「 外交は戦いである 全力で国を守らなければならない 」
『週刊ダイヤモンド』 2012年8月25日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 949
戦後最大の危機である。
北方領土、竹島、尖閣諸島から、日本の主権が切り崩されていきかねない。この最悪の状況は、自民党時代からの日本外交の失敗に基本的原因がある。とはいえ、国家観なき民主党政権誕生以来、特に際立ってきた。
外交は戦いである。背景には常に武力がある。どの国も自国の国益擁護に十分な武力を備えているが、日本は10年以上、軍事力を削減し続けてきた。その日本が対韓外交で示してきた安易な友好や友情がいま仇(あだ)となって日本逆襲をしているのである。
李明博大統領が8月10日の竹島訪問で何を語ったか、民主党三代の代表、官房長官、外相らはしっかり心に刻まなければならない。大統領は、日本が国際司法裁判所への提訴を検討する方針を示したことについて、「日本側の反応は予想したこと」であり、「国際社会での日本の影響力も、以前と同じではない」と語っている。
日本の反発など大したことはないとみているのだ。大統領発言から日本人が学ぶべき教訓は、弱体化する国家は侮られるということだ。
韓国に関してもう一点留意すべきことがある。今回の大統領発言および与党セヌリ党報道官の発言が明らかにした韓国のお国柄である。例えば、李大統領は天皇陛下についてこう語った。
「訪韓したいのであれば独立運動で亡くなった方々を訪ねて謝罪せよ」「何カ月も悩んで『痛惜の念』だとか、こんな単語一つなら、来る必要はない」
一国の権威と権力を備えているはずの元首である大統領が、他国の元首の発言を「こんな単語一つ」と貶め、「来る必要はない」と言うのである。なんと礼節なきことか。
セヌリ党の洪日杓(ホン・イルピョ)報道官は日本が国際司法裁判所への提訴を検討すると表明したことについて、「盗っ人たけだけしい」と非難した。
あえて言わせてもらえば、もともと竹島を「盗んだ」のは韓国である。1952年1月18日、韓国が突如、李承晩ラインを引いて竹島を含む海域を韓国の領海だと宣言したことは日本人の記憶に新しいはずだ。こうしたことを踏まえない自制心を失った発言がセヌリ党の発言だ。
一連の発言や行動を韓国国民の八割以上が支持、と報じられた。これが隣国のお国柄なら悲しいことだ。
この際、日本は断固として国際社会に訴えるべきである。竹島領有権について、迷うことなく国際司法裁判所に提訴し、これまでも日本が国際司法の場での話し合いを求めてきたこと、しかし、常に韓国は応じてこなかったこと、その経緯を広く国際社会に説明しなければならない。
李大統領が8月15日の演説で強調した慰安婦問題についても、日本政府または軍による強制連行などは存在しなかったことを、すべての資料を積極的に公開して国際社会に示し、徹底的に明らかにしていかなければならない。
隙を見せずに対処すべきは韓国だけではない。中国に対しても同様である。
尖閣諸島を襲った中国人14人の処分で重要なことは、明確な形で日本の司法を行使してみせることだ。尖閣は日本の領土であるから、それを侵す人物を日本の司法権によって裁くのは当然だ。菅直人、仙谷由人両氏は中国を恐れてそれをしなかった。野田佳彦首相は断じて同じ間違いを犯してはならない。
日本の司法権を明確に示した上で、尖閣が襲われたいま、尖閣防衛の態勢を一刻も早く整えるのだ。中国政府は必ず尖閣を本格的に攻略してくる。次に来るのは数百隻の船であろう。彼らの襲来に備えて警察官、海上保安庁の職員などを常駐させ、全力で守らなければならない。日本は戦後初めて、中国との本格的な衝突の局面に立っていることを自覚しなければならない。