「 外交の勝利は堂々たる主張から 」
『週刊新潮』 '06年7月27日号
日本ルネッサンス 第224回
北朝鮮への対応をめぐる国連安保理での攻防は、戦後はじめて、国家は自らの主張をどのように展開すべきなのかを日本自らが探りあてようとした事例である。それは北朝鮮が対象だったが、同時に、紛れもなく中国との外交戦争だった。もっといえば、長年一定のパターンとして定着してきた日米中3か国のゼロサムゲームに近い性質を持つ戦いだった。今回、日本はその戦いに、最終的に勝利をおさめたと言ってよい。
それにしても、北朝鮮がミサイルを乱発射した7月5日以来のプロセスを辿ると、日本は日露戦争後のポーツマスでの講和交渉で敗れたように、またはワシントン海軍軍縮会議での交渉に敗れたように、またもや敗北するのかと考え込んだ瞬間があった。それは7月10日、米国が日本提案の制裁決議案採決を中国の要請によって延期したときだ。
この日、中国の王光亜国連大使は日本の北朝鮮制裁決議案を否定し、対抗案として拘束力のない議長声明案を安保理に正式に提示、ロシアが早速支持を表明した。フランスも、安保理のメンバー国全員が一致出来る案が望ましいとして、日本案支持の立場から中国案理解へと変わった。英国の国連大使は、日本提出の決議案が採択される見込みはないと悲観的な見方を表明した。
『ニューヨーク・タイムズ』紙はこの日、「安保理が強制的に罰則を科す明白な根拠となる国際法違反や条約違反は北朝鮮の行動にはない」との主張を社説で展開、ロシアは同社説を引用して日本の決議案には国際法上の疑問があると述べた。
日本外交の詰めの甘さを痛感させられ、日本が追い詰められつつある印象は否めなかった。それでも小泉純一郎首相と安倍晋三官房長官は、決議案採決を目指す考えに変わりはないと述べ、主張をまげなかった。
中国に膝を屈する官僚たち
日本の揺るぎない決意と北朝鮮の説得に失敗した所為であろう、中国が微妙にスタンスを変えたのも10日だった。王光亜大使は安保理で中国の議長声明案をメンバー国に示す一方で、日本が決議案にこだわるなら、修正が必要だと語ったのだ。決議案に反対してきた中国がはじめて示した大きな変化である。
そして12日、中国はロシアと共に自らの議長声明案を踏まえ、制裁条項などを削除した非難決議案を提示した。
それでも中国は日本非難の手を緩めない。中国外務省の姜瑜報道官は、そもそも日本の制裁決議案は「過剰反応」であり、六か国協議の中での「少数意見」にすぎないと述べた。また自民党から出されはじめた敵基地攻撃論について、「状況の悪化と緊張激化を招く無責任な主張」と激しく批判した。だが言うまでもなく、自民党内から出たこの主張は、国民を守るという観点で見れば、どの国も考え、備えている能力にすぎない。中国の反応こそが「過剰」なのであり、それは日本への敵愾心の反映である。
日中の空中戦が続くなか、日本の外務省が揺れた。12日の中露両国による非難決議案提示以来、外務省の一部で「落とし所」を探る動きが始まったと報じられた。従来の日本外交なら、このあたりから流れは変わり、中国への卑屈ともいえる妥協が成立していったはずだ。
しかし、麻生太郎外相は、中露の非難決議案受け入れに傾こうとする外務官僚を、「あんたらはけんかの仕方を知らない」と叱責したという(7月17日付産経新聞)。議長声明から非難決議に中露が譲歩したのは日本の「突っ張り」があったからであり、日本が日本の主張を展開することではじめて道は開けていくとして、官僚たちの“落とし所”説を蹴ったという。安倍官房長官も、日本も中国案にのった方がよいと説得する北岡伸一国連次席大使に「不快感を示し」、そのような取り組みを否定した旨報じられた。
小泉首相も「最後まで突っ張れ」と述べ、強い姿勢を崩さなかった。政治家が官僚群の用意する妥協案にのらず、自ら外交を主導した結果、国連での中国有利の状況が反転したのは明白だ。こうして流れを再逆転させようと主張する日本に、米国も手を貸した。
