「 韓国教育長選で左翼系躍進 厳しさ続く日韓関係 」
『週刊ダイヤモンド』 2014年6月14日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1038
6月4日に行われた朴槿恵政権の中間評価となる統一地方選挙は、よくよく見れば朴大統領の大敗北だった。首長選挙の結果は、表面的に見れば与野党五分五分の結果と見えないわけではない。しかし、韓国社会をむしばむ教育長選挙での大敗という結果を見れば、事の深刻さが見えてくる。朴大統領の求心力はさらに低下し、韓国の対日政策はより強硬になると思われる。
「統一日報」論説主幹の洪熒(ホン・ヒョン)氏は、例えばソウル市長選挙で将来の大統領候補と目されている鄭夢準氏の敗北は極めて大きいが、第一線の選挙結果よりも、目立たない部分で、保守勢力が完全に敗北したと語る。
「韓国では地方自治体の首長選挙と同時に、教育長選挙が行われます。教育長は、日本の教育委員会などとは比較にならない強い権限を持っています。その選挙で与野党の勝敗は3対14でした。最も重要なソウル市と京畿道(キョンギド)の2つとも、左派勢力の野党が取りました。この2つの行政区に、韓国の学校の半分以上があります」
韓国の教育は日本よりひどい。いわゆる自虐史観に満ちた教科書には、韓国は汚(けが)れた国で存在しないほうが良い、北朝鮮のほうが正しい国だという驚くべき内容が記されている。悪いのは韓国、日本、米国で、正しいのは北朝鮮だという考えの中で、あらゆる歴史の捏造が横行する。
例えば慰安婦である。日本政府と軍が10代の女性たちを含めて20万人を強制的に連行し、慰安婦にし性奴隷とした。その揚げ句、日本軍は敗戦直前に自らの悪事の証拠隠滅を図って女性たちを殺害し、埋めたと、教科書に書いているのである。
このような教科書を用いて日教組よりも過激な全教組という教員集団が、反日思想を子供たちに教えるのである。だが、彼らの本当の狙いは韓国自身なのだ。反日の先に韓国があり、北朝鮮が韓国を支配し、北朝鮮主導の統一を実現することが彼らの目標なのである。
こうしたことを知っているからこそ、韓国の保守派の学者を中心にして、韓国版「作る会」が結成され、まともな教科書が作成された。しかし、これはほとんど採用されていない。
教育こそ韓国の子供たちの考え方の土台をつくり、韓国の未来を決する。日本に対する韓国の未来世代の見方も決する。今回の選挙で17自治体で14人の左翼的教育長が選ばれたことは、日韓双方にとって極めて悲観的な状況を生み出していくだろう。
なぜ、こんな結果になるのか。洪氏は、左派勢力がよく統制され、候補を一本化した一方で、保守勢力がまとまり切れず、複数の候補者が乱立したことが敗因だと指摘した。
「朴大統領は就任直後に教育現場の問題に手を付けるべきでした。学校現場における左派勢力の横行を抑制するために教育大臣の人事や現場での職務に関しての法的措置を取るべきでした。しかし、彼女は放置してきた。彼女自身にも教育の問題点がよく理解できていなかったのです」
洪氏が驚きの数字を示した。保守系の教育長に投票した数は全体の約70%で、リベラル・左派系の教育長への票は約30%だったというのだ。
「保守系勢力がまとまり切れない中で京畿道の教育長は李在禎氏になりました。盧武鉉政権で統一部長官を務めた左翼の大物が、韓国の教育を担うことになった。本当に深刻です」
洪氏は、韓国の学生、生徒人口の約90%が、左派系教育長が強い権限で主導するゆがんだ教育を受けることになると警告する。
隣国の政治状況は海外の韓国系住民に大きな影響を与える。左翼思想を強める韓国政府は海外での反日運動にも熱心な援助を与えるだろう。日本にとって、厳しい日韓関係が続くと覚悟すべきであろう。