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2026.05.28 (木)

「 中国優位の決めつけは時期尚早だ 」

『週刊新潮』 2026年5月28日号
日本ルネッサンス 第1196回

5月13~15日のトランプ米大統領の中国訪問は双方が「安定」を強調して終わった。イラン戦争に決着をつけられないトランプ氏も、深刻な経済不況から回復できない習近平国家主席も、国力再構築の時間稼ぎのために新たな対立を回避する道を選んだと言ってよい。

14日、大々的な歓迎式典で、習氏はゆったりした足取りでトランプ氏を人民大会堂へと導いた。握手の仕方、表情、歩き方、双方のボディランゲッジなどから、余裕を演出する習氏と親愛の情を示すトランプ氏の意図があらわだった。だが、最大の焦点は何と言っても台湾問題の捌き方だ。

会談前から中国側は台湾に関して米国へ牽制を繰り返した。一方、ルビオ米国務長官も台湾が議題になることを明確にした。そして第一回会談で習氏が強烈な脅迫弾を放った。

「台湾問題は中米関係にとって最も重要だ。うまく処理できれば両国関係は全体的な安定を保つことができ、処理を誤れば両国は衝突し、関係全体を非常に危険な状況に向かわせる」

習氏はさらに頼清徳台湾総統への当てつけの台詞を使い、こう述べた。

「『台湾独立』と台湾海峡の平和は水と火のように相容れない。米国は慎重の上にも慎重に台湾問題を処理しなければならない」

右の発言の前に、トランプ氏を歓迎する短い挨拶で、習氏は「トゥキディデスの罠」を乗り越え、米中が大国関係の新型モデルを築き上げられるかが問われているとも語った。

国際政治学者のグレアム・アリソン氏がハーバード大学教授だった時に発表したのが右の「罠」論だ。この比喩を持ち出した中国の意図は、大国アメリカに、力をつけた中国が挑んでいる、米国が要求を受け入れない場合は戦争だと示唆することだった。

首脳会談冒頭で異例の脅迫発言に及んだ習氏は、世界は二大国の時代に入った、中国はすでに米国と同等の国だ、その立場で世界を治めていくと大見得を切ったのだ。意を決した同発言に、習氏はトランプ氏からどんな反応を期待していたのだろうか。

挑戦的発言

トランプ氏は冒頭の短い挨拶では専ら習氏と中国を賞賛した。同行した多くの財界人を紹介し、彼らが如何に力強く人類の未来を牽引していく一流の人々であるかを宣伝した。

首脳会談で習氏が強烈なパンチを炸裂させた時、トランプ氏は全く反応しなかったというのが米側の発表だった。そしてすぐに次の話題に移ったという。この対応を米紙『ウォールストリート・ジャーナル』は「よい判断だった」と評価した。

ルビオ氏は第一回会談直後、『NBCニュース』の取材に、力のある大国間には常に摩擦が存在する、それを世界の国々のために解決するのが米国の責務だと語っている。ルビオ氏の発言は、米国はもはや自国のことしか考えない身勝手な大国になったというイメージを払拭するものでもある。以下は台湾問題についてのルビオ氏発言の要旨だ。

「中国が台湾問題を持ち出すのはいつものことだ。我々も分かっている。我々は彼らにいつも、武力での現状変更は問題だと応えてきた。米国の台湾政策は歴代政権を通じて一貫しており、変化していない」

バイデン氏が大統領だった時、台湾有事の際に米国は軍事介入するのかと4度問われ、その度に「イエス」と氏は答えた。すると直後に国務長官が「米国は介入するか否かを明らかにしていない」と述べて、バイデン発言を否定してきた。

今、大統領と国務長官は逆の形でバランスをとっている。トランプ氏が習氏の挑戦的発言に一切の反応を示さなかったことが、台湾問題で後退したと受けとられないように、ルビオ氏が「武力による現状変更は問題だ。米国の政策は不変だ」と補足した。米国政府の年来の立場を堅持していると強調することで台湾政策の一貫性を保証してみせたのだ。

ワシントンの情報筋も語った。

「勝者は中国だとする米国メディアも少なくない。が、トランプ氏は米中会談をうまくこなしたと言うべきです。しかし首脳会談は年内にあと3回あります。これからの展開に備えることが必須です」

強い意気込みで台湾問題を持ち出した習氏に、トランプ氏は無反応でやり過ごした。この件について5月15日、「言論テレビ」で中国問題の専門家、小原凡司氏が語った。

「折角、強く出たのに肩透かしをくった。習氏はさぞ口惜しがっていることでしょう」

「エアフォース・ワン」に乗り込み、帰国の途につくトランプ氏が記者団に立ったままで詳細に語っている。その内容から15日の第二回首脳会談で習氏が猛烈に巻き返しを図った様子が浮かんでくる。以下、発言の抜粋である。

毛沢東に心酔

〈会談の2大焦点はイランと台湾だ。イランについてはほぼ全面的に合意した。習氏が台湾への武器輸出を持ち出した。1982年、米台間で結んだ「六つの保証」で台湾武器輸出は中国と話し合わないことになっていると、メディアは言うが、習氏が持ち出したんだ。私にどうしろと言うのか。我々は武器輸出について全体的、かつ詳細な話をした〉

ルビオ氏はNBCに武器輸出に関してこう語っている。

「大統領に決定権がある一方で、下院の役割を忘れてはならない。下院が予算を決めて、下院が決める。我々はそれに従う」

ワシントン情報筋も語る。

「台湾への武器供与は話し合わないとの取り決めにトランプ氏が違反したとメディアは論難しますが、これまでも米中はそのことを話し合ってきた。中国が必ず、持ち出すから。歴代政権はそれを表沙汰にしなかっただけで、今回もトランプ氏が譲ったわけではないでしょう」

トランプ氏はこうも語っている。

〈アメリカから9500マイル(1万5000キロ)の所での戦争はしたくない。有事の際、我々が台湾を守るか。それは話したくない。話さない。答えを知っているのは唯一人、私だ。習氏は米国は介入するのかと尋ねた。私は今日はそんなことは話さないと言った〉

習氏が直接トランプ氏に介入するか否かを尋ねたのだ。これをどうとらえるか。習氏の側にはそれなりの自信があると見ておくべきだろう。氏は「韜光養晦(とうこうようかい)」戦略を打ち出した鄧小平を軽視し、革命で中国を立ち上がらせた毛沢東に心酔している。

米中会談後、中国の台湾攻撃の可能性が高まったとの専門家の見方が示された。習氏は米軍がイラン攻撃でかなりの装備、弾薬、ミサイル等を消耗したと見て、中国軍優位を意識している可能性がある。わが国のすべきことは明らかだ。防衛産業育成に力を入れ、艦船、無人機、弾薬、ミサイル等の製造能力を倍加させ、米国を始め西側世界と力を合わせることだ。経済安保政策の強力な推進が必至の課題なのだ。

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