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2005.07.07 (木)

「 日本も没収したい、中国の教科書 」

『週刊新潮』 '05年7月7日号
日本ルネッサンス 第172回

中国大連市で、日本人学校で使用する小中学校用の教材10種128点が税関当局に差し押さえられ、日本人学校側が始末書と罰金1,000元(約1万3,000円)を支払っていたことが、6月27日までに判明した。

情報を総合すると、地図を含む教材の一部は罰金を支払った後も、日本側に返却されておらず、28日『産経新聞』朝刊は、これを「没収」と報じ、NHKは28日正午のニュースで「内容の更なる検討のため」と報じた。

中国側が検閲でとがめたのは主に、中国大陸と台湾が異なる色で塗り分けられていたこと、尖閣諸島を日本領としていたことだそうだ。中国には大連、北京、上海、広州、天津、蘇州、青島、香港(中学部)の8地域に日本人学校があり、現地の法律遵守を条件に設立が認められているため、中国当局による検閲は拒否出来ない事情があると報じられた。

しかし、これは奇妙なことではないか。日本の領土の尖閣を日本の領土であると日本の子供たちに教えるのは当然だ。台湾についても、中国政府は台湾は中国の一部だというが、現状では台湾は立派な独立国だ。将来、台湾がこのまま中華民国として存続するのか、国名を台湾に変えて改めて独立を謳うのか、中国と統合するのか、予断を許さないのは確かである。台湾人の想いは複雑で意見も分かれているが、どの道を選ぶのかは、ひたすら台湾人自らが考え、決めるべきことだ。

日本の子供たちには、流動的な要素を含んだ台湾の現状をそのまま教えることが重要だ。そうしてはじめて、子供たちは現実の国際社会を理解することが出来るからだ。日本人学校が中国にあるからといって、中国政府の意向に沿って、世の中の事情を曲げて教えてはならない。そんなことをすれば、中国の法律遵守の名目で、中国政府の都合に従って事実の歪曲と捏造に加担し、子供たちを中国政府の望む先入観や思い込みに染めることになる。

歴史を捏造する中国

それにしても、中国の小中学生用の教科書を読むと、中国の政治家、学者、研究員といわれる人々の厚顔無恥はどこまで進むのかと考え込んでしまう。中国の教科書は国定教科書で一種類しかない。日本のように教科書の執筆者も出版社も別々で、事実関係の間違いがないかを中心に検定され、合格した教科書のなかから、各地域で選択されて採用される仕組みとは全く違うのだ。

改訂版はあるものの、基本的に一種類しかない中国の教科書にはどんなことが書かれているのか。歴史教科書について日本政策研究センターが『ここがおかしい中国・韓国歴史教科書』に読み易く整理している。それを見ると、元々独立国だったチベットが、中華人民共和国が樹立された直後の1950年10月に軍事侵略され、凄まじい弾圧の末に中国に併合されて今日に至っていることを、中国の国定教科書では、「平和解放」と教えている。

「平和解放」と言われてチベット人が納得するべくもない。彼らは中国軍に激しく抵抗し、弾圧に屈せず戦い続けているからだ。1950年から今日までに、総人口600万人のチベットで120万人が虐殺されたと、チベットの人々は訴える。繰り返すが、中国の教科書は、国民の5分の1を虐殺したといわれる軍事侵攻を「平和解放」と教えているのだ。

朝鮮戦争の記述も噴飯物だ。この件についてはかつてブッシュ大統領も抗議したが、中国の教科書は、「1950年、朝鮮内戦が勃発した。アメリカ帝国主義は、横暴にもいわゆる『国連軍』を指揮して、朝鮮を侵略した。彼らは『38度線』を越えて、まっすぐに中国辺境まで攻め上り、わが国の安全をひどく脅かした」と教えている。

正しい歴史を知る意味

全てが正反対に捏造されているのだ。真実は、朝鮮戦争は北朝鮮が突然軍事侵攻したことにより勃発した。米国は当時北朝鮮が軍事侵攻するとは考えず、韓国には軍事顧問団500人程を残していただけだ。韓国軍もまた、北朝鮮の侵攻に全く備えていなかった。つまり韓国側は軍事的には極めて手薄の状態だった。そのため、北朝鮮軍は破竹の勢いで38度線を破り、韓国の南部深くにまで迫った。

肝心の中国軍は北朝鮮軍の制服を着て参戦し、北朝鮮を助けて韓国を侵略したのである。そのことには一言も触れず、“米帝国主義”非難のために史実を捏造しているのだ。

日本に関する記述にも捏造が溢れている。昭和3(1928)年の済南(さいなん)事件を中国の教科書はこう書いている。
「日本帝国主義は(阡」介石の)国民政府の北伐を阻止するため、公然と出兵して済南を占領し、中国の兵士や民間人6,000人余りを殺し、『済南虐殺事件』をひき起こした」

これもまた事実は逆だ。日本軍は阡」介石の北伐軍から邦人を保護するために出兵したが、虐殺されたのは日本人の方だった。特に、中国軍は日本人女性に蛮行、凌辱を加えた。

そのうえ、衣服をはぎとられ中国軍に虐殺された日本人女性の遺体を日本側が検死している写真が、中国の教科書には、七三一部隊が中国人女性を生きたまま細菌で生体実験し、殺した写真として掲載され、子供たちに教えられているのだ。

中国の国定教科書では、中国を正当化する余り、日本、米国、台湾、チベットなど、中国政府と立場を異にする多くの国々や民族の足跡をねじ曲げている。今回の検閲と没収は、ねじ曲げた歴史を全面的に受け容れることを強要するもので、日本としては受け容れるわけにはいかない。

だが、捏造した歴史を根付かせる中国の試みは、これからもガムシャラに続いていくに違いない。そう考えるのには理由がある。中国では現在、新しい歴史教科書が書かれつつあり、それはまだ試験版であるにもかかわらず既に一部地域で採用されている。その特徴のひとつは日本批判を「南京大虐殺」を軸として展開していることだ。

南京30万人大虐殺説は鈴木明氏や北村稔氏ら、日本側の研究によって殆ど根拠を喪っている。そのため中国はこの新しい歴史教科書の中で新たな理論武装を強化しているのだ。加えて、新しい教科書では、中国の子供たちに、日本の子供たちにあてて手紙を書くことが推奨されている。手紙を書かせることによって中国の子供たちに「南京大虐殺」をいよいよ深く心に刻みつけていく効果がある。手紙を受けとった日本の子供たちは、それが誇大に強調、捏造された情報だと知る前に、事件の衝撃に圧倒され、中国の望む加害者意識に打ちのめされていく危険性がある。

だからこそ、いま、全ての日本人が歴史を学び、中国の歴史捏造に、論拠を示しながら揺るがずに反論していかなければならないのだ。

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「 日本も没収したい、中国の教科書 」

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