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2018.04.05 (木)

「 今、憲法改正を潰すメディアの無責任 」

『週刊新潮』 2018年4月5日号
日本ルネッサンス 第797回

3月25日の自民党大会で安倍晋三総裁(首相)は「憲法にしっかりと自衛隊を明記し、違憲論争に終止符を打つ」よう呼びかけた。

党大会の前、メディアは自民党内の不協和音を強調し、地方幹部から抗議の声やヤジが飛べば安倍首相は危機に陥ると報道した。しかし、実際には財務省の文書書き換え問題などをめぐって首相の責任を問う声はほとんどなく、首相演説に賛同の声が上がった。森友問題をダシにして安倍首相攻撃が目的であるかのような言説が横行している。だが、それが具体的根拠に基づく非難であるとは到底思えない。

共産党、民進党、立憲民主党、自由党、希望の党、さらに社民党などの野党議員らがこのところ大阪拘置所に勾留中の籠池泰典森友学園前理事長と接見し、安倍昭恵氏との関係などについて問い、首相夫人の証人喚問などを要求している。政治家や政党がいまなすべきことは、そんなことではないだろう。

政治家には国を守り国民を守るという最も重要な責務がある。その責務を果たすために、まず、日本を取り巻く国際環境の厳しさを見よ。危機に目醒め、現実的に対処せよ。先の自民党大会を通して問われていたことの本質は、わが国の政治家や政党に、この危機の中で国と国民を守る気概はあるのかということだった。あるのであれば、憲法改正にまじめに取り組めということだ。

25日の党大会では自民党の憲法改正への本気度を示すバロメーターとして、改正素案が注目された。素案では➀自衛隊の明記➁緊急事態条項の設置➂参院選における「合区」の解消➃教育の充実─の4項目が提案された。焦点の9条は、現行の1項と2項を維持して、「9条の2」を設ける。9条の2では、「(9条の規定は)我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げ」ないとし、「そのための実力組織として」「自衛隊を保持する」とした。議論の段階で提言された「必要最小限度の(実力組織)」という文言は削除された。が、自衛隊は9条2項の禁ずる「戦力」ではなく「実力組織」とされてしまった。

永遠なるものは国益だけ

右の素案は目指すべき理想の憲法や安全保障の在り方としては不十分だ。しかし、眼下の厳しい国際情勢の中で理想を求め続けて、憲法改正に向けて1ミリも動かないとしたら、それもまた無責任の極みである。その意味で公明党は与党の一翼を担う政党として責任を深く自覚すべきだ。

野党の多くは憲法改正よりも、森友学園への国有地払い下げ問題をめぐる財務省の文書書き換えの責任追及が先だと主張する。そのため、前述したように彼らは籠池氏の話を聞いて、安倍昭恵氏の介入があったかのような主張をし、証人喚問を求めている。

一体、籠池氏の発言はどこまで信じられるのか。このような手法で印象操作に走り、憲法改正の論議にも応じないのは、無責任の極みだ。国の根本である憲法より眼前の政局を優先することは断じて慎むべきだ。

日本国周辺で起こりつつあるパワーバランスの変化は、これまでにない本質的なものだ。トランプ大統領は国務長官にマイク・ポンペオ中央情報局(CIA)長官を、国家安全保障問題担当大統領補佐官にジョン・ボルトン元国連大使を起用した。北朝鮮政策で強硬路線へと軌道修正が図られる可能性を、この人事は示している。斬首作戦を最も恐れている金正恩氏にとって相当な圧力であろう。米軍は4月1日から米韓合同軍事演習に入るが、それに合わせて大規模な国外退避訓練を行うと発表した。これもまた金正恩氏の恐怖心を増幅している可能性はあるだろう。

トランプ政権は経済問題でも強硬だ。3月22日、知的財産権侵害に関して米通商法301条で600億ドル(約6.3兆円)規模の中国製品に関税をかけると発表、翌日には安全保障を理由に鉄鋼とアルミニウムの輸入制限を発動した。日本も中国と同様に扱われるという。

安全保障を米国に頼る日本だが、その頼みの米国は安倍政権を突き放すかのように関税をかける構えを見せた。国際関係においては友好や同盟関係でさえも永遠であるわけではなく、永遠なるものは国益だけだということである。

軍事、経済双方におけるトランプ政権の強硬策で、米中関係は軍事、経済両分野で緊張が高まると予想される。ただ、両国は表で対立しても必ずといってよい程、裏で交渉する。つまり関係の緊迫化はあり得るにしても、二つの大国の動きは複層的で、時に驚くような展開となる。

中国政府を代弁する「環球時報」は3月9日、朝鮮半島の非核化と平和について、以下のように書いた。

◎朝鮮半島の非核化と平和は中国にとって南北朝鮮との関係より重要だ

◎中国は北朝鮮への強い影響力をすでに失った

◎中朝関係はいまや普通の2国間関係だ

米中連携はいつでもあり得る

北朝鮮への特別扱いはもはやないと強調しているのだが、こうも書いている─北朝鮮が米国寄りになる心配などない。中国周辺諸国にそんな国はない。中国の存在は矮小化されていない。

中国は米国に歩み寄ろうとしているのだろうか。朝鮮半島は中国の影響下にとどまるとの見方を示しつつ、中国は北朝鮮をめぐってアメリカと同一歩調を取ることもあると示唆しているのではないか。米中が朝鮮半島をめぐって合意する可能性を改めて想起させるものだ。

トランプ大統領は中国に大統領権限に基づく強硬政策、通商法301条を突きつけはしたが、両国間では水面下の話し合いが進んでいる。

ムニューシン米財務長官は3月24日、習近平主席の経済政策を取り仕切る劉鶴副首相に電話をした。トランプ大統領は、中国は対米貿易黒字を1000億ドル(約10.5兆円)分減らすべきで、その手段として米国の車と半導体の対中輸出を増やすべきことを希望しており、このようなことは水面下で具体的に話し合われていると見るべきだ。

米中連携はいつでもあり得る。そのとき日本はどうするのか。安全保障面でいまのままでは、日本が自力で日本を守り通すことは不可能だ。国民を守り日本国を守るのは、日本国でしかあり得ない。だからこそ日米安保体制の強化も大事だが、日本の自力を強めることが求められる。そのための憲法改正なのだ。

わが国は北朝鮮の危機、中国の膨張、米国の変化に直面しているのである。わが国の安全を「平和を愛する」国際社会の「公正と信義」に縋(すが)り続けて70年。一国平和主義の気概なき在り様を変える歴史的使命を果たすのが、責任ある政治家、政党、メディアの役割だ。

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