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2006.06.24 (土)

「 恫喝外交では効果なしと対日政策を切り替えるか、中国 問われる日本の外交スタンス 」

『週刊ダイヤモンド』    2006年6月24日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 646

中国大使の宮本雄二氏が信任状を手渡すため胡錦濤国家主席を訪れた6月10日、胡主席は「条件が整い、適当な機会に貴国を訪問することを願っている」と語った。

このニュースは「産経新聞」と「朝日新聞」の二紙が伝えたが、私は「朝日」の記事に目を引かれた。そこには、中国政府は小泉純一郎首相の今年夏の靖国参拝は織り込みずみだと書かれていた。あの「朝日」が、中国は小泉首相参拝を受け入れたうえで日中関係を考えている、というのだ。

中国政府は、明らかにこれまでの強硬策とはひと味違う対日政策を探り始めているかに思える。中国が死活的に必要とする日本の援助を得るには、江沢民政権以来の歴史を材料とした対日強硬策ではうまくいかないことに気づいたのだ。歴史や靖国問題を掲げての恫喝(どうかつ)外交に替わる道を探っている兆候が垣間見える。

この際問われるのが日本外交のスタンス、日本国の国家としての振る舞いをきちんと見せることができるか否かである。間違っても、こんな場面で“落としどころ”を探って生半可な妥協をしてはならない。政財界に、落としどころは次期首相が靖国に行かないことだなどと、本気で語る人びとがいる。現職の小泉首相に関しても任期中ではなく、首相を辞めてから行くのがよいという人もいる。もともと首相は“個人の信条として”靖国参拝をしてきたのであるから、首相でなくなったあと、文字どおり“一個人”として参拝すればよいのだと、彼らは言う。

そんな姑息な参拝をすれば、小泉首相の名誉は地に堕ちる。もともと8月15日の参拝を公約した首相が、最後まで公約を果たさず、揚げ句に今年は首相退任後に参拝となれば、詐欺のようなものだと非難されるのがオチだろう。日本を大事に思い、その延長線上で、日本国総理大臣の名誉をも守ろうという発想があれば、間違っても首相退任後に参拝せよとは助言しないはずだ。にもかかわらず、親中派勢力は臆面もなく、右のような論を展開する。首相を含めた日本国よりも、中国の意向のほうが大事なのだ。

日本は中国に、この際“ゲンメイ”するのがよい。そもそも中国は靖国問題に関心を抱いてはいなかったはずだと。靖国問題の政治利用は間違いで、日本人は中国の横暴を決して受け入れないと。そして問うのがよい。中国政府は真に中国国民の人権を守る気があるのかと。

中国政府には日本国の妥協なき決意をこそ見せることだ。その際ドイツのメルケル首相の振る舞いが大いに参考になる。旧東ドイツ出身の首相は、共産党の本質をおそらくどの指導者よりも理解していると思われる。彼女は5月の訪中で、『中国農民調査』の著者、陳桂棣氏夫妻に加えて人権活動家二人を北京のドイツ大使館に招き、40分にわたって話を聞いた。『中国農民調査』はその題名どおり、中国農民の実態を報じたものだ。農民1,000人以上に直接話を聞き、彼らがいかに弾圧されているか、腐敗した地方政府がいかに苛酷に農民を搾取しているかを描いた。2004年に出版された同書は、発売後3ヵ月で発禁処分となった。

メルケル首相はその著者夫妻や人権活動家に会うことで、中国政府に強烈な意思を伝えたのだ。同首相の外交は中国政府を相対的に不利な立場に追い込む効果も発揮した。日本の採るべき道もここにある。中国政府の姿勢に変化が生じつつある今、特に心して日本の立場を固く守るべきだ。人権、民主主義、法治、言論・報道の自由など日本国の根幹をなす価値観を示し、中国も共有すべきだと主張するのがよい。日本国の価値を守るためにこそ、“落としどころ”など探ってはならない。現首相も次期首相もきちんと参拝することが未来を開いてくれる。

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