イラク、イラン問題に手をとられ、東アジアでの新たな問題は極力回避したいとして、中国案に傾きかけたかに見えた米国に、北朝鮮に断固たる意思を示したいとする日本との協調路線を歩ませたのは、まさに、政治家たちが今回の国連外交を官僚に任せず、自ら主導した結果である。
日本が進むべき道とは
この状況状を98年と較べると、絵に描いたように対照的だ。人間が違えば事情は全く違ってくることを痛感せざるを得ない。98年、北朝鮮が発射したテポドンが日本列島をとびこえて三陸沖に着弾した。日本の上空を他国のミサイルが切り裂いて飛んだのは大きな衝撃であり、脅威だった。にもかかわらず、当時の日本は非難することも出来ず、何の力もない報道向け声明を出したのみだ。
ときの首相は小渕恵三氏、官房長官は野中広務氏、外相は高村正彦氏、外務省アジア局長は阿南惟茂氏、中国大使は福田康夫氏と幼なじみである谷野作太郎氏だった。野中氏以下、阿南、谷野氏ら見事に親中国派が揃っていたのだ。これでは小渕首相が何を考えようとも、中国にも北朝鮮にも厳しい政策を打ち出せるはずがない。政策はまさに人間が変われば確実に変わるのだ。
今回の“日中戦争”から見えてくることは多い。拒否権を持つ5か国の力は圧倒的だ。その意味で中国の力も強い。だが、日本はそれでも、安保理を動かし、中国の主張を事実上、葬った。それは第一に、日本が21世紀の国際社会の規範となる価値観を踏まえていたからだ。どの国でもミサイルを乱発射されて強く抗議しないとしたら、そのこと自体が異常である。ミサイルを乱発射した国をまもり、その国に抗議する国を非難することはもっと異常である。国際社会が各国の国益で動くとしても、そこまでは否定出来ないのだ。
第二の理由は日本が主張を曲げなかったからだ。従前のように、中国に位負けしなかったからである。主張する日本の姿を示したからこそ、日本は米国をはじめ国際社会のより深い信頼を勝ちとることが出来たのだ。
中国にどのように相対していくか。答えはすでに明らかだ。日本の立場を正面から主張していくことの出来る日本国を作ること、そのうえで21世紀の国際社会の規範となる価値観を日本が実践していくことだ。現在の中国に21世紀の世界の規範となる価値観が欠落しているのは明らかだが、そのことを最もよく知る彼らはいま、孔子の教えの儒教を精神的支柱に打ちたてるべく、模索中である。中国ももがいている。日本もまた必死で世界に誇る価値観を磨かなければならない。
家族、家庭、コミュニティーの崩壊への危機感から体験学習の重要性を語る
本会では、9月3、4日、横須賀で一泊研修合宿を開催し、海上自衛隊や防衛大学校を視察する。海上自衛隊ではイージス艦見学を予定していますが、北朝鮮のテポドン発…
トラックバック by 草莽崛起 ーPRIDE OF JAPAN — 2006年07月29日 13:27
家族、家庭、コミュニティーの崩壊への危機感から体験学習の重要性を語る
本会では、9月3、4日、横須賀で一泊研修合宿を開催し、海上自衛隊や防衛大学校を視察する。海上自衛隊ではイージス艦見学を予定していますが、北朝鮮のテポドン発…
トラックバック by 草莽崛起 ーPRIDE OF JAPAN — 2006年07月29日 13:27
対北朝鮮経済制裁 其の伍 【制裁計画】
北朝鮮はどのように資金を得ているのか?
トラックバック by 徒然なるままに@甲斐田新町 — 2006年07月29日 13:44
世界史の進行
人類にとって平和はもっとも貴いものの一つである。しかし、平和も長く続くと、その貴重さも忘れ去られる。人間の悲しい性なのかも知れない。
先の北朝鮮のミサイ…
トラックバック by 作雨作晴 — 2006年07月29日 14:12
拝啓櫻井よしこ様「昭和天皇ご発言メモ騒動の顛末は」(2/5)今尚ボタンの掛け違い的自虐外交史観か・
あれから一週間が経った。
こともあろうに「昭和天皇ご発言メモ」なるものをでかでかと公表公開し、あげくの果てにはジャーナリストのあてずっぽう的推測まで書き加…
トラックバック by エセ男爵酔狂記 Part-II — 2006年07月29日 18:46
自衛隊の皆さん、お疲れ様!
