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2014.07.26 (土)

「 壮絶な幼少時代を過ごした下村文科相の目指す教育改革 」

『週刊ダイヤモンド』   2014年7月26日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1044

政界で最も誠実な人物を三人挙げるとしたら、私は間違いなく下村博文氏をその一人に入れるだろう。以前から教育こそ氏の天職だとも感じていたが、氏の著書『9歳で突然父を亡くし新聞配達少年から文科大臣に』(海竜社)を読んで、文部科学大臣としての氏への信頼はますます深くなった。

本の題名通り、氏は9歳で父親を交通事故で失った。氏を筆頭に幼い3兄弟が残され、母は女手一つで3人を育てたが、それは今も昔も生易しいことではない。しかし、貧しさの中で博文少年はけなげだった。父の墓を守ろうと頑張り、父の居ない寂しさと心細さにくじけそうになっては、夜、父の墓を訪れた。大好きな父に聞いてもらいたいことを手紙に記して墓前に埋め、自分を支える力とした。心打たれ、涙を誘われる場面である。

賢い少年は目標を定め、努力を重ねた。夢を描き、志を立てて前進しようとする少年を支えたのが交通遺児育英会(あしなが育英会)だった。

氏は幾度となく述懐している──奨学制度がなければ自分は今とは別の人生を歩んでいたかもしれないと。その場合、政治家下村博文はもとより文科大臣としての氏も生まれてはいなかったはずだ。育英資金が教育に深い理解を抱く人材を育てたことが、いま、どれほど日本のためになっていることか。

7月15日、下村氏は幼児教育の段階的な無償化・義務教育化を目指す中で、まず、五歳児の幼稚園や保育所の費用を、年収360万円未満の世帯を対象に無償化する方針を発表した。人材こそが日本国の基盤である。どの子にも教育の機会を与える仕組みこそ大事で、そのことの意義を誰よりもよく実感しているのが氏であろう。

あまねく教育の機会を与えるだけでなく、まっとうな内容の教育を施さなければならない。そのためには日教組教育でねじ曲げられ、深い傷を受けた日本の教育の改革が必要だ。

下村氏が財団法人日本青年研究所の調査結果を引用して警告している。日米中韓四カ国の高校生の意識調査で、「自分は駄目な人間だと思うか」との問いに、「よく当てはまる」「まあ当てはまる」と答えたのは米国53%、中国39%、韓国32%に対し、日本は84%だった。しかもこの数字は1980年、2002年、11年と調査のたびに、増えている。

年々歳々自分を詰まらない存在と見做す若人はなぜ増えるのか。日本国自体を否定する教育から自分を否定する価値観が生まれているのである。この後ろ向きの教育を正す大改革が必要だ。教育委員会制度の大改革を果たした氏の教育改革に懸ける情熱が本書に溢れている。第一次安倍政権下での教育基本法改正に始まり現政権が引き継いだ教育改革の経緯については本書を読まれたい。

それにしても政治がどれほど厳しい戦いであるか、氏の著書によってあらためて知らされた思いがする。96年、初めての衆議院議員選挙を振り返って氏は「鬼のような執念」「血の滲み出るような選挙戦」と形容する。

06年、第一次安倍政権で官房副長官となった氏に、私は薬害肝炎問題で患者救済の道を開くべく、協力を要請したことがある。同案件は下村氏と萩生田光一氏の助力を得て患者救済の道が開かれたが、当時、下村氏が胃がんを患っていたことを、今回、本書によって初めて知った。

松岡利勝農林水産大臣の自死などで、安倍政権はすでにメディアから嵐のようなバッシングを受けていた。氏は書いている──「自分は戦場にいるのだ。戦いの、しかも大苦戦の真っ最中に、戦友を残して戦線離脱はできない」と。

病と戦いつつ、安倍政権を支えた氏の姿が政治家としての誠実さを物語っている。こんな人物とチームを組める安倍晋三氏の幸せを思ったことだ。

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「 壮絶な幼少時代を過ごした下村文科相の目指す教育改革 」

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