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2025.12.18 (木)

「 日米関係強化のため高市首相は訪米を 」

『週刊新潮』 2025年12月18日号
日本ルネッサンス 第1776回

12月5日、高市早苗首相が首相就任からひと月半にして初めて会食した。麻生太郎副総裁、鈴木俊一幹事長ら約20人が出席したそうだ。木原稔官房長官が微笑まじりで語った。

「高市さんは丁度よい具合に、いい意味で鈍感。国際情勢や日本の危機には敏感ですが、しがらみとか関係ない。首相就任後約40日間、外遊以外の日はまっすぐ議員宿舎に帰った。今迄こんな人はいない。男社会なら、色々な人から食事に誘われて、宿舎に帰るなら一緒に食事を、となります。高市さんは御主人の介護があるから、勉強したいからと言って帰る。それで皆が納得する。この特質を活かさないといけないですね」

真面目さに加えてもうひとつの特徴は約束を守ることだろう。日本維新の会との連立協議では、維新共同代表の藤田文武氏が身を切る改革として議員定数削減を強く要求し、高市氏は受け入れた。藤田氏が語る。

「今国会で法案を提出しなければ連立離脱です。僕たちはそれ程真剣です」

定数削減には公明党も共産党も立憲民主党も反対だ。自民党内にも賛否両論が渦巻いている。議席数削減は議員自身に降りかかってくる。議員としてのいわば生死に関わるだけに、反対も強い。それでも高市氏は維新との合意を守る構えだ。法案を提出し、採決に持ち込む。採決の過程で賛成者、反対者が明確になる。万が一、可決しなければ、「定数削減、是か否か」を争点に来年1月、解散総選挙もあるやもしれない。高市氏の性格を考えれば、総選挙を望まない議員は注意した方がよいだろう。

連立相手との合意を守る、誓い合った同志としての価値観を守るという、その同じラインで、私たちが余り意識してはいないけれども高市氏が実行していることがある。閣僚手当の全額返上である。つまり首相であろうが大臣であろうが、受けとっている歳費は1年生議員と同額だということだ。維新が「身を切る改革」を主張し、その主張を受け入れた高市氏が決め、国会に提出された歳費法案の中に明記された。

トランプ氏の世界観が「G2」

「北海道新聞」が11月24日付で「効果は限定的」と批判しているが、ひねくれた見方をするのがこの新聞の特徴である。国や国民のために、善き政治を目指す高市氏の心意気を汲みとることが大事だ。若者たちが高市政権を応援するのもこんな氏に惹かれるからであろう。

その高市氏に中国が壮大な歴史戦を仕掛けている。彼らは台湾は中国の領土の一部だと主張するだけでなく、沖縄を琉球と呼び、沖縄も尖閣も中国領だと主張する。

今や中国は何の遠慮もなく歴史を捏造し、戦後の国際秩序を根底から変えようとフル稼働中だ。わが国は中国との情報戦に負けてはならない。最大の焦点は、トランプ米大統領に、歴史の書き換え、戦後秩序の破壊という中国の野望を、正しく理解させることができるか否かである。

トランプ氏は11月24日、中国の習近平国家主席と電話会談をし、その翌日、高市氏との電話会談をした。トランプ氏の立ち位置は日中どちらに近いのか、わが国にとって明暗を決する重要な要素だ。

12月5日、トランプ政権が発表した「国家安全保障戦略」を読む限り、トランプ氏の世界戦略は危ない程、親中に傾いている。当初は秋口の予定だった戦略の発表が12月初頭にずれ込んだ。親中派でウォール街の利益代表と評されるベッセント財務長官が複数回にわたって書き直しを要求した故だと言われている。

29頁の文書から浮かんできたのはトランプ氏の世界観が「G2」になっているということだ。偉大な2つの大国が世界を仕切る、それは米国であり、中国だという年来の中国の思考が、トランプ氏の頭の中に刷り込まれてしまったと思わざるを得ない。中国は「太平洋を2分割しよう」という提案から始まり、オバマ政権以降、ずっと米国にG2論を説いてきた。オバマ氏でさえも嵌らなかった陥穽に、なぜトランプ氏が嵌ったのか。戦略文書を読む限り、トランプ政権の関心が安全保障よりも経済にあり、中国を脅威ではなく、商売相手と見ているからだろう。

トランプ氏は米戦略の大元はアメリカ第一主義だと繰り返す。国民に豊かな生活を保証し、安全を保障するために「モンロー・ドクトリンを改めて主張し、実施する」と言う。理想的な対外関係は、世界各地域に米国のパートナーたる国がいて、その国が米国に一方的に頼るのでなく、主体的に自由や民主主義を体現する地域をつくることだと言う。米国自身はもはや世界の世話を出来る限りしないということだ。

全力で情報発信すべき時

わが国にとっての中国の脅威といえば、まず台湾有事の発生、或いは尖閣諸島及び沖縄を狙われる事態であろう。トランプ氏はそうした事態を避けるために第一列島線の守りを固めると宣言した。しかし第一列島線を守る役割は米国が単独で引き受けるのではなく、日本と韓国が国防費を増額して、敵対勢力を抑止すべきだとする。第一列島線も台湾も、日本や韓国が主体的に守るべきだという。

中国の軍事的脅威にトランプ氏は軽く触れるのみだ。米国は比類なく強い軍事力を持ち、最強の国であり続けると繰り返すが、その記述の多くは形容詞で構成されている。その上でトランプ氏は米中関係を主として経済的側面からとらえ、こう明記した。

「欧州、日本、韓国、豪州、カナダ、メキシコ、その他主要国に対して、中国経済を家計消費に向けてリバランスさせるような貿易政策を採用するよう奨励する」

中国経済の弱さのひとつが家計消費の少なさだ。中国共産党は国有企業に多大なアセットを振り向け、民間経済の成長を妨げてきた。結果、中国経済は行き詰まりつつある。トランプ氏は中国経済のその弱点を補うよう、わが国をはじめとする国々に要請しているのである。

戦略論から見れば、全く解せない。トランプ氏は中国との対峙の仕方を間違えている。いま中国に取り込まれることは中国による戦後の世界秩序の書き換えを許すことにつながる。中国の最終目的は、米国を凌駕して地球社会を中国共産党の価値観で包摂することだ。自由世界の国々はそのようなことを決して望んではいない。

中国共産党の主導する世界は、米国が主導する世界とは全く異なるだろう。だからこそ、ここで米国が中国に取り込まれてはならないことをトランプ氏に理解させなければならない。その役割を果たせるのは誰か。どう考えても私には高市氏しか思い浮かばない。高市氏に、出来るだけ早期に、たとえば来年早々にでもトランプ氏を訪ね対話してほしい。わが国は今、首相、閣僚、外交官、全人材が中国共産党の正体と思惑について、世界が共有するところまで全力で情報発信すべき時だ。

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