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2026.04.02 (木)

「 中国が影の主役、日米会談の大成功 」

『週刊新潮』 2026年4月2日号
日本ルネッサンス 第1189回

大きな関門をひとつ見事に越えてみせた。3月18日から2泊4日で行った高市早苗首相初の訪米と首脳会談への評価だ。

イスラエル・米国VSイランの戦いでホルムズ海峡が事実上封鎖され世界経済が打撃を受ける中、「海峡に艦船を送り民間船舶を守ってほしい」という米大統領の要請下での訪米だった。仏、独などがそうした要請を拒否し、トランプ大統領の孤立が意識される中での日米首脳会談は、誰の目にも難しいものに見えた。

高市氏の使命は、日本が米国と共にあることを伝え、同時に出来ること出来ないことを説明し、さらに中国に共同で向き合う気持ちを持ってもらうこと、トランプ氏をその気にさせることだった。結論から言えば高市氏はその目的を達成した。

勝負はホワイトハウスの入口で決まったと私は感じた。出迎えたトランプ氏に高市氏がパッと近づき抱き合った。一瞬の出来事に驚いた人も多いだろう。私はその瞬間、片山さつき財務相の言葉を想い出した。日米首脳会談に、高市氏はどういう構えで臨むべきかを話していた時だ。片山氏が言った。

「甘えればいいのよ。その上で言うことはきちんと言う。懐に飛び込んでいけるかどうかでしょうね」

まさにそのとおりの展開だ。夕食会での高市氏は、トランプ氏が選んだX JAPANの曲に素直に感激し踊った。ホワイトハウスはその反応に喜び、公式ギャラリーのトップに楽しむ高市氏の写真を載せた。

こんな真似、他国のどの首脳に出来るものか。中国の習近平国家主席には、逆立ちしても無理だ。今回の高市・トランプ会談を最も苦々しく思い、改めて日米の絆に恐れをなしたのは習氏であろう。高市氏の訪米は実に大きな成功だったのである。

高市氏はイランの核開発や周辺国への攻撃は決して許されず、大打撃を受けた世界経済は深刻だとして、「このような状況で、世界に平和と繁栄をもたらせるのは、ドナルド、貴方だけよ」と微笑みを送った。

「やられた」

トランプ氏は大いに喜び、日本国が自分を支持し、同盟国として隣にいてくれると心強く感じたはずだ。また氏は「機雷掃海艇の件も含めて日本の支持の在り方に満足しているか」と問われて答えた。

「その件は今日話し合う。我々は日本から全てについて強力な支持を得ており、絆は強い。日本は本当に努力している。NATOとは違う(unlike NATO)」

トランプ氏はstep upという言葉を幾度も使った。非公開の協議で高市氏は「憲法の制約故に出来ないことがある」としっかり伝えたが、トランプ氏の言葉は「それでも頑張っているのが日本だ」という意味だろう。

そもそも今回の訪米は、トランプ氏訪中前に、日本側の考えを伝えておくためのものだった。訪中は延期されたが、どんな時にも米中関係がわが国の関与なしで進行するような事態は阻止しなければならない。

その意味で会見の冒頭、記者の問いに応えたトランプ氏の言葉は深い意味を持つ。「日本の最大の懸案事項は中国であり、大統領が訪中するとき日中関係について語る予定はあるか」と問われた氏はまず、「日中がギクシャクしているのは知っている」とした上で、高市氏に「中国とはどうなっているの?」と尋ねたのである。

高市氏は、⓵日本は常に対話の窓を開けている、⓶日本はいつでも冷静に対処している、⓷米中関係が地域の安全保障と世界のサプライチェーンを安定させるものであってほしいと、サラリと3点、述べた。

⓵は日本からの対話の呼びかけを拒んでいるのが中国だと、中立的な表現で国際社会に伝えたことになる。⓶は、わが国の抑制的対処と対照的なのが中国で、国連の場などでも根拠のない日本非難をバラ撒いていると、改めて明らかにしたものだ。⓷は世界に不安定と緊張をもたらしている中国のペースに乗らないでね、とトランプ氏に注文をつけたことになる。

トランプ氏はこうも言った。

「中国の習主席に日本のよいことについて話すつもりだ」

習氏は「やられた」と思うだろう。事実や歴史を捏造し、国際社会で不当な日本非難を展開しているのが習氏の中国だ。習氏がトランプ氏に日本がどれ程の悪徳国家か、告げ口しようとも、日本のよいことについて話すつもりのトランプ氏には通用しにくいだろう。

中国の実態について安倍晋三総理が繰り返しトランプ氏に説明したことは、広く知られている。アジアについてのトランプ氏の素養は心許ないが、日中関係についての基本的理解は安倍氏の遺産としてトランプ氏の中に残っている。それを継承して現在に活かしているのが高市氏だ。「日本のよいことについて話すつもり」。この言葉こそ、米国の対日外交の土台は健全だという証しだ。

難問はこれからも続く

高市・トランプ会談のファクトシートを米側が発表した。ざっと見て4分の3が中国を意識した内容で、経済、軍事両分野で日米の堅固な決意が表明されている。軍事面では、たとえばタイフォンの日本本土への配備をさらに進めるとした点だ。

タイフォンは対艦対地攻撃用の中距離ミサイル発射装置で、射程1800キロのミサイルを地上から発射できる。その配備は中国軍の海洋進出阻止を主眼とするものだ。

タイフォンは2024年4月、米比合同の「バリカタン」演習の時、米軍がフィリピンに持ち込んだ。米軍は陸上配備の中距離ミサイルによる海上攻撃能力を示してみせたわけだ。訓練終了後もタイフォンはフィリピンに残された。中国は烈しく非難したが、米比両国はタイフォンを撤去する予定はないと発表した。

タイフォンは25年9月の日米共同訓練では、日本にも展開された。中国の強い非難は、この兵器が彼らにとってどれ程大きな脅威であるかの認識を反映している。それなのに日米は改めて日本配備を更に進めると明記した。

先端中距離ミサイル、アムラーム(AMRAAM)の共同生産、日本でのSM―3の生産の4倍増なども列記された。

台湾に関しては、「武力や強制を含む一方的現状変更の試みに反対」と明記した。

中国に日米共同で向き合う明確な形が作られた。経済においても中国を念頭に置いた日米協力が具体的に書きこまれた。いずれもわが国の国益にかない、自由世界に貢献する内容だ。

但し難問はこれからも続く。ホルムズ海峡の自由航行の担保、一日も早い停戦の実現など、高市氏の試練は米国、欧州、アラブ産油国にとっても同じだ。世界が協力する中で、高市氏と日本国に大きな期待が寄せられている。高市氏と日本国の頑張り時だ。

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