「 北朝鮮と中国を恐れる韓国の文大統領 日本は弱気と見られぬよう主張押し通せ 」
『週刊ダイヤモンド』 2018年1月20日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1215
友人で拓殖大学教授の呉善花氏が、彼女にしては珍しく強い口調で断じた。
「安倍首相が平昌五輪に行かないのは正解です。文在寅韓国大統領の慰安婦合意の事実上の破棄は、断固無視することです」
これまた長年、日韓関係について意見交換してきた統一日報論説主幹の洪熒(ホン・ヒョン)氏も断言した。
「文大統領の決定は無視すればよい。平昌五輪には行かないのが正解です。韓国での反応は『当初から問題ではなかったことを敢えて問題にしている愚か者』というものです」
両氏が憤って語るのは、慰安婦問題で日韓両政府が2015年12月に合意した内容のことごとくを文政権が覆したことについてである。
韓国側は「合意があったことは事実」とし、日本政府に再交渉は求めないという。しかし文大統領は、日本が真摯に謝罪すれば元慰安婦たちの納得も得られると語り、事実上、日本政府に重ねての謝罪を要求した。日本が拠出した10億円は韓国政府が肩代わりするという。どの点をとっても、国際社会では考えられない非常識だ。
こんな大統領でも支持率は70%を超えていると報じられている。
「違います。櫻井さんまでそう言うのですか。心外です」と、洪氏。韓国のメディアがいわゆる左翼陣営に席巻されていることは本欄でも報じてきたが、洪氏は韓国の世論調査会社も左翼陣営の掌中に握られていて、信用できないのだと、次のように語る。
「世論調査は行っているのですが、質問が偏っていたり、回答率が異常に低いなど、信用できない。それを彼らは70%の支持があるなどと、一方的な数字に仕立てて発表しているのです」
北朝鮮の平昌五輪への参加について、呉氏は既視感があると語る。
「07年の女子サッカーワールドカップのときと全く同じことになるでしょうね。美女軍団が韓国人の心をとりこにして、平和ムードが生まれるでしょう。韓国の男性は特に、あの手の派手な美女が好きなのです。結果として何が起きるか。北朝鮮が世界一、人権侵害をしていることも、何十万人も殺していることも、核を持って周辺国を恫喝していることも、忘れられるでしょう。おぞましい北の政権がそのまま、存続するということです」
その延長線上で、平昌五輪後に実施されることになった米韓合同軍事演習でさえ行われなくなるかもしれない、つまり米韓関係が決定的に悪化する可能性を呉氏は指摘する。
洪氏は、文政権について一番大事なことを思い出すべきだと警告する。
「彼は大統領選挙のときからずっと大事なことを言っていました。政権をとったら、南北朝鮮の連邦制を目指すという点です。これは事実上、北朝鮮に韓国が呑み込まれるのを容認するということです。そのため文大統領は韓国内で北朝鮮の工作員の活動を監視する国家情報院を機能停止に追い込んだ。北朝鮮系の運動家や工作員を野放しにして、国家保安法も見直す構えです」
文大統領は外交政策においては、明らかに中国との共闘関係を望んでいる。昨年暮れの訪中で、韓国と中国は「抗日」という点で共通の立場にあると、行く先々で語った。彼は慰安婦問題を、日本によるこれ以上ない程悪質な人権侵害だと位置づけて非難するが、北朝鮮の人権問題も中国の人権問題も全く気にかけない。その理由を呉氏はこう語る。
「彼らは日本はずっと弱気のままの国だと考えています。他方、北朝鮮は恐い。中国はもっと恐い。どんな報復をされるかわからない。日本だけが人畜無害の御し易い国だと見ています。だから、今、日本は自分の主張を押し通さなければならないのです」
2人の友人の話の全てに、私は同意するものだ。