「 密室で決めるな、朝鮮高校無償化 」
『週刊新潮』 2010年8月26日号
日本ルネッサンス 第424回
朝鮮高校無償化のために日本国民の税金を注入すべきか、川端達夫文部科学大臣が間もなく最終判断する。そこで、朝鮮高校は私たちの税金注入に値する学校かどうかを判断する一助に、そこでどんなことが教えられているかを見てみよう。幸いにも、朝鮮高校の現代史教科書3巻が翻訳されている。
全国の朝鮮高校の教材、「現代朝鮮歴史」を翻訳したのは、作家で北朝鮮問題に詳しい萩原遼氏ら「朝鮮高校への税金投入に反対する専門家の会」である。萩原氏は、『北朝鮮に消えた友と私の物語』(文藝春秋)を世に問うて、北朝鮮の闇の恐ろしさを切り裂いた。また『朝鮮戦争 金日成とマッカーサーの陰謀』(文藝春秋)は朝鮮戦争に新たな角度から迫った力作だった。
朝鮮問題の第一人者の一人である萩原氏らが訳した教科書を読み通して痛感したのは、このような内容を教える授業は、敢えて言えばなくした方がよいということだった。現代史3巻のどこをとってもまともな歴史の記述は全くない。朝鮮高校の教科書に書かれた歴史は、一つの事実を巡ってさまざまな異なる見方があるなどという次元ではなく、事実関係の完全な捏造が目につく。こんな教育を施される生徒たちのことを思うと、可哀相でならない。
たとえば、朝鮮戦争は相変わらず、「南朝鮮当局」が「全面戦争に挑発する犯罪の道へと進んだ」ことにより始まったとの立場で描かれている。その中にあって、「敬愛する金日成主席様」が「武力侵犯者を掃蕩するたたかいへと全人民と人民軍将兵をふるいたたせた」と宣伝する。
どの頁にも、金日成、金正日父子の肖像や彼らを讃える麗々しい修飾語が散見される。想像をこえる頻度と量のその種の記述を生徒たちに押しつけるのが朝鮮高校の教育か。こんな教育を、国民の税金で支援する正当な理由など、あり様がない。再度強調する。朝鮮高校の教育の第一の犠牲者は生徒たちである。
日本関連の記述にも呆れる。誰もが知っている金賢姫元工作員による大韓航空機爆破事件は、またもや「南朝鮮当局」の「でっち上げ」で、「(韓国は)大々的な『反共和国』騒動をくり広げ、その女を第13代『大統領選挙』の前日に南朝鮮に移送することによって盧泰愚『当選』に有利な環境を整えた」と教える。
密室政治で結論
金賢姫元工作員は蜂谷真由美という日本人になりすまして、日本国政府のパスポートを偽造して犯行に及んだが、これは全て、金正日の指示だった。彼女が拉致被害者田口八重子さんに日本語を教わったことも日本では周知の事実だ。にも拘らず、金元工作員に関して、朝鮮学校は徹頭徹尾、出鱈目を教えるのだ。
自民党の山本一太氏が8月4日の参議院予算委員会でこの問題を取り上げた。氏は川端文科相に迫ったが、川端氏の答弁は、これまで私が氏に抱いていた評価の殆どが雲散霧消するような、少なくとも文科大臣にあるまじき答弁だった。
山本氏の質問に、川端文科相は、朝鮮高校の無償化問題は「手続上私の責任で行う」と答えたが、「手続上」とは如何なる意味だろうか。
朝鮮高校無償化問題は政府が結論を出すことが出来ず、6名の専門家に諮問され、今月中に結論が出される予定だ。しかし、委員が誰なのか、いつ、どこで、どの点を議論しているのか、どんな意見が出されたのかなど、一切が秘密にされている。
情報公開や議論の透明性を強調してきたはずの民主党内閣で、この秘密性はなんなのか。文科省政務三役は、川端氏を筆頭に鈴木寛、中川正春両副大臣ら、日教組系ではない良識あるはずの人々が構成する。にも拘らず、密室政治で結論を出そうとするのは、一体どういうことか。
