「 おのれ一身の些事は脇に置き 使命を果たした人たちと比べて 」
『週刊ダイヤモンド』 2010年11月6日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 861
尖閣諸島周辺の中国漁船による領海侵犯のビデオを公開しないよう、仙谷由人官房長官が衆院予算委員長に要望書を届けたそうだ。
なんと奇妙なことか。民主党は政策決定プロセスの透明化を主張し、そのために広く情報を共有し、議論を経て結論を出すと言ってきた。仙谷氏らの小沢一郎氏非難の一つが、結論を上から一方的に押し付けるということだった。小沢氏を非難した仙谷氏は、いまや自身が情報を堰き止め、議論を困難にし、一方的に押し付ける。なんのことはない、繰り返し指摘してきたが、仙谷氏は小沢氏そのものなのだ。
あえていえば、氏は小沢氏よりも芸が細かく狡猾である。だが、氏の言動の矛盾が、氏への信頼を決定的に損なう結果となっている。ビデオ非公開への圧力は、中国人船長釈放への政治圧力と同質であり、釈放に政治介入はなかったとする氏の主張にいっそう強い疑念を抱かせる。ビデオ非公開、船長釈放、いずれも日本の国益にならない。
仙谷氏らが無原則に譲った今も中国の圧力は変わらず、10月24日には軍艦を白く塗り替えただけの漁船監視船二隻を尖閣諸島周辺の接続水域内に航行させた。仙谷氏は「気持ちがよくない」と語ったが、この言い方自体が、国民にとってはまったく「気持ちがよくない」。「日本の領土、領海、主権を脅かすようなことは断じて許さない」との気概を中国に示すことこそが、官房長官の仕事であろうに。
ようやく対中対話のパイプをつないだ仙谷氏が、いくら中国に気をつかっても、中国が日本の主権を尊重して尖閣や東シナ海問題で譲ることはない。日本が主権国としてまともに発言すれば、中国は11月に横浜で開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)に参加しないかもと恐れて気兼ねする。結果、日本の海や島や資源が奪われる。
それを許し続けるのが菅直人、仙谷両氏、日本の国益を考えることができない自己中心主義者である。こんな両氏を見て、考える。なぜ、日本人は質的にこれほど劣化したのか、と。
そんなとき、素晴らしい本に巡り合った。久木綾子さんの『見残しの塔』と『禊の塔』(共に新宿書房)である。久木さんは1919年生まれだ。第1作は14年にわたって取材し、4年にわたって書き続け、1年推敲して2008年に出版した。取材開始は70歳のとき、作家としてのデビューは89歳のときだったのだ。今年7月には第2作、『禊の塔』を発表した。
いずれも唸るほどの綿密な取材である。作品には読む者を包む濃密な空気が漂っている。その空気の中には、かつての日本人の姿が影絵のように幾層にも重なっている。登場人物はいずれも、五重塔の完成に命をかけている。魂を込めている。
塔を建てる場所は聖地であり、幾十世代の先祖の人びとの魂や霊が集う場所だ。この濃密な精神世界で、どの人物も、誰に言われなくても、宿命を感じ取り、納得し、その宿命を完結させていく。宿命を、使命あるいは天命と言い換えてもよいだろう。
そこには、現世における利害得失への思いなど存在しない。いわんや5センチメートル先の事案をうまくこなして10センチメートル先の自分の手柄につなげたいなどという卑小な考えもない。
八十代の久木さんが書いておられる。年齢を考えれば先を急ぐものだが、取材に14年もかけてしまった、と。久木さんもまた、目の前の利害得失成功不成功とはかかわりなく、なすべきことをなした。それは塔をつくった人びと、つまり日本人の祖先がいかなる人々であったか、どれほど精魂を込めて塔を建立したかを記録に残すことだ。おのれ一身の些事は脇に置いて、使命を果たす。それがかつての日本人だった。その人たちの、私たちは末裔であると知るだけで、菅、仙谷両氏らを見て暗くなりがちな私の心は晴れていく。
sengoku38氏に告ぐ! (尖閣ビデオ)…
senngoku38さん、まだ名乗り出てはいけません。
私の先週末のエントリー、「尖閣ビデオ、ってすでにタイトル? 2010-11-05」だけでなく、あらゆるメディアで報じられている「尖閣ビデオ…
トラックバック by sean's photo diary — 2010年11月09日 12:46
【世論調査:新報道2001】内閣不支持率63.8%>支持率28.4%…
今週の新報道2001調査より
(11月11日調査・11月14日放送/フジテレビ)
「尖閣ビデオ」を流出させたとして、男性海上保安官が名乗り出ました。
あなたは男性海上保安官が、ビデオを流出させたことについて、どう考えますか。
支持する 65.2%
【問1】 あなたは次の衆院選でどの党の候補に投票したいですか。
民主党
21.8%(↓)
みんなの党
7.4%(↓)
自民党
24.2%(↑)
たちあがれ日本
1.0%(↑)
公明党
4.8%(↑)
新党改革
0.0%(―)
共産党
2.2%(↓)
無所属…
トラックバック by ニュース、チョット言いたいことある? — 2010年11月15日 00:09