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2000.12.01 (金)

「 私たちが『窒息死』する日 」

『GQ』 2001年1月号
COLUMN POLITICS

「神の造りたもうた最大の魔物は人間だ」といわれるが、まさに地球が「魔物」によってひどいめにあわされているという報告が、いくつも目につくようになった。
 中でも、大気中の二酸化炭素の量がふえて、『人類は80年で滅亡する』(東洋経済新報社)と予測した西澤潤一氏らの学説には、思わず驚かされてしまう。
 西澤潤一氏は、私の最も尊敬する人の一人である。科学する心と、好奇心をもち、心に浮かんだ疑問を極めて論理だった方法で追究して答えを得るのが氏の手法だ。氏の考えを理解して十分な研究資金を提供する企業なり研究機関があったなら、若き日の西澤氏こそが半導体を、人類ではじめてつくり出していただろうといわれている。
 その西澤氏がいま、人類の近未来での滅亡を警告しているのだ。尋常ならざることだと思う。
 西澤氏らは先の著書で指摘する。大気中の二酸化炭素が3%に達すると、大気中にいくら酸素があっても人間は窒息死する。その状態が私たちの予想よりはるかに早くやってくるのではないか?と。
 大気中の二酸化炭素濃度は現在0.036%で、2080年には約10倍の0.3%になる計算だそうだ。80年先は0.3%と予測され、その値は「窒息死」の3%よりは低いにもかかわらず、なぜ、西澤氏らは「80年で人類は滅亡する」と警告するのか。ここに温暖化とその海への影響が出てくるのだ。
 私たちが排出する二酸化炭素は加速度的に増えている。現代の1人当たりのエネルギー消費量は19世紀の100倍、人口は約10倍で、エネルギー消費は1000倍になる。総量で年間62億5000万トンの二酸化炭素は、では、どこで吸収されているのか。大気も森も吸収してくれるが、最も多く吸収してくれるのは海である。
 西澤氏らはこれまでに自然界に蓄積された炭素(二酸化炭素)が大気圏に7500億トン、陸上に1兆2000億トン、海洋中に36兆トンと推測する。海は、大量の二酸化炭素を吸収して人類が生存できるような大気をつくり出す大事な役割を担っている。
 海は生命の起源のみならず、生存の維持にも大きな力を発揮してくれている。
 しかし、この海が、果てしなく増えつづける人類のわがままの証しとしての二酸化炭素の排出に反乱をおこすかもしれないのだ。
 その第一は、二酸化炭素をはじめとする種々の排出ガスで地球の温度は確実に上昇しており、これが海水の温度も押し上げつつあることだ。海は空気と触れ合うところで盛んに大気中の二酸化炭素を水に溶かして取り込んでくれる。海と空との不思議な交換は表面から水深75メートルまでの海洋圏で盛んである。もともと二酸化炭素が水に溶け易い性質であるのと、二酸化炭素の「酸」と海洋水の「アルカリ」の性質が丁度よく反応するのだ。
 二酸化炭素濃度の高くなった海水の表層は、地球全体を、グリーンランド沖合の北半球から南半球へまわり、再び北半球に戻るコースで巡っている壮大な深層海流に押されて移動し、やがて大きく大きく海底深く引き込まれていく。
 この深海への対流は世界最大規模の川、アマゾン川100本分が流れ込む規模だ。秒速10センチメートルでこの深層海流は年間15キロメートルで、4000年をかけて地球を一周する。
 ゆったりとした大きな循環の中で、膨大な量の二酸化炭素が深層海流の中に蓄えられ、地球を巡っているのだ。
 ところが、温暖化が進むと、海洋の温度も上昇し、深層海流に狂いが生じる。温度の高くなった海流は、余り海底深くまで潜り込めなくなり、海洋水の流れもとまりがちになる。海水の温度がさらに上がれば海水に溶け込んでいる二酸化炭素が、サイダーやラムネのように突如、大量に大気中に放出される恐れもあるという。
 こうして大気中の二酸化炭素濃度は、ある日突然、大幅に上昇しかねないというのだ。地球を苛めすぎてはならないのだ。

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「 私たちが『窒息死』する日 」

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