「 国益を損じるだけの鳩山首相 出でよ!勇気ある保守政治家 」
『週刊ダイヤモンド』 2010年5月15日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 837
「認識が浅かった」「学べば学ぶほど(米軍の)抑止力(が必要と)の思いに至った」
安全保障という国家の基本政策について、こう述べて普天間飛行場の移設先を、結局、沖縄県にお願いしたいと頭を下げた鳩山由紀夫首相。民主党の凋落は当然で、約2ヵ月先の参議院議員選挙では、単独過半数はおろか、与党全体でも、過半数獲得は無理な情勢になってきた。民主党に残された道は、公明党との連立である。
衆議院で圧倒的議席数を維持する限り、支持率がどれほど下がろうと、開き直ることは可能である。その種の開き直りは、小沢一郎幹事長が辞任しない限り、また氏の影響で動く人物が首相にとどまる限り、十分起き得ると、有権者は見ておくべきだ。
それでは、しかし、民主党政権は持っても、日本が持たない。日本は民主党のためにあるのではなく、日本のために民主党をはじめ、各政党が存在するのは自明の理だ。だからこそ、民主党の暴走を阻止して、日本国全体のための政治を実現するという視点で参院選をとらえることが大事である。
夏の参院選では、昨年の総選挙で民主党に投じられた旧自民支持層の票が逆流現象を起こす可能性が大きい。ただし、谷垣禎一氏の自民党はその票を吸収し得ない。自民党が第二民主党の域にとどまる現状では同党のよみがえりはない。
拓殖大学大学院教授で国家基本問題研究所企画委員の遠藤浩一氏は、比例選挙で1,000万規模の票が移動すると見る。
「2003年以降の選挙で、比例選挙の得票数から見る自民党の基礎票は1,600万~1,700万票、民主党の基礎票は2,000万票の線で推移しています。今年の夏には、自民党はかろうじて基礎票を維持出来るかもしれませんが、民主党は1,800万票の水準まで落ちることが予測されます」
これがどれほど大きな変化をもたらすかは昨年の選挙結果を見ると明らかだ。両党の得票数は民主が2,984万票、対して自民が1,881万票だった。
自民党が基礎票のラインを気持ちばかり超えたのに対し、民主党は基礎票に約1,000万票上乗せした。それが308という圧倒的議席数につながった。しかし、今、これが基礎票の2,000万票ラインに落ちると考えられている。民主党の議席数の減少は著しいと見なければならない。
民主党離れの票を吸収するのが第三極を形成しつつある新党である。「みんなの党」「たちあがれ日本」「日本創新党」「新党改革」などが受け皿ではあるが、バラバラでは大きな果実を手にすることは難しい。
「みんなの党を除けば、どの新党も複数議席の獲得は難しいというべき状況です。だからこそ、これらの新党を束ねていく大戦略を考える人物の登場が待たれます」
いったい、誰がそのような役割を果たす力と見識を持っているのか。正直にいえばどの人物も長短があり、無条件で「この人」といえる人物は思い浮かばない。けれど、確かなことが2つある。まず、束ねる力は自民党内から出てこなければならないということだ。谷垣自民党の枠を突き破るかたちで、その力は生まれてこなければならない。自民党の良識ある保守の政治家には、その責任と、そしてその気になれば、力があると私は考える。
もう一つは、ガッツのある人間にとって、今がその秋(とき)、だということだ。勇気を振るって立ち上がるのだ。文字どおり沈みかけている日本のために、今、政治家としての働きを見せなければ、いったい、いつ働くのか。
その意味で相次ぐ自民党脱党者を私は前向きに受け止めている。反対に、愚かで未成熟で、国益を損じるだけの鳩山首相に退陣も迫れず、立ち上がりもしない民主党の展望こそ、暗いのだ。