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2004.06.12 (土)

「 功を焦ったか小泉首相の拙速 日朝交渉の国際社会の評価は“人質をカネで買い戻す国” 」

『週刊ダイヤモンド』     2004年6月12日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 546

小泉純一郎首相の再訪朝に対する国際社会の評価をひと言でいえば、「人質を買った」ということである。いかに人道の冠をかぶせても、金正日総書記との交渉の席で、食糧25万トンと医療援助1,000万ドルを約束したことを、国際社会は決して評価しないだろう。

日本の外交は、顔の見えない外交といわれて久しい。つまり、主張すべきことも主張せず、時には主張すべき論点も持ち合わせていないという軽侮の視線で見詰められてきた。その一例が、バングラデシュのダッカで日本赤軍に人質を取られ、人質解放のために日本赤軍のメンバーら6人を刑務所から出し、600万ドルの現金を持たせて逃走させた事件だった。今回の小泉外交は、1977年のあの福田赳夫首相以来の悪例である。人質をカネと物で買うということが繰り返された結果、それは日本国政府の常套手段だとの評価が定着していくのだ。

今回の日朝首脳会談は、その決定の仕方、タイミング、行なわれ方、その後の首相の発言すべて、腑に落ちないことばかりである。疑問の一つは、帰国一週間後に首相はなぜ、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の全体大会に挨拶のメッセージを送ったのかということだ。

朝鮮総連は、破壊活動防止法の適用も検討されている公安調査庁の指定団体である。またこの日、徐萬述朝鮮総連議長は「日本の右翼勢力と反動的な一部のマスコミが拉致問題を極大化した」、そのことによって「反共和国、反朝鮮総連の異様な雰囲気が醸し出された」と演説し、拉致問題についての反省など、少しも示していない。

このような姿勢だから、朝鮮総連のメンバーだった人びとが、5万人とも6万人ともいわれる単位で脱会しているのだ。朝鮮総連のメンバーだった人びとのなかには、絶対的に北朝鮮を信じ、拉致などの犯罪を“祖国”北朝鮮が犯すはずがないと思っていた人びとも多い。しかし、金総書記が拉致を認めたことで、その人びとの信頼は砕け、脱会者が続いた。朝鮮総連はそうしたメンバーだった人びとの気持ちをくみ上げることもせずに、拉致問題解決に力を尽くしてきた被害者の家族やマスコミを、右翼または反動勢力だとして非難するばかりである。そのような組織に、なぜ日本の首相が、これまでの慣例を破ってわざわざメッセージを送ったのか。

小泉首相の訪朝が官邸と朝鮮総連の直接交渉によって実現したという情報が飛び交っており、首相の朝鮮総連へのメッセージは、その情報を裏づけるものである。そのことによって物事が前進するのなら、それでもよいだろう。しかし、現実に起きているのは正反対のことだ。

小泉首相は帰国後、日朝国交正常化交渉を始める意思を明らかにした。細田博之官房長官は5月24日の会見で、「日朝国交正常化交渉は、横田めぐみさんら安否不明の10人の再調査の報告を得ることが前提である」と語った。交渉が再開されたときに、冒頭で10人について納得のいく内容の情報を受け取らなければ、その先には進まないということだ。

ところが、小泉首相は突然、この点について姿勢を変えた。翌25日の衆院本会議で、「交渉のなかで」安否不明者の真相究明を行なう方針だと述べたのだ。つまり、めぐみさんらの情報が明らかにならなくても正常化交渉を進めるという意味で、拉致問題は5人の子どもたち、または曽我ひとみさん一家の再会でケリをつけたいとする北朝鮮側の望みどおりの展開である。

今回の日朝交渉はどう見ても、功を焦った小泉首相の思惑が先行し、完全に北朝鮮ペースとなってしまった。そのことで、日本は“人質をカネで買い戻す国”と.の見方を定着させてしまったのだ。

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