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2011.03.10 (木)

「 自民・民主両党で国土を守れ 」

『週刊新潮』 2011年3月10日号
日本ルネッサンス 第451回

1995年、中国の李鵬首相(当時、以下同)がキーティング豪州首相に「日本は30年後には潰れているだろう」と語った。同発言は、97年、キーティング首相から直接この発言を聞いた自民党の武藤嘉文総務庁長官が、帰国して自民党の行政改革推進本部総会で報告したことから、日本人の知るところとなった。

当時、李鵬発言は中国の外交的、軍事的圧力で日本が潰れていくという意味にとられたが、いま、日本は国土喪失という形で潰滅への道を歩んでいる。官民あげて、中国をはじめとする外国資本に国土を売却せんとする事実を見て、そう思うのだ。

私の故郷新潟県では、新潟市長の篠田昭氏らを筆頭に、市内の一等地である万代小学校跡地の5,000坪を中国政府に売却しようという動きがとまらない。市民の皆さんが開始した反対の署名活動に篠田市長が理解を示すわけではない。名古屋市では名古屋城周辺の一等地を、これまた中国政府に、国が売却する動きがある。売却理由はなんと公務員宿舎建設の資金繰りという国賊のような理由だそうだ。

東京財団は今年1月、外資による日本の国土買収とその対策を「グローバル化時代にふさわしい土地制度の改革を」としてまとめ、発表した。その中に瀬戸内海の無人島、三ツ子島を国が売り出した事例が紹介されている。政府は入札に際して国籍条項を設けておらず、入札価格が高ければ中国でも韓国でもお構いなしに売る姿勢である。

果たして三ツ子島はどうなったか。隣の島で操業する地元の港湾荷役会社が買い取った。この経営者は国家の無防備な姿勢に危機感を覚え、外国資本に買われた場合に生じ得る未知の危機を回避するために島を買ったそうだ。

国土売却の狂想曲

すでに広大な土地が中国資本に買われている北海道では、外国資本への土地売却を地元農協が仲介する事例が報告されている。国土を外国に売る最前線に立つ農協などに存在意義はあるのだろうか。

国家は国土とその上に住む国民によって成り立つ。国家の根幹であるその国土を、政府や市や農協が国籍も問わず利用法の制限もせず、売却する姿は、李鵬発言が現実になりつつあることを示している。

昨年4月、自民党内に「日本の水源林を守る議員勉強会」を立ち上げた高市早苗氏は、わが国の国土管理における無防備ぶりは世界に類例がないと驚く。

「種々の報道からも、切迫した現状がわかります。わが国の国土の約4割は私有林で、そのまた4割近くの土地で所有者が不明です。わが国の地籍調査は1951年に始まりましたが、51%がまだ調査もされていません。所有権も境界も不明の山林が広がり、しかもそれが豊かな水を蓄えているのですから、世界に狙われるのはある意味、当然なのです」

地籍不明の国土の広がりを「太閤検地以降、手つかずのままの土地が残っている」状態と描写したのは『奪われる日本の森』(新潮社)を著した平野秀樹、安田喜憲両氏だった。島国の日本は、国土を外国の勢力から守るという考え方が薄いのである。だが、所有者不明の日本の森とそれに付随する豊かな水資源はいまや国際資本にとって最も魅力的な投資商品になっている。だからこそ、厳正な法律を作って国土を守り、ゆめゆめ、悪用を許さない制度が必要だ。再び高市氏が語る。

「地籍調査が行われていない山林が半分にも達する国は、世界でもわが国だけでしょう。韓国でも国土の地籍調査は100%完了しており、他国ではあり得ない状況です。21世紀は水戦争の世紀です。国民を養い、農業を支えるのに死活的に重要な水資源が、日本では所有者不明の形で広がっている。日本人の目には価値を失ったかに見える土地や山林は、水や木材資源の見地から考えれば他国の垂涎の的でしょう。所有制度の無防備さという盲点を突けば、広大な日本の山林は比較的容易に入手出来る。外国企業にとっては豊かな資源を入手する好機なのです」

日本の土地所有権の強さも外国企業にとってもうひとつの魅力である。一旦取得した土地の利用法について、わが国は政治も行政も殆ど介入出来ない。いわば買ったもの勝ちの世界である。

新潟市で多くの市民が中国政府への土地売却を懸念する理由のひとつが、町の中心部の広大な土地を中国側がどのように利用しても、新潟市も日本国も、口も手も出せないという現実があるからだ。

なんという怠慢

日本として、この一連の山林、土地売却にどう対処出来るのか。外国資本の土地買収を規制すべきだという指摘は、何年も前からなされてきた。だが、外国資本を市場から閉め出すことは世界貿易のルールから見て困難である。最も現実的で国際社会とも折り合っていけるのは、諸国が行っている土地の利用規制である。国土の利用に関して、国防上、環境上、さまざまな規制をかけるのは国際社会においてはごく普通のことであり、日本もそうした事例に倣えばよいのだ。

高市氏ら自民党はこの点に着目して昨年11月、森林法改正案を国会に提出した。内容は、まず民有林の所有者に市町村への届け出を義務づけ、市町村の長が森林の有する公益的機能維持に必要があると認めるときは、伐採の中止や造林を命ずることが出来るというものだ。農林水産大臣及び都道府県知事に対しては、水源の涵養や土砂の崩壊防止など公共の目的に沿って保安林を指定するよう権限の適切な行使を勧める内容ともなっている。

自民党は水源地の取水規制法案も提出済みだが、国防上必要な土地や離島についての売却規制については、現在法案を作成中だ。

肝心の与党民主党はどうか。「外国人による土地取得に関するプロジェクトチーム(PT)」の副座長、田村謙治氏は、毎週1回乃至2回、専門家を招いてヒアリングをしており、民主党としての森林法改正案を3月中にまとめたいと語った。が、座長の一川保夫氏の見方は異なる。

「ようやく現行法の問題点や課題が見えてきた段階です。森林売買などを事前の届け出制にするのか、事後なのか、利用法を規制するのかについても方向が確定したわけではありません。関係省庁の横の連絡をスムーズにするところから始めなければならず、最大限努力するということ以上は、いまは言えません」

なんという怠慢か。多くの国民がわが事のように国土の喪失を憂えている。菅直人首相の「国民のための政治」という言葉が本物なら、たとえ自民党案を丸呑みする形になっても、即、党派を越えて法案を可決せよ。

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