山本氏の追及に、川端文科相はこう語った。
「(朝鮮高校は)高等学校に類するとみなせる教育機関であるかを判断するということのみで判断したい」
上の発言は教科や授業数など「形だけ」高校の体裁が整っていればよいというふうにも聞こえる。そこで山本議員は、前述の金元工作員に関する記述などを引用し、教科書の内容として不適切ではないかと問うた。川端文科相はこう答えた。
「教科がどういう教科(か)、授業時間数、そして教科書、授業の中身を含めて、高校の課程に類する課程とみなせるかどうかを、専門的に御議論をいただいている」
教科の内容も議論の対象だと答弁したわけだ。当然であろう。文科省が教科内容も吟味したうえで、まともに判断すれば、拉致を命じた金正日総書記や金日成礼賛教育を施す朝鮮学校に税金を投入するようなことはあり得ない。
民主党の良識の死
にも拘らず川端文科相は歯切れが悪い。最終判断は自分と言いながら、専門家委員会の陰に隠れようとする。「御指摘の(教科書の)中身等々、私が今の立場でコメントすることはありません」と逃げる。
山本氏が「大臣がコメントしなきゃいけないことじゃないですか」と声を張り上げたが、そのとおりである。文科大臣の責任は、まさに、朝鮮高校の授業内容が日本国民の税金で支えるに足る良識的な内容か否かを判断することだ。国民の前に決して姿を現わそうとしない亡霊のような委員会の陰に隠れての責任逃れは、川端文科相以下、鈴木、中川両副大臣らには許されない。山本氏の質問に「文科相の丁寧な手続きに沿った判断をお聞きしたい」と、責任逃れの答弁をした菅直人首相も同様だ。
折りしも7月10日に発行された「光射せ!」(北朝鮮収容所国家からの解放を目指す理論誌)第5号が、元朝鮮高校教師の申相一氏の手記を掲載した。
数年前まで朝鮮学校の教師だった申氏は、朝鮮学校は「金日成・金正日父子の『忠実な戦士』を養成する『学校』だ」と断じている。「金日成を神として崇め絶対化・神格化する思想総括(自己批判、相互批判)で自殺者が出るほどのおぞましい総括(リンチ)が続いたりした」という。
朝鮮学校は朝鮮総連と切り離せない組織であり、公安調査庁は今年1月、「総連は、朝鮮人学校での民族教育を『愛族愛国運動』の生命線と位置付け、北朝鮮・総連に貢献し得る人材の育成に取り組んでいる」と公表した。また日本政府は年来、朝鮮総連を破防法上の調査対象に指定してきた。
つまり、日本政府は、闇の貌をもつのが朝鮮総連だと認定し、民主党政権は、その朝鮮総連と朝鮮学校がつながっていると、公表したのである。加えて、前述したように生徒のためにならない教育を施す朝鮮高校に、日本の納税者の税金を投入するとしたら、そのことは即、民主党の良識の死を意味すると考える。
朝鮮学校無償化ってゆう冗談は顔だけにしとけ…
「朝鮮学校無償化」検討会議 「なぜ密室で」批判集中 拉致被害者救出に影響も
中華政権・民主党さんが、密室で「朝鮮学校無償化」法案を通そうとして話題になっている。 まあこんなのは普通では通るはずも無い法案なので、「密室で」事を進めるのは適切だと言えるだろう。 川端文科大臣は、「メンバーを公表すると、嫌がらせを受けるかもしれない」「静謐(せいひつ)な環境で審議するには必要だ」と非公表の理由を説明する。しかし、同省の審議会や専門家会議は公開が原則。例外もあるが、議事の内容すら公表していないのは異例中の…
トラックバック by 欺瞞的善人の悲哀 — 2010年09月18日 21:57