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2014.12.04 (木)

「 憲法改正、今が最後のチャンスだ 」

『週刊新潮』 2014年12月4日
日本ルネッサンス 第633回

12月14日の衆議院議員選挙に向けて、「朝日新聞」が空論を展開中だ。

安倍晋三首相がアベノミクスを選挙の争点に掲げたことに疑義を唱え、11月22日の社説で「首相が長期政権を確保したうえで見据えているのが、憲法の明文改正だ」と書いた。翌日の「天声人語」は、「(争点は)本当に『アベノミクス』なのか、実は憲法への姿勢ではないのか」と書いて、争点を疑えと読者を叱咤した。

選挙でどの政策を目玉として訴えるかは政党の戦略・戦術であり、また有権者が政権の政策全体を見詰めるのも当然で、ここには憲法改正も入る。他方、朝日が憲法問題を争点として論ずるなら、自民党が憲法改正を目論んでいると非難がましく推測するより、各党の公約をきちんと論評することが大事ではないか。

自民党の政権公約には、改正原案を国会に提出すると、きちんと書いてある。前回の選挙でも憲法改正は自民党の公約だった。憲法改正を目指していることを明確にしているのであり、それ自体、何ら問題はない。

問題があるのは、むしろ民主党のほうだ。政権政党だったときも現在も、民主党は何ら明確な政策を打ち出していない。「未来志向の憲法を構想する」と書いているが、党内意見がバラバラで党の案をまとめることもできなかった。憲法については誤魔化すしかない民主党にこそ、疑問をぶつけるべきだ。

公平な批判も公正な論評もできない朝日に読ませたい本がある。田久保忠衛氏の『憲法改正、最後のチャンスを逃すな!』(並木書房)である。本書を読めば、憲法改正を目指すことが重大な懸念だと眉をひそめる朝日の考えが、海にも空にも脅威が満ちている現在の世界で、どれほど非常識な、周回遅れの認識であるかがわかる。

噴飯物の幼稚さ

11月20日、アメリカの共和、民主両党で構成する「米中経済安全保障調査委員会」が年次報告書を発表した。中国の軍事力増強に強く警鐘を鳴らした同報告書は、「習近平主席に高いレベルの緊張を引き起こす意思があるのは明らか」と非難した。紛争、或いは戦争を引き起こす可能性が濃厚と断じられた習主席の下で、中国海軍の潜水艦及びミサイル搭載水上艦の数は2020年までに351隻に達する。戦力増強が中国に外交上の優位を許し、アメリカの対中抑止力、とりわけ日本に対する抑止力を低下させる、と明記されている。アメリカの日本防衛能力は下がり続けるというわけだ。

オバマ大統領は中国に位負けしたのか、安全保障においても金融・経済戦略においても対中消極姿勢が目立つ。それが中国の膨張政策に拍車をかける。11月25日、尖閣諸島周辺の日本の領海に中国の公船3隻が入り、また接続水域には6日連続で侵入している。小笠原、伊豆両諸島海域に展開した220隻余りの中国漁船の内、居残っている船は海上保安庁の取締りにも拘らずサンゴ密漁を続行中だ。小笠原の海から大島近海まで北上した中国漁船もある。南に下った硫黄島周辺の海で漁をする中国漁船群を、小笠原村の漁船が見掛けてもいる。

この事態に、海保も海上自衛隊も有効な手を打てていない。外国勢力の領海や接続水域への侵入は、普通の国の場合、コーストガードや海軍に直ちに阻止され、拿捕され、悪質な場合は攻撃を受ける。

しかし、海保は中国船が攻撃をしてこない限り、基本的に手を出せない。武力攻撃に至らないグレーゾーンと呼ばれる事態には全く対応できないのである。この種の安全保障体制の大きな穴を埋めるべく、安倍政権は努力してきた。その一部が集団的自衛権行使容認の閣議決定だ。

朝日は11月22日の社説で同閣議決定を非難した。民主党はこの閣議決定を撤回するとの公約を掲げた。では、朝日は、サンゴ密漁船にどう対応すべきだと言うのか。11月6日の社説にはこう書いている。

「違法行為をさせない責任はまず中国側にある」「尖閣諸島沖に中国漁船が増えているのも気になるところだ」「漁船は自在に境界を越え、ときに外交問題化してしまう。トラブルが拡大したり繰り返されたりせぬよう、中国側は考えなくてはならない」

噴飯物の幼稚さである。中国はすでに何十年間も漁船、公船、軍艦を巧みに使い分け、他国の海や島々をサラミを切り取るように少しずつ奪ってきた。中国の狡猾な戦略、戦術、侵略の実態を、朝日社説子は研究していない。

「トラブルが拡大したり繰り返されたりせぬよう、中国側は考えなくてはならない」などと、どこにも通用しない社説を掲げる新聞だから、集団的自衛権行使容認の閣議決定を撤回するという民主党の公約を疑問視することもないのだろう。

鳩山由紀夫氏を連想させるこの種の社説はなぜ生まれるのか。田久保氏は前述の『憲法改正~』の中で「日本のマスメディアには国際情勢は眼中になく、島国の中での反安倍キャンペーンにうつつを抜かしているところが少なくない」と喝破した。

「吉田ドクトリン」への誤解

なぜ、朝日は島国の視野に取り憑かれ、うつつを抜かすのか。半世紀以上、国際戦略を研究し、日本の立ち位置と日本国憲法の異常を指摘し続けてきた田久保氏の説には説得力がある。氏は書いている。

戦後の日本社会に浸透したのが憲法9条への盲信であり、「できれば軍事力なしで、必要なら最小限度の軽武装に徹して、ひたすら経済繁栄を目指すという『軽武装・経済大国の道』を選んだこと」が、日本を異常の世界に安住させてきた価値観だ。このような考え方を「吉田ドクトリン」と呼んで後生大事にしたのが日本だと指摘する。

吉田茂・元首相は戦後の貧しい日本には軽武装による経済繁栄が必要と考えたが、時が来たら再軍備し、軍国主義にならない民主的な軍隊を持つことをマッカーサーと合意していたと、田久保氏は、吉田氏の私的顧問を務めた辰巳栄一元陸軍中将の言葉として伝えている。永遠に軽武装で経済のみを追い求める吉田ドクトリンなど、存在しなかった。にも拘らず、日本社会はこの言葉が撒き散らした非戦主義の惰眠を貪った。

氏は、日本には戦後3回、憲法改正の好機があったと指摘する。だが、その度に日本全体が朝日のように、見るべき事実を見ず、察知すべき危機を察知せず、好機を逃した。

いま、私たちは、アメリカの外交、安全保障政策の後退、中国やロシアの膨張主義と力による支配の強化に直面している。大きく変化する世界情勢に適応できない国は衰退する。この危機は、日本にとって憲法改正の4回目の好機なのだ。なぜ、憲法改正が必要か。現行憲法の屈辱的な成り立ちから、一気に読ませるこの書で明らかになる。私はこれを、とりわけ朝日の社説子、天声人語子らに読んでほしいと思う。

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