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2006.08.19 (土)

「 中国の本質を見ずしてその市場に心を奪われる経済界と世論の危険 」

『週刊ダイヤモンド』    2006年8月12・19日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 653

中国ほど厄介な国はない。この国とのかかわり方次第で日本の命運が大きく左右されるからこそ、その本質を見て付き合うことが大事である。ところが、肝心の中国の姿をはっきりととらえている人はまだ少ないのだ。

中国を見る目を曇らせる最大の要因が、中国市場なるものの魅力であろう。対中経済交流によって潤っている企業や個人は、利潤の先に待ち受けているものを見ようとはしないからだ。

過日、東海旅客鉄道の葛西敬之会長が、中国の本質に迫る興味深いアナロジーを語っておられた。中国と酷似する国を近代史のなかで探せば、ヒトラー政権下のドイツに行き着くというのだ。氏の指摘する中国とナチスドイツの共通点は以下のとおりである。

まず第一が、国家のかたちである。中国は、中国共産党が政治権力を集中して握る一方で社会主義市場経済を謳い、民間経済の手法を取り入れた。ヒトラーも、同様の国家形態を国家社会主義と称して打ち立てていた。

第二に、中国が推進する東アジア共同体構想は、ヒトラーの唱えた「レーベンスラウム(生存圏)」構想と同じである。東アジア共同体は、民族も歴史も文化も異なるアジア諸国を一つの枠でくくろうとする。だが、真の狙いは中国が同地域を自己の影響下に置くことである。ヒトラーの生存圏構想も同様で、ドイツ民族が幸せに暮らせるだけの資源と市場を確保するために、ドイツ東側のウクライナに至る地域を支配下に置こうとした。

第三は、中国の「一つの中国」政策と、台湾独立の動きは軍事力で制するとした反国家分裂法の思想が、ヒトラーが唱えた「一つの民族・一つの言語・一つの国家」に基づいた「アンシュルス」、ナチスドイツによるオーストリア併合と同じ点だ。

さらに中国は、かつてナチスドイツがその頂点で迎えたオリンピックを開催しようとしている。1936年のベルリンオリンピックで、ドイツはその力を世界に見せつけた。中国もまた2008年の北京オリンピックをさらなる飛躍への跳躍台にし、超大国としての地位に上るためにその力を見せつけようとしている。

しかし、ベルリンオリンピックのあと、ナチスドイツの国家社会主義は行き詰まり膨張政策に転じ、オーストリア、チェコを併合、ポーランドに侵入した。中国が、来るべき華やかなオリンピック開催のイメージの背後に、九億人の極貧農民を抱え、過酷な弾圧で政府批判を抑圧していることは周知の事実だ。近代史のアナロジーは、そうした矛盾は北京オリンピック後に噴出してもおかしくないと告げている。

葛西氏はさらに指摘した。中国はナチスドイツ同様、一応市場が開放されているために財界人が吸い寄せられやすいのだと。1939年9月、ドイツのポーランド侵攻を受けて英国がついに対独戦に踏み切ったとき、英国の銀行家たちは議会に押しかけて反対した。「ドイツに貸したおカネが取り立てられなくなる」という理由だったそうだ。

経済同友会の北城恪太郎氏や小林陽太郎氏らに代表される日本の経済界のイメージが浮かんでくるではないか。

先に「日本経済新聞」がスクープした元宮内庁長官・富田朝彦氏のメモに対する反応もまた、中国の本質を見抜くことができていないからではないか。多くの疑問を含む「富田メモ」の意味は、その全容を見ずしては分析できないにもかかわらず、あのメモをもって“A級戦犯”分祀推進に短絡させ、首相の靖国参拝中止を求めるのは、まさに中国の本質を見ていないからである。

ナチスドイツの本質を見誤って三国同盟を結んだ松岡洋右元外相を、昭和天皇は憤られた。昭和天皇はまた、中国の本質を見ずして中国に屈服することを喜ばれないと思うが、どうか。その意味でも靖国参拝の意思を変えない小泉純一郎首相はまったく正しいのだ。

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