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2025.08.28 (木)

「 朝日は萩生田攻撃で石破を支援する 」

『週刊新潮』 2025年8月28日号
日本ルネッサンス 第1160回

なぜ石破茂氏は首相の座にしがみつくのか。「この国を滅ぼしたくない」からだと、本人が周囲に語っているらしい(8月17日『産経新聞』1面、「辞めない首相 腹の内」、末崎慎太郎記者)。

国民の声を「真摯に謙虚に聴く」が氏の売りだ。ならば、国民が衆参両院で石破氏に鉄槌を下したその声に、耳を塞ぐ石破氏は嘘つきか。7月28日には自民党両院議員懇談会で4時間半、首相への退陣要求が続いた。8月8日、重要事項の議決権を持つ両院議員総会では臨時総裁選の実施を求める声が相次いだ。総裁選挙管理委員会は一日も早い石破辞職の実現の為に選挙の前倒しに動いている。石破ではもうやっていけないという声には耳を傾けずに、氏は捨て台詞を吐く。「だったら(代わりの首相は)誰がいいの?」

石破氏が自信を持つ大きな理由のひとつがオールドメディアの顕著な親石破的報道だろう。たとえばNHKの8月の世論調査では石破内閣の支持率が38%へと、前月比で7ポイントも上がった。

日本保守党参院議員、弁護士の北村晴男氏は、8月15日の「言論テレビ」でNHKの調査は全く信頼できないと以下のように語った。

NHKの調査は対象者が固定電話での回答(主として高齢者)か、スマホや携帯電話での回答(主として若い世代)かの比率を示していない。石破離れが烈しい若者層の割合を示していない調査は信頼に欠ける。結果としてNHKの調査には「10から15ポイント分くらい操作できる余地がある」と北村氏は語る。

国民の意思を明解に示したのは一にも二にも衆議院、参議院の選挙結果だ。NHKの調査などに騙されないことが大事である。

石破氏を擁護し、続投させたいと願うオールドメディアの報道は、石破氏に替わる新総裁選びに大きな力を持つ萩生田光一氏の追い落としに直結する。8月15日、萩生田氏の政策秘書が東京地検特捜部に略式起訴され、罰金30万円、公民権停止3年の略式命令を受けた。政策秘書は2024年5月に東京地検特捜部によって起訴猶予とされていた。ところが民間人11人で構成する検察審査会は「不起訴不当」を議決した。特捜部は政策秘書を再捜査し、再び起訴猶予とした。

すると神戸学院大学教授の上脇博之氏らが政策秘書を告発、検察審査会が25年6月に「起訴猶予を続ければ虚偽記載はなくならない」として起訴すべきだと議決した。それを受けて特捜部は7月上旬に再捜査を本格化させ、前述のように罰金を科した。

朝日は某検察幹部のコメントとして「国民の声は無視できない」と報じたが、元東京高検検事の高井康行氏はそのような検察に厳しい目を向ける。そもそも検察の起訴は「一事不再理(判決が確定した場合、同一の事件について再び公訴することは許さないとする刑事訴訟法の原則)」に反する疑いがあると断ずるのだ。朝日、NHKなどが「萩生田氏秘書」の嫌疑を報じ続けたことが、世論という形をとった検察への圧力になったとの分析も高井氏は示した。

検察に猛省を促す

「国民の声は無視できない」との検察幹部の言葉には二つの面がある。国民の常識、良識を尊重するというのが一面で、これは当然だ。しかし、法の専門家ではない国民の声、それをプレイアップするメディアの論調に圧力を感じ、従うのでは、検察の存在意義はないだろう。検察に猛省を促すものだ。

8月15日に萩生田氏秘書への処罰が明らかにされた背景には強い政治的意思が働いていると私は考える。自民党両院議員総会で新総裁選出のための選挙を求める声が相次いだ。お盆休みに議員たちは選挙区に戻る。自民党支持者らは議員に「石破首相の下では自民党はもたない。早く辞任させて新しく出直してほしい」と要求するだろう。むろん少数の県ではその反対の声も出るだろう。いずれにしてもお盆明けの中央政界は烈しい権力闘争の場となる。首相、総裁の権限は強い。石破氏はあらゆる企みを展開するだろう。

その状況下、石破おろしの中心人物と見做されている萩生田氏を貶めることは、もし成功すれば石破氏への強い追い風になるやもしれない。そのような戦術は朝日の路線でもあろう。最大限の萩生田攻撃と、最大限の石破擁護及び政権延命はセットである。朝日の15日の記事からはその意図が明確に読みとれる。以下要旨である。

⓵旧安倍派の実力者、萩生田氏の政治責任はとりわけ重い、⓶「秘書が『政治とカネ』で起訴されたら自分なら議員辞職する」と公明幹部が指摘、⓷「議員辞職して出直し選挙に出るしか復活の道はない」と旧安倍派の参院議員、⓸安倍晋三元首相は、公設秘書が略式起訴された際、記者会見した。萩生田氏も新たな説明の場を求められる、⓹裏金問題の余波は「石破おろし」の動きに影響を与える。

国民の怒り

一見して朝日の報道のおかしさが分かる。萩生田氏はこれまで説明責任を逃れようとしたことはない。事件発生後、全メディアを入れて、制限時間なしで、全質問に答えた。国会での政治倫理審査会にも出席するつもりだったが、自民党執行部が萩生田氏は派閥事務に関わっていなかったとして、出席は不要とした。にもかかわらず、党は出席しなかったことを理由として去年の衆議院選挙で萩生田氏を公認しなかった。無所属で戦って当選した萩生田氏は24年12月18日、政倫審できちんと説明責任を果たした。

選挙期間中に自民党は2000万円を萩生田氏に振り込んだ。萩生田氏は党所属でもない自分にこんなカネはおかしい、政治資金で国民の不信を深めている時にどういう意図かと憤って、直ちに自民党に返却した。

この2000万円事件は幹事長の森山裕氏が「自分の判断だった」として謝ったが、実は石破氏の指示だった。そのことを私は複数の党中枢の人物から聞いている。

まるで萩生田氏が説明責任を果たさず頬かむりしてきたかのような朝日の記事は、首相に近い村上誠一郎総務大臣の言葉で終わっている。

村上氏は「裏金問題」に触れて「負の遺産が今回の選挙の敗因だ。敗因を作ったみなさんが首相の責任を問うのは身勝手ではないか」と述べた。

朝日の言いたいことはこれなのだ。自民党敗北は政治資金不記載問題ゆえで、石破氏の責任ではないと言いたいのだ。だが真実は、国民の怒りは石破氏の政策や政治姿勢に対するものなのだ。それを忘れてはならない。

朝日が言い続けた「裏金事件」が終わっていないとすれば、『週刊文春』が複数回報じた石破氏の3000万円不記載疑惑はどうなのだ。朝日はなぜ追及しないのか。石破裏金疑惑には決して触れない朝日の報道は一文字たりとも信用できない。

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