「 国家存亡のふちに立つ韓国 議員を内乱陰謀容疑で逮捕 」
『週刊ダイヤモンド』 2013年9月28日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1003
月刊誌『文藝春秋』で過日、日中韓米の論者による座談会があった。参加したのは米国のケビン・メア元沖縄総領事、中国の王曙光・拓殖大学国際学部教授、韓国の金恵京・明治大学法学部助教、日本は私であり、司会は宮崎哲弥氏だった。領土、歴史問題などを語り合う中で、興味深いやりとりがあった。
竹島問題が提起されたとき、私は日韓には竹島問題を論ずる余裕などないと強調した。韓国はいま、国家存亡のふちに立たされており、このままいけば北朝鮮勢力に乗っ取られ、さらに中国の支配を受けるようになりかねない。韓国という国家が消滅しかねないいま、論ずべきはいかに日中韓三国が協力して朝鮮半島を韓国主導で統一するかということのはずだと指摘した。
すると中国の王氏が米国もそのような見方を共有するのかと切り込み、メア氏が基本的に私の発言に同意した。王氏は沈黙してしまったが、韓国はいま、深刻な危機の中にある。それを桜美林大学客員教授の洪熒(ホン・ヒョン)氏は「内戦」だと喝破する。
韓国の第二野党に統合進歩党(統進党)という政党がある。韓国の与党はセヌリ党(154議席)で、最大野党は民主統合党(127議席)、その次が統進党で議席は6である。統進党は政党ではなくテロ集団だと、「統一日報」の社説が断じたほど、過激な左翼勢力の集団だ。その党の一員である李石基議員が9月5日、内乱陰謀容疑で逮捕され、13日、送検された。
李石基氏はRevolutionary Organization(RO、地下革命組織)の指導者だった。今年5月12日夜、ソウル市麻浦区合井洞でROの秘密会合が招集され、約130人が参加していたことが国家情報院の調査で明らかになった。秘密会合で話し合われた驚くべき内容は押収された録音テープによって明らかにされた。
韓国の報道をまとめるとROの主目的は南北朝鮮の戦いが始まったとき、韓国内でいっせいに蜂起し、北朝鮮と共に戦って韓国を陥落させることだという。そのために必要な武器弾薬の調達方法も彼らは具体的に定め、各地の韓国軍の武器庫などの襲い方に加えて、ROの組織員の一人で統進党の京畿道党委員長、金洪烈氏のコンピュータに4種類の爆弾製造方法が詳述されていたように、爆弾の製造方法も周知徹底させていたという。
5月の秘密会合のテープには、韓国は朝鮮民族に対する反逆集団で、真の愛国集団は北朝鮮だという李氏の発言もあった。
韓国を壊滅させて北朝鮮が吸収合併するのが真の愛国だと信ずる李氏らは議員特権を活用してさまざまな情報開示を請求してきた。彼らが国防部(省)から得た情報には、韓米共同局地挑発対応計画、韓米安保政策構想会議、韓国に再配置された化学大隊など在韓米軍の戦略配置と関連資料、在韓米軍の兵力および物資の韓国への出入りの現況、地雷防護装甲車(MRAP)の配置などがある。
MRAPは北韓急変事態などにも投入される最前線の武器である。その他、彼らが入手を試みた情報に、2013年度高高度偵察用無人航空機(HUAV)事業がある。仮に北朝鮮がHUAV関連情報を入手すれば、韓国は北側の核ミサイル攻撃を防御出来なくなる。
韓国にとって反逆者といってよい李氏や韓国の他の国会議員の資格を剥奪するか否かが韓国国会で議論されているのは当然だろう。だが、除名も資格剥奪も最大野党の民主統合党が反対して、議論は行き詰まっている。そのような韓国の現状は日本の国益にも著しい負の影響を及ぼす。私たちは日本のためにも韓国が危機的状況にあることを認識しておきたい。竹島はむろん重要問題で、日本は譲ることは出来ない。だが、それより大きな国益の危機は韓国自体が崩壊することである。