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2015.06.13 (土)

「 国益観を欠く安保法制の国会論戦 ニクソン外交に学ぶ戦略的視点 」

『週刊ダイヤモンド』 2015年6月13日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1087

安保法制に関連する国会論戦はわが国の政治家、殊に野党政治家に国益観が欠けていることを示している。
 
5月末にシンガポールで開かれた「アジア安全保障会議」で、中国人民解放軍副総参謀長の孫建国氏は南シナ海問題でふてぶてしく開き直った。氏は演説で中国の埋め立てもインフラ整備も「軍事目的」であると認めながらも、それは「平和」「繁栄」「ウィンウィンの関係」に資するもので「中国の主権の範囲内」「正当な行為」であり「話し合い重視」で行っているなどと、あきれるほどの虚偽を37分間にわたって語った。多くの質問は「演説で回答済み」として退けた。
 
米国をはじめとする国際社会の批判には全く動じずに中国はわが道を行く、それだけの強さを中国は手に入れたという傲慢さである。パックスアメリカーナの時代がパックスシニカの時代へと大転換するのか、その大局面に、私たちは直面している。
 
中国の野望を抑制するには日米協力を緊密にし、日本の力を強化することが最優先だ。日本が自力で日本を守れる国になるべく1人立ちすること、同時にアジアの平和と秩序に貢献できる国になることだ。それが最重要課題であるいま、政局の観点ばかりから国会論戦するのはおかしなことだ。
 
私はここでニクソン外交を思い起こす。1972年2月、毛沢東との初会談で、ニクソン米大統領はこう問うた。

「われわれは日本の将来図について考えなければなりません。(中略)日本を完全に無防備のまま中立国とするのがよいか、当面米国と多少の関係を維持させるのがよいか」
 
日本の唯一の同盟国・米国が、日本の頭越しに日本を無防備にしておくことが米中の国益に資すると思うかと、中国に尋ねているのである。
 
ここでニクソン外交に感情的に反発するのは無意味である。政治家ニクソンの凄さを学ばなければならない。周知のように彼はウォーターゲート事件で失脚し、2期目の任期中に辞任した。地に墜ちた氏の権威はしかし、その後に発表し続けた洞察力溢れる戦略論によって回復される。
 
89年、中国で天安門事件が発生し、国際社会は一斉に中国に制裁を科した。その最中、10月から11月にかけて訪中したニクソンは「訪中秘密メモ」をブッシュ大統領らに送った。
 
氏は米国にとっての中国の戦略的重要性を指摘し、中国を制裁するより、「カード」として活用せよと言っている。しかも、「チャイナ・カード」を適用する対象は日本だと、次のように報告していたのだ。

「経済的超大国になった日本は軍事的、政治的超大国になる能力を備えるに至った。その場合、東アジアで日本、ソ連との間でバランスを保つには、強力で安定した中国と米国の緊密な結び付きが必要だ」
 
米国の国益のために中国カードをソ連に切って、中ソ関係に楔を打ち込んだニクソンが、今度は、強大化する日本に中国カードを用いよと言う。あくまでも国益に徹する政治家としてのニクソンの姿勢は見事である。
 
ここまで読めば、ニクソンが毛沢東に語った言葉への感情的反発など吹き飛ぶだろう。逆に、政治家はどれだけ国益に撤し、国益のための戦略を考え続けなければならないかというお手本を、ニクソンの中に見るだろう。
 
ニクソンは50年代に、副大統領として来日したとき、日本に憲法改正を促し、日本が持つべき戦力まで具体的に語った。しかし、当時もいまも日本は憲法改正どころか、自立さえできずにいる。であれば、日本の意思が考慮されずに将棋の駒として扱われるのも仕方ない。悔しければ、政治家は、国益を考え、1日も早く安保法制を整えよ。国会論戦は問題を糾しながらも、前向きに進めよ。

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