「 民主党らしさを損ねる言論封鎖 」
『週刊新潮』 2009年10月29日号
日本ルネッサンス 第384回
野党時代の民主党の最大の魅力は政策決定過程の透明性にあった。良くも悪しくも党内議論は活発だった。これでひとつの政党かと訝るほど、右から左まで幅広い人材で成り立つだけに、十分な議論なしには、極論が党の政策として打ち出されかねない実態がある。危うい政策を辛うじて水際で止め得ていたのは活発な党内議論ゆえだっただろう。
ところが、いま、政策決定過程の透明性も闊達な議論も封じ込められている。発端は9月18日付の通達だ。通達は、その2日前の鳩山政権発足を受けて、「民主党・会派所属国会議員各位」に、小沢一郎幹事長名で送られた。
2枚の通達の1枚目には、「政府・与党一元化における政策の決定について、別紙の通りとすることといたしました」、「議員各位におかれましては、必ずお目通しをいただきますよう」と素っ気なく書かれている。308議席を勝ちとった実力者、小沢幹事長から全民主党議員へのトップダウンの指示である。
2枚目の紙の左上に「議員必見」と念押しされ、①として、民主党政府では「一般行政に関する議論と決定は、政府で行う」「従って、それに係る法律案の提出は内閣の責任で政府提案として行う」と書かれている。
②は、「選挙・国会等、議員の政治活動に係る、優れて政治的な問題については、党で論議し、役員会において決定する」、「必要に応じて常任幹事会あるいは議員総会で広く意見交換を行う。従って、それに係る法律案の提出は、党の責任で議員提案として行う」である。
①は民主党政権では法案はすべて政府が作成するので、議員は立法をしなくてよいということだ。
だが、これは極めておかしい。国会議員を英語ではlawmakerと呼ぶ。法律を作る人である。立法することが責務であり、最大の存在理由である人々に、立法しなくて宜しい、政府がすべてやるから、個々人の立法は許さないと言っているのだ。同通達を受け入れるなら、民主党議員の多くは議員である必要はなくなる。
排除されてきた危うい極論
②は、個々の議員の「優れて政治的な問題」、たとえば、公認問題、選挙活動などについては党が指導するというものだ。
政策決定は政府、選挙活動などの組織運営は党、と二分し、鳩山由紀夫首相と小沢幹事長の間で、政府と党の棲み分けを明文化したとも言える。斯くして、政府ポストに就けない多数の議員は小沢幹事長の指揮下に置かれることになる。
通達文書には、各省に政策会議を設け、部門会議は設置しないと書かれている。これはどういう意味か。
民主党の政策決定過程は、これまで主として3段階に分かれていた。まず、部門会議で各々の政策課題が案として揉まれた。部門会議で決定された政策は政調(政策調査会)に上げられ、党役員の了承を経て、最終段階のNC(次の内閣)に上程され、民主党の政策となった。
前述のように、このプロセスで活発な議論が重ねられ、危うい極論は排除されてきたが、党内意見がまとまらない法案については、部門会議以前に議連で賛否両論が展開された。その好例が外国人参政権問題だ。
同問題は、韓国に李明博政権が誕生し、公明党や民主党に議論を促したこともあって、国内での議論が活発になった。08年5月、小沢代表(当時)は渡部恒三最高顧問に、永住外国人に地方参政権を付与する法案のとりまとめを要請した。それに先立ち、想いを同じくする岡田克也氏は「在日韓国人をはじめとする永住外国人住民の法的地位向上を推進する議連」を立ち上げ、会長に就任した。
対して、反対派の議員らも、西岡武夫氏を中心に議連を作った。
当時私は、両方の議連の会合に招かれ意見を述べたが、両者の考えはまさに正反対だった。勢力がほぼ拮抗する両者の溝は埋めようがないほど深く、一方の考えで纏めようとすれば、党の分裂は避けられないと感じたことを憶えている。結果は、小沢氏の強い意思と、岡田氏らの説得によっても法案は一本化出来ず、民主党は遂に法案提出を諦めた。
