紙面を大きく割いて説明している。まるで新聞が物理の教室になったかのようだ。
受賞した南部陽一郎氏は東京大学理学部卒業後、1956年に渡米、米国籍を取得して、現在シカゴ大学名誉教授だ。受賞理由は物質の質量の起源を「対称性の自発的破れ」として理論的に説明したこととされる。
一方、共同受賞の益川敏英氏と小林誠氏は共に名古屋大学大学院で学んだ。五歳違いのこの先輩と後輩は京都大学理学部で、共同研究に入った。両氏の研究は、なぜ宇宙に物質が存在するのかを説明する気宇壮大なものだ。
宇宙は、137億年前、ビッグバンで誕生したが、そのときエネルギーが転化して物質が生まれた。その当時、宇宙には素粒子と質量が同じではあるが、電荷が逆の反粒子が、粒子と同じ数だけあったのだという。
粒子と反粒子がぶつかると、光エネルギーになって両方とも消えてしまうが、今、宇宙には反粒子は存在しない。粒子だけが残ったのは、両者の性質が異なるからで、それを前述のように、南部氏が61年に「対称性の自発的破れ」として理論づけた。
物質の最小単位の素粒子は六種類あるとの推論を実験で証明することで、南部氏の説を、さらに矛盾なく説明し、素粒子論の基礎固めをしたのが、益川、小林両氏だ。
それにしても、今も宇宙に反粒子が存在すれば、粒子でできている銀河は存在しない。反粒子が輝く銀河を消し去り、果てしなく広がる夜空は真っ暗な空間になっていたかもしれないのだ。
それより前に、地球も粒子でできているのであるから、地球自体が消滅していたことになる。となると、私たち人類も存在しなかったはずだ。本当に、科学はおもしろい。
三氏の受賞は私たちにいろいろなことを教えてくれる。まず第一点は、各氏の研究発表は、南部氏が61年、益川、小林両氏が73年。47年前と35年前、ずっと以前のことだったのだ。
科学分野での研究成果は、これだけ長い年月が過ぎなければ、その真価は、常人には判断できないのだ。事実、三氏が研究成果を発表した当時、同僚たちでさえ、疑問の目で見たという。
今日、国際社会が高く評価する研究を、数十年も前に成し遂げていたことは、日本の実力のすごさを実感させる。かといって、日本の底力が依然として強いのか。大いに疑問である。
かつての日本は、今回の三氏らがそうであったように、主として国立大学を拠点として、理学部のような地味な分野の研究と研究者を守ってきた。科学研究費は潤沢ではなかったが、その範囲内で自由な研究が許容された。5年や10年で目に見える成果が出なくとも、研究、特に科学の基礎研究とは本来そんなものだと理解して、研究者を守ってきた。
けれど、その学問的風土がいまや消滅しつつある。法人化された国立大学の教育、研究からは、悪い変化ばかりが目につく。科学分野に絞って見れば、各種研究は6年間で成果を上げることが求められている。しかも、その間、一年ごとに研究の進展具合を報告しなければならず、その内容によって研究費が増減される。
たった6年間で、どんな基礎研究ができるのか。しかも、一年ごとの評価だ。こんなめちゃくちゃな方針で、国立大学が蝕まれている。大学改革の根本的見直しなしには、日本の科学研究に未来はないと、今回のノーベル賞受賞のうれしいニュースが告げている。
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トラックバック by 闕芽漆蟠幄オキ繝シPRIDE OF JAPAN — 2008年10月19日 09:01
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