「 日韓歴史問題を解くか、新分析 」
『週刊新潮』 2009年3月26日号
日本ルネッサンス 第355回
韓国の対日歴史観を根底から変えるきっかけともなる本が出版された。ソウル大学経済学部教授、李榮薫(イヨンフン)氏の『大韓民国の物語 韓国の「国史」教科書を書き換えよ』(文藝春秋)である。
昨年7月、韓国で会ったとき、教授は『物語』の下書きともいえる『代案教科書』という本を、同僚の教授らと共同執筆したばかりだった。『代案』では韓国の歴史が事実に基づいて見詰め直されている。たとえば、植民地時代、日本の総督府は1910年から18年まで、農地調査を行った。そのとき、農地の4割を奪ったというのが韓国での通説で国定教科書でも教えられてきた。
だが、李教授らは、土地台帳を丹念に調べ、右の通説が事実に反することを証明した。こうしたことを筆頭に、韓国の現代史の真実を掘り起こした『代案教科書』に続いて、世に問うたのが、『大韓民国の物語』である。
『物語』で、李教授は、韓国人の歴史のとらえ方の尋常ならざる問題に言及している。とどのつまり、「歴史は人々の記憶」である。「一般大衆の過去の出来事に関する集団的な記憶」が歴史となっている。教授は、韓国においては、その集団的記憶が「特定の利害関係をもつ集団や政治家によって作られたり、操作され」てきたと、強調する。だからこそ、歴史家は集団的記憶にうずもれてはならないというのだ。「集団的記憶が政治的に企画され操作されうることを、史料に基づいて」証明し、集団的記憶としての歴史のいかがわしさを一般大衆に知らせることが、専門家としての責任だと、言うのだ。
韓国の歴史意識の問題の一例として、李教授は、金大中、盧武鉉両政権時代に、盛んに行われた韓国の近現代史への批判をあげる。両大統領と彼らをとりまく人々は次のように主張した。「先人たちの尊い犠牲にもかかわらず、(日本からの独立回復後)正義は敗北し、機会主義だけが蔓延(はびこ)った」、「日本の植民地時代に民族解放のための犠牲となった独立運動家たちが建国の主体となることができず、あろうことか、日本と結託して私腹を肥やした親日勢力がアメリカと結託したせいで、民族の正気がかすんだ」と。
親日は売国奴
日本の敗戦で後ろ盾を失った親日勢力は、今度はアメリカにすり寄り、民族分断を煽り、その結果、いまの南北分断があるというのだ。つまり、国全体で大韓民国の建国の歴史を否定しているのだ。
李教授は、この種の歴史解釈や集団的記憶の呪縛を解かない限り、韓国の健全な発展はあり得ないと、繰り返し強調する。
言うまでもなく、従来の反日歴史観に逆らうような李教授の歴史解釈は、大きな危険を伴う。韓国で確立されている歴史観は、日本統治の時代は、極悪非道の日本人の、善良なる李朝朝鮮への弾圧の時代だったという決めつけに余りにも色濃く塗り固められている。高校の国史教科書には「日本は世界史において比類ないほど徹底的で悪辣な方法で我が民族を抑制し、収奪した」と書かれており、「日本の悪辣な統治」を具体的に生徒に教えるとき、教師は「今にも泣きそうな顔になり」、「生徒も涙」しながら聞くという。だから少しでも、日本に理解を示せば親日的だという批判が飛んでくる。それは、「売国奴」のレッテルを貼られるに等しい。
だが、『代案教科書』は、思いがけずも、韓国でベストセラーになった。『物語』も幅広い支持を得た。それは偏った歴史に食傷した韓国人が、まともな歴史書に餓えていたことを示すものではないか。
但し、『代案教科書』同様、今回の『物語』も、従来の反日一色の歴史観を正すものとはいえ、それでも、日本に対しては非常に厳しい内容もある。たとえば、強制連行があったとして日本批判を展開する吉見義明氏に「多くのことを学」んだ慰安婦問題である。教授は、女性たちが連れていかれたのは、日本軍の強制ゆえではなく、女衒の働きが大きいこと、女衒に売ったのは主として家族だったこと、女性たちの中には大金を手にした者もいたこと、だが行動の自由は与えられておらず、「奴隷」のように働かされたこと、などを指摘。そのうえで女性たちの連行に直接関わっていなかったとしても、このような働き方をさせ、未成年の女性を醜業につかせた点について、日本政府は責任があると結論づけている。
2004年、慰安婦問題について、韓国に横行する乱暴な議論に反論したために、李教授は暴風雨のような非難を浴びた。教授が日本にも、韓国にも、両方に厳しいことを直言してきたことがわかる。
作られた反日歴史観
李教授は1910~45年の日本統治の時代の韓国人の集団的記憶は「収奪」の一言でくくられると説く。高校教科書では、先述のように総督府が農地の4割を奪ったとされ、加えて、生産されたコメの半分を奪い、650万人の朝鮮人を労働力として収奪し、賃金も払わずに奴隷のように酷使し、数十万の乙女を挺身隊として動員し、慰安婦としたなどと教える。
「このような教科書の内容は事実ではありません」、「すべて、教科書を書いた歴史学者の作り出した物語です」と李教授は断言している。
たとえば「コメの収奪」である。生産されたコメのほぼ半分が日本に渡ったのは事実だが、それは日本内地の米価が30%ほど高かったから移出(輸出)されたのであり、農民も地主も多くの所得を得たという。「朝鮮の総所得は増え、全体的な経済が成長しました。不足する食糧は満州から粟や豆のような代用品を購入して充当しました」「人口一人当たりのカロリー摂取量が減ったとは必ずしも言えないのが実情でした」と、専門の経済学の視点で解説するのだ。
輸出によって所得が増え、工業製品を日本から輸入。機械や原材料も購入して工場を作ることも出来た。大手の「京城紡織」のような会社がこうして作られたという。
日本が土地を収奪した事例は存在しなかったのみならず、むしろ土地台帳の関連資料が示すのは、総督府が土地所有の制度化において「公正」であったということだそうだ。
女子挺身隊と慰安婦が全く別物なのは、すでに日本では周知だが、韓国では未だに両者は一体だと思われている。教授は、市民団体や特定の政治目的を持つ団体が意図的言い替えをしているからだと指摘する。
経済の専門家から示された歴史の新側面は、現時点で政治学や社会学の専門家からは積極的な賛同を得ていない。だが、学術的な裏づけがあるために、無視もされていない。事実に沿った新しい研究を、よりよい日韓関係につなげていくべきであろう。
[…] そんな中、櫻井よし子氏のブログ で、韓国内部で歴史の見直しに関する書籍が発刊されるようです。こういう取り組みが一定の成果を得て、素直な気持ちで日韓の未来を話し合うことが […]
ピンバック by kojitan’s note[日本人として] » 外交-北の — 2009年04月01日 13:56
中国反日暴動のトリックとは?
結論から言うと、反日暴動、デモ等は決して組織的なものでなく、ましてや反日でもない。巧妙なトリックでしかない。以下にいくつか事件を並べた後に真相を検証する。
トラックバック by スカイ・ラウンジ「有視界飛行」 — 2009年04月25日 21:17