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2005.11.19 (土)

「 日露関係での失敗の記憶を今、思い起こし、ロシアの無法ぶりを国際社会に訴えよ 」

『週刊ダイヤモンド』    2005年11月19日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 617

今月20日から、ロシアのプーチン大統領が来日する。北方領土問題について聞こえてくるのは、いずれも厳しい内容だ。四島返還はむろん、二島返還さえも、日本が北方四島の主権はロシアにあることを認め、平和条約を締結したあとなら協議してもよいという、話にもならない姿勢である。

加えて、ロシア側のここ数年における主張の一つは、かつて日本が主張していた「政経不可分」の原則だ。政治体制も異なり、日本の領土を不法に奪った国とは、政治的距離は大きく経済交流も密にはなりえないという意味で、日本は政経不可分を掲げてきた。だが、ロシアはこの原則をまったく逆の発想で日本に突きつける。領土問題で前進を望むなら、相応の経済的貢献をせよという意味の政経不可分なのだ。

こうした逆転現象は、橋本龍太郎氏が首相当時、領土返還の保証もないのにロシアに阿(おもね)り、日本の主張を展開することを怠ったとき以来、顕著になったものだ。

経済も技術も、日本のほうがはるかに優れている。国際法上、北方領土をめぐる立場は、日本が正しく、ロシアは指弾を免れない。日本がしっかりした国家意思さえ持てば、日露関係は圧倒的に日本が有利なはずだ。にもかかわらず、この10年ほどの日本は、領土問題で完全にロシアの主張に振り回されてきた。

北方領土は、日本がポツダム宣言を受け入れて降伏したあと、8月28日から9月5日にかけて、ソ連が奪った。現在も、北方四島がロシアの領土であると規定する国際法上の根拠はどこにもない。北方領土のロシア領有の違法性と、ポツダム宣言九項に違反してシベリアに60万余の日本兵を強制抑留し、6万余人を死亡させたことを併せて、日本の対露交渉の原点とするのが真っ当な外交というものである。にもかかわらず、日本側は橋本外交に見られたように、害あって益のない妥協外交を続けてきた。

日露関係での失敗は今に始まるものではない。かつて私たちの国は、樺太・千島交換条約で煮え湯を飲まされている。その記憶を、今、思い出すべきではないか。

1869(明治2)年、政府は徳川時代初期の頃より日本領としてきたエゾ地、「北蝦夷(エゾ)」を「樺太」と改称した。71年にロシアは函館領事のビューツォフを代理公使に任命し、以後、日露間で樺太の帰属をめぐり論争が展開された。結論から言えば、日本は外交で敗れて樺太を放棄し、千島と交換することになった。

江戸時代初期からの日本領土だった樺太を、入植からわずか20年のロシアになぜ奪われてしまったのか。理由は3つと分析されている(『戦後強制抑留史』第一巻、中央公論事業出版)。

第1点は国論の分裂である。日本国内では、開拓次官・黒田清隆をはじめとする樺太放棄論者が樺太を経済面からのみ論じ、地政学上の重要性を評価する視点が欠落していた。

第2点は、長い鎖国の結果、欧米近代国家にとっては当然の権利意識がきわめて稀薄だった。

第3点は無原則な譲歩を重ねる交渉の拙劣さだった。日本は当初、樺太全土の領有権を主張した。拒否されると北緯50度以南、さらに48度以南の領有に、主張を後退させた。その間にロシアは兵士や政治犯を送り込み、既成事実を積み上げた。交渉のたびに日本の立場は不利になり、ついには樺太を手放したのだ。

現在の北方領土をめぐる状況と相通ずるものがある。だが、今回は敗れてはならない。そのためには、日本が攻めの外交を展開すべきだ。領土の主張は無論のこと、シベリアでの60万余の兵の強制抑留の責任、日本の開拓団へのすさまじい殲滅攻撃の責任を追及し、ロシアの無法ぶりを国際社会に訴えていくことだ。

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