だが、部門会議も政調も廃止され、議連に象徴される自由な議論もなく、議員立法への道も閉ざされたかに見えるいま、なにが起こり得るのか。民主党は部門会議の代わりに「政策会議」を設けた。これは省毎に副大臣が主催するもので、与党議員なら誰でも参加可能だ。
政策会議では「政策案を政府側から説明し」、各議員の「提案・意見を聞き、副大臣の責任で大臣に報告する」。そのうえで大臣、副大臣、政務官で構成する大臣チームが「政策案を策定し、閣議で決定する」とされている。
民主主義の否定
大臣チームは党内意見や提案を「聴取」はするが、それを取り入れる義務は負っていない。この点が、部門会議との、最大の違いである。以前は部門会議で手続きを踏まない限り、立法は出来なかった。種々の議連の議論も、相手を説得出来なければ議員立法には至らなかった。つまり、かつての民主党では、どんな法案でも議論を尽し賛否を諮ることが政策立案の大前提だった。このような民主党の姿は、たとえ党内に時代錯誤の化石のような政治家を抱えているとしても、外からは見えにくいプロセスで物事が決められた自民党に較べ、好感がもてた。
ところが圧倒的多数を得たいま、民主党は豹変し、議員の提案や意見は聞きおかれるだけなのか。個々の議員の発言の場を奪い、議論の場をなくすとしたら、民主主義の否定である。8月の総選挙で国民は、こんな言論封鎖体制の民主党を思い描いて選んだわけではないだろう。
この問いに、「そうではない」との見方がある。中堅議員の1人が名前を伏せるという条件で語った。
「つまり、すべて試行錯誤なのです。英国の議会制度に学んで、個々の議員の意見を反映させながら、党と政府の一体化を目指していると考えてほしい。うまくいかなければ、柔軟に手直しをすると思います」
試行錯誤も手直しもよいだろう。しかし、外交や安全保障に関する限り、失敗は国益を害しかねない。
たとえば、外国人参政権は総務省の所管だが、総務大臣チームが法案を提出し、閣議決定を経て、国会での議決になったと仮定する。これ自体、事実上数人による決定である。そのとき、民主党のやり方で、議員諸氏は、正しく問題を判断出来るだろうか。政策は政府に任せ、党指導の下で選挙区にはりついているばかりでは、如何なる事柄に関しても知識を蓄え正しい判断を下せるとは思えない。結果、外国人に参政権を付与する事態になったとして、果たしてやり直しは出来るのか。民主党の議論封鎖体質への懸念が拭い切れないのである。
公園デヴューしても「病気あるから鳩さわっちゃダメ」って お母さんもいるんだよな。 …
インターネットは いろいろ勉強になるなぁ。 …
トラックバック by “Mind Resolve” ~ この歌声きくとムラムラきちゃうってオンナが…ニッポンに いなくなったんだよな。わりぃけど。 — 2009年11月04日 03:03
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社会学は社会現象の実態や、現象の起こる原因に関するメカニズムを解明するための学問です。対象は行為、行動、相互作用といったミクロレベルのものから、家族、コミュニティなどの集団、組織、さらには、社会構造やその変動などマクロレベルに及ぶものまでさまざまです。思…
トラックバック by keitaro-news — 2009年11月08日 04:56
河野太郎先生殿 民主党が進めようとしている外国人参政権問題に反対なら反対だとメルマガで情報配信いただけませんか?…
自民党議員の動きも監視が必要です。
油断できません。…
トラックバック by 美しい国への旅立ち — 2009年11月08日 13:44
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愛国者の代表である櫻井よしこ先生が素晴しいことを言ってくれた。鹿児島県奄美市で講演し、「『友愛』の精神など通じない」「(『友愛の海にしよう』と言った鳩山首相はまるで夢見る少年のようだ」と看破したのだ。 そう、民主党は日本を滅ぼそうとする極悪非道の政党で…..
トラックバック by 愛国を考えるブログ — 2009年11月09日 06:24