「 猛烈なスピードで進む中国の軍拡 日本を守るために必要な自助努力 」
『週刊ダイヤモンド』 2016年3月5日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1123
中国の南シナ海軍事拠点化の凄まじさが彼らの真の姿を見せてくれる。オバマ米大統領には中国阻止の有効な手は打てないと踏んで、氏が大統領にとどまるこの1年間に、取れるものは全て取ろうと、遮二無二攻めている。
南シナ海のパラセル諸島最大のウッディー島への地対空ミサイル配備が明らかになったのは2月19日だった。わずか4日後には、戦闘機も配備された。配備済みの戦闘機はJ-11とJH-7だと米国防総省が発表した。
J-11は中国人民解放軍の主力戦闘機で、日本の航空自衛隊の第4世代戦闘機F-15および米国のF-16戦闘機に匹敵する。南シナ海で起きることは必ず東シナ海でも起きる。中国が海を奪い、軍事拠点化したことは、東シナ海も奪われ、軍事拠点化されるという意味だ。尖閣諸島のみならず東シナ海全体に中国の支配が及ぶことである。
その目的のために中国が実行してきたことの1つが、東シナ海の日中中間線近くにガス田開発と称してプラットホームを建て続けたことだ。安倍政権誕生前は4基だったが、最近の約3年間で4倍の16基に増え、別の4基も建設中だ。
各プラットホームはヘリポートを備えており、これらは全て無人機を含む航空機の離発着を可能にする。レーダーもミサイル発射装置も配備可能だ。これらの「洋上基地」と中国本土の軍事施設、それに中国が配備を開始した大型巡視船「海警2901」を組み合わせれば、日本の防衛能力を粉砕して東シナ海を奪うことも不可能ではない。
「2901」は1万2000トンの大型艦船である。中国は「2901」に必要な強力なエンジン10隻分をドイツから購入済みで、このことから少なくとも「2901」を10隻は建造するとみられている。
日本が尖閣諸島防衛で新たに建造した海上保安庁の巡視船は1000トン級が6隻、3000トン級が2隻である。1万トンを超える大型船は海保にはない。海上自衛隊にはあるが、砕氷艦の「しらせ」(1万2500トン)を除けば4隻である。
1万トンを超える船は、どの海域であれ長期滞在が可能である。また、「2901」は射程10キロメートル、コンピューターで安定した射撃ができる72ミリメートル砲を備えている。日本の海保の巡視船の砲は20ミリメートルと30ミリメートルで射程は2キロメートルである。船体が小ぶりなため揺れも大きく、射撃の命中度は「2901」に比べて疑問が残る。
中国の軍拡は海上だけではない。南シナ海に見られるように空でも見逃せない重大事が起きている。前述の第4世代戦闘機の量産である。航空自衛隊は293機のF-15戦闘機を有しているが、中国はなんとそれとほぼ同数の第4世代戦闘機を2010年からのわずか3年で製造してしまった。
現在、保有している第4世代戦闘機は日本の293機に対して中国が731機である。加えて、彼らは毎年30機から50機とみられる量産態勢で戦闘機を増やし続けており、年間5機がせいぜいの日本との差を広げている。
いま政治家にとって最大かつ最重要の責務は、わが国が南シナ海沿岸諸国と同じ運命をたどらないためには何をすべきか、防衛上の課題を絞り込み、直ちに解決策を講ずることだ。
米国の協力を求める前に、自助努力が必要だ。その第一歩は海保と自衛隊の予算の思い切った増額であろう。船も航空機も潜水艦も、海保の隊員も自衛隊員も、少なくとも日本を守るのに必要な分だけは増やす方向に明確にかじを切るべきだ。
しかし、国会では、自民党議員の失言が続く。民主党はもっとひどい。岡田克也代表は安全保障関連法の破棄を求め続けるそうだ。国益を損なうこんな発想から抜け出さなければ民主党の存在意義など本当にないと思う。