2004年2月の第1次派遣から通算して約2年6ヶ月もの間。最小限度の装備の中で、砂漠と炎熱、冬の酷寒と戦いつつ、また、絶えず襲う外部からの攻撃の恐怖と戦…
トラックバック by 博士の独り言 — 2006年07月29日 19:04
“南京大虐殺?は戦争プロパガンダだった
「南京事件」題材に3映画、中国で同時に計画進行(読売新聞 7/22)
【上海=加藤隆則】旧日本軍による1937年の南京事件から70年を迎える来年に向…
トラックバック by 草莽崛起 ーPRIDE OF JAPAN — 2006年07月30日 08:44
“南京大虐殺?は戦争プロパガンダだった
「南京事件」題材に3映画、中国で同時に計画進行(読売新聞 7/22)
【上海=加藤隆則】旧日本軍による1937年の南京事件から70年を迎える来年に向…
トラックバック by 草莽崛起 ーPRIDE OF JAPAN — 2006年07月30日 08:44
富田メモについて–日経報道は真実なのか?
遅ればせながら日本経済新聞が20日朝刊で報じた昭和天皇の「A級戦犯」合祀に不快感を示したという発言のメモについて遺族会会長の古賀誠元自民党幹事長はじめ鬼…
トラックバック by なめ猫♪ — 2006年07月30日 08:46
中国共産党の謀略を見抜けー櫻井よしこ女史
先週より、いよいよ自民党総裁選が始まりました。谷垣氏は福田氏が総裁選不出馬を契機に靖国神社の参拝を自粛することを宣言することで、靖国問題を総裁選の争点にし…
トラックバック by 草莽崛起 ーPRIDE OF JAPAN — 2006年07月31日 10:48
中国共産党の謀略を見抜けー櫻井よしこ女史
先週より、いよいよ自民党総裁選が始まりました。谷垣氏は福田氏が総裁選不出馬を契機に靖国神社の参拝を自粛することを宣言することで、靖国問題を総裁選の争点にし…
トラックバック by 草莽崛起 ーPRIDE OF JAPAN — 2006年07月31日 10:48
A級戦犯合祀賛成59%−「天皇の政治利用」は許されない
総裁選、安倍氏なお優位 靖国争点反対は6割 FNN調査 (産経新聞 8/1)
自民党総裁選をめぐるFNN世論調査(7月29−30日)で、安倍晋三官房…
トラックバック by 草莽崛起 ーPRIDE OF JAPAN — 2006年08月01日 11:42
A級戦犯合祀賛成59%竏秩u天皇の政治利用」は許されない
総裁選、安倍氏なお優位 靖国争点反対は6割 FNN調査 (産経新聞 8/1)
自民党総裁選をめぐるFNN世論調査(7月29竏窒R0日)で、安倍晋三官房…
トラックバック by 草莽崛起 ーPRIDE OF JAPAN — 2006年08月01日 11:42
日本最悪のデマゴギー若宮啓文と古賀誠 富田メモに群がる報道犯罪人
レーニンもゲッベルスも現在の日本を見て小躍りして喜んでいるだろう。 報道犯罪人は余りに醜いと憤る方は、一日一押人気ブログランキングをクリック願います…
トラックバック by 大東亜戦争の真実を伝えたい何でもそろう便利屋です — 2006年08月01日 20:05
「政経分離」という幻想
安倍晋三官房長官の著書、『美しい国へ』(文春新書)が出版され、話題となっている。本書には、自民党総裁選へ向けた安倍氏の公約とも取れる提言が多く盛り込まれ…
トラックバック by 言わせてもらお — 2006年08月01日 23:20
積水ハウス社員が差別発言で客を提訴–人種差別撤廃条約の動き
ネットでも話題になっている積水ハウスに勤める在日韓国人の男性が客から差別発言を受けたとということで大阪地裁に300万円の慰謝料などを求める訴えを起こし…
トラックバック by なめ猫♪ — 2006年08月02日 11:15
初歩的な危機管理体制と人命救助の心得!欠如か?「女児プール死亡事故」によせて・・
我が国全体の社会的モラルと危機管理の欠如、日本人のマナーの悪さが目立つ!という報道、いやがうえにでも目に止まる。
自分さえ良ければいい。かくして個々の…
トラックバック by エセ男爵酔狂記 Part-II — 2006年08月02日 14:38
集団的自衛権行使−自民党総裁選の争点に浮上
