「理念を超えた実用を唱える韓国・李大統領の閣僚布陣への不安」
『週刊ダイヤモンド』 2008年3月22日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 732
李明博大統領ははたして韓国の救世主となりうるか。金大中、盧武鉉両政権下の「失われた10年」の傷を癒やし、韓国再生を成し遂げられるか。韓国には期待よりも不安が広がっている。韓国で最も信頼されている言論人、趙甲済(チョウカプセ)氏が語った。
大統領は、理念を超えて実用を重んじると言います。しかし、実用主義は理念を踏まえてこそ真の実用主義なのであって、理念なき実用主義は行商人の打算にすぎないのです」
国家元首としての哲学もなしに、実用主義を強調することの危うさを、趙氏だけでなく、多くの韓国の友人が口にする。韓国人にとって、理念という言葉は特別に深い意味を持つ。彼らが語る理念は、金日成の主体思想と、韓国を支えてきた自由と民主主義の対立構造のなかで、どちらの側に立つかという思想選択の意味合いが深いのだ。
韓国はこの10年、理念を置き去りにした結果、北韓の金正日に手玉に取られ、理念なき国家の悲哀をいやというほど味わった。李明博大統領は、北朝鮮の主権の尊重などと、軽薄な知識人のように言ってはならないのです」
趙氏は、大統領就任前の李明博氏の政策立案およびその理論的支柱の一角を担っていた。その趙氏が今、大統領に厳しい注文をつける背景には、新政権の閣僚人事のおかしさもある。
李明博政権の閣僚名簿には、重要ポストを担う前政権の人材が並ぶ。一例が国防相に就任した李相憙氏である。盧武鉉政権で合同参謀議長の要職にあった氏は、在韓米軍に否定的で、米軍側に戦時作戦統制権の韓国軍への一本化を要求した。有事の際に韓国軍は米軍の支援を得て国防の任に当たる。米軍は装備、能力、戦略において圧倒的に韓国軍に勝る。したがって、戦時には米韓両軍の指揮は米軍が執ることになっていた。その統制権を韓国側に返すよう、李相憙氏は要求したのだ。
米国は当時軍再編を進めており、再編の大枠のなかでは在韓米軍の規模縮小は既定方針だった。だから、米軍は渡りに船と、韓国側の要求を受け入れたのみならず、韓国側の統制権返還要求期日を前倒しし、遅くとも2012年までの返還を決定したのだ。
しかし、北朝鮮が再び南侵するとしたら、また、中国やロシアがなんらかのかたちで北朝鮮を支援するとしたら、韓国だけでは国家防衛はできない。危惧を抱いた歴代国防相13人が揃って、李相憙合同参謀議長らの考えに異を唱えたのが06年だった。
韓米合同司令部の解散を決定した李相憙氏が、韓国にとって最も重要な意味を持つ国防相に就任したのです。韓米同盟の未来に負の影響が出ると危惧しています」と趙氏は言う。
南北朝鮮の統一を担う統一相には、金夏中前中国大使が就任した。金大中政権で安全保障担当首席補佐官を務めた氏は、親左翼の人物と見られている。中国大使時代には「中国の圧力に屈するばかり」と論評されてもいる。
前政権の主要メンバー、あるいは前政権の考えに近い多くの人材が新政権中枢部に登用されているかたち、つまり保守と思われた政治家が反対の考えの人びとを登用するかたちはどこかで見た光景だ。
日本でいえば安倍晋三政権である。安倍体制の中枢に座ったのは、氏が長年唱えてきた保守的な理念とは無縁の「左に懐の深い政権」づくりを主張し、それに従う人びとだった。
そう言うと、趙氏は言った。「韓国の事例では金泳三政権です。氏は大統領就任時に理念や同盟よりも民族が大事だと語った。これは、北朝鮮から頼まれての発言だったことが後に判明しました。保守のプリンスといわれた政治家が、北朝鮮に籠絡されたわけです」。
しかし、李明博氏は、金泳三氏よりはるかに厳しい試練を乗り越えてきた逸材だ。氏が韓国再生を力強く進めていくことを期待して見ていきたい。
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トラックバック by 草莽崛起ーPRIDE OF JAPAN — 2008年03月31日 09:31