「 大目標を共有する勢力の結集が衆議院議員選挙後の大きな課題 」
『週刊ダイヤモンド』 2012年12月15日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 965
12政党が林立する衆議院議員選挙が眼前に迫っている。各政党の名前や各党の政策の詳細も不確かなまま、投票する人は少なくないだろう。
そんな中、12月6日の各紙は選挙予測を報じた。大筋において自公が過半数を取り、民主が100議席を割り得るとの見方だ。小選挙区制では信頼を失った党は議席を激減させられるが、今度もそのようになるのであろう。
だが、今後の日本を考えるとき、自民復権、民主惨敗で終わってはならない。私たちは真剣に政界再編を考えなければならないのである。価値観を同じくする政治家が共に政党をつくり、政治を単なる数合わせにしないための努力が必要だ。
日本でなぜ、まっとうな政治が行われなくなったか。単純な説明では意を尽くせないのを承知であえて断ずれば、政権奪取の数合わせが先行したからである。自民党が自民党らしさを失った大きな原因の一つが数合わせに走って、政策や価値観が異なるにもかかわらず公明党と連携したことである。
自公連立は自民党支持者にとっても、公明党支持者にとっても、不本意なはずだ。異なる価値観の政党と手を組んだ結果、互いの党是、綱領に修正が加えられ、あたかも違う政党になったかのような現実が生まれるからだ。
念願の政権奪取をしながら、民主党が現在の惨めな「決められない政治」に陥り、有言不実行となって国民にソッポを向かれるのも、価値観の異なる人々の寄せ集めであれば当然だ。旧社会党の左翼陣営から旧民社党の保守陣営まで、水と油の勢力が集まり、党綱領も持てずに今日に至るからこそ、いま終局を迎えようとしているのだ。
野田佳彦首相は、民主党の中の保守派が残って一つの勢力を維持することを目指しているといわれる。それはしかし、民主党という枠組みを維持したままでは難しいだろう。首相が、自身が主張するように保守的な価値観の持ち主で、その価値観を生かしたいと思うのであれば、例えば輿石東氏らが力を持ち続ける党の解体も覚悟すべきだ。それが首相にできるかを問われる時期が来るだろう。
日本周辺の状況を見ると、私たちはこれから少なくとも10年間、凄まじい中国の圧力を受けることが予測される。これまでの民主党のように、「押せば退き、たたけばうずくまる」日本であり続ければ、必ず、領土は奪われ、中国に従属させられることになる。だからこそ、日本の現状を根本から変えていく作業を選挙後、新政権発足と同時に、進めなければならない。
その第一は、自主独立国として主張できる国にならなければならない。第二に、日本国の主張は言葉上だけでなく、力に裏付けられていることを示さなければならない。
力とは経済力と軍事力だ。
経済力に関しては、過去20年余り停滞してきた日本経済の回復を図り、成長させる道を見極めなければならない。それは国を開くことであり、開くだけの自信を取り戻し、開くための備えをつくることだ。米国、アジアと協調して経済を活性化させるために各国と個別のFTA(自由貿易協定)を結び、米国+アジアの枠組み、つまりTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への参加を進めることだ。間違っても中国中心となる東アジア共同体構想に走ってはならない。
軍事においては自衛隊を普通の国の軍隊同様、国軍にすることである。集団的自衛権の行使を可能にし、自衛隊予算を顕著に増額し、近い将来、憲法改正を実現する。
こうした大目標を共有する政治勢力の結集が選挙後の大きな課題である。自民党に、民主党の枠を超えた野田氏ら保守派が連携し、石原慎太郎氏以下日本維新の会も共に結集する方向に行くべきだ。そうした政界再編こそが、今回の選挙の大目標である。