総裁選3候補、集団的自衛権の行使容認に言及(日経新聞 8/2)
安倍晋三官房長官、谷垣禎一財務相、麻生太郎外相の3人が1日、集団的自衛権の行使容認に…
トラックバック by 草莽崛起 ーPRIDE OF JAPAN — 2006年08月02日 16:20
集団的自衛権行使竏虫ゥ民党総裁選の争点に浮上
総裁選3候補、集団的自衛権の行使容認に言及(日経新聞 8/2)
安倍晋三官房長官、谷垣禎一財務相、麻生太郎外相の3人が1日、集団的自衛権の行使容認に…
トラックバック by 草莽崛起 ーPRIDE OF JAPAN — 2006年08月02日 16:20
あなたは学会員ですね?古賀誠殿
最近、顕著になって来た動きに読者にはすでにお気づきであろう。中創媚は、中共をメインに完全一体である。わが国の世論操作と撹乱を目論む中共が首謀者。その意図…
トラックバック by 博士の独り言 — 2006年08月02日 18:22
蛭子神話〜エビっさんになった障害児〜
少し前に昭和天皇の「A級戦犯合祀不快意志」について書いた。
そのときに想起し温めていたことを今日は書こう。
タイトルの「蛭子」をあなたは何と読みまし…
トラックバック by うみおくれクラブ — 2006年08月02日 21:44
判定勝ちは「八百長だろ?」–TBS抗議殺到
昨日のボクシングWBA世界ライトフライ級王座決定戦の意外な展開に驚いた人も多かったと思います。
今朝の一般新聞・スポーツ新聞各紙でも疑問を投げ…
トラックバック by なめ猫♪ — 2006年08月03日 11:14
首相、靖国「15日参拝」に含み−メールマガにメッセージ
小泉首相は、3日付の「小泉内閣メールマガジン」で「戦没者の慰霊」と題したメッセージを寄せ、「今日の日本の平和と繁栄は、戦没者の方々の尊い犠牲の上に築かれて…
トラックバック by 草莽崛起 ーPRIDE OF JAPAN — 2006年08月04日 01:05
首相、靖国「15日参拝」に含み竏茶=[ルマガにメッセージ
小泉首相は、3日付の「小泉内閣メールマガジン」で「戦没者の慰霊」と題したメッセージを寄せ、「今日の日本の平和と繁栄は、戦没者の方々の尊い犠牲の上に築かれて…
トラックバック by 草莽崛起 ーPRIDE OF JAPAN — 2006年08月04日 01:05
中共からみた媚中議員の位置づけ
中国共産党の代弁者・媚中議員はどう位置づけられているのか。概略ながら本稿にその構図を記してみた。今後の報道を峻別するご参考としていただける機会があれば幸…
トラックバック by 博士の独り言 — 2006年08月04日 02:26
昭和天皇の私的参拝を答弁した富田次長−昭和50年
安倍氏、今年もすでに靖国参拝していた4月
安倍晋三官房長官が今年4月にすでに靖国神社を参拝していたことが3日、分かった。複数の関係者が明らかにした…
トラックバック by 草莽崛起 ーPRIDE OF JAPAN — 2006年08月04日 11:31
昭和天皇の私的参拝を答弁した富田次長竏衷コ和50年
安倍氏、今年もすでに靖国参拝していた4月
安倍晋三官房長官が今年4月にすでに靖国神社を参拝していたことが3日、分かった。複数の関係者が明らかにした…
トラックバック by 草莽崛起 ーPRIDE OF JAPAN — 2006年08月04日 11:31
ボランティア義務付けなぜおかしい
安倍官房長官の新著「美しい国」(文春新書)を買ってきて読んでいるところです。平易な言葉で書かれており大学生や高校生でもその気があれば理解できる内容となっ…
トラックバック by なめ猫♪ — 2006年08月04日 15:04
お墓参りですか?真紀子さん
田中真紀子元外相の案内で、故田中角栄元首相の墓参りをする王毅駐日中国大使の写真ユースが大きく報じられた。なぜ、この時局に、との疑問を抱いたのは筆者だけで…
トラックバック by 博士の独り言 — 2006年08月04日 15:33
中韓の暴徒に告ぐ!
中韓の暴徒に告ぐ。この地は日本である。他国の内祀に執拗に干渉する汝らの言動は、およそ先進国家としてあるべき行為ではない。まして、この地に乗り込み、日本国…
トラックバック by 博士の独り言 — 2006年08月15日 05:43