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2026.03.26 (木)

「 航行の自由確保で、高市政権の正念場だ 」

『週刊新潮』 2026年3月26日号
日本ルネッサンス 第1188回

自民党政調会長特別補佐の鈴木英敬氏は週末、三重県の選挙区に戻ると、まずはガソリンスタンドを集中的に回ったという。氏が語る。

「わが国には石油の備蓄があるから安心だという説明はもう十分ではない。今、スタンドが心配しているのは目先よりも9月、10月のことです。1リットル200円に上がることよりも、石油が入らなくなるほうが恐いと口々に言っていました」

高市早苗首相は1リットル170円以上にはしない、45日分の石油備蓄を放出すると、早目早目にメッセージを出したが、今や最重要課題はホルムズ海峡の封鎖を一刻も早く解くことだ。トランプ米大統領にとっては、11月の中間選挙で勝つ絶対条件がガソリン価格の上昇阻止である。

必死のトランプ氏は3月14日、中国、フランス、日本、韓国、英国といった、いずれも中東の石油への依存度が70~90%以上の国々に、ホルムズ海峡封鎖解除に向けて、艦船派遣を要請した。

翌15日、英紙『フィナンシャル・タイムズ』による8分間の電話取材に、中国及び北大西洋条約機構(NATO)について氏はこう語った。

「中国には3月末からの(自身の)訪問前に海峡封鎖解除の支援を期待する。彼らは石油の90%をホルムズ海峡経由で輸入している。首脳会談まであと2週間、(中国の協力を)それまで待つのでは遅すぎる」

その上で17日には、最終的に訪問の1か月延期を決定した。

習近平国家主席は国内経済を好転させるため、米国との関係改善を切望している。トランプ氏訪中に大きな期待を寄せ、中国の力の回復をもたらす大戦略を仕掛けようとしているのが現状だ。是非とも中国に来てほしい。それに対して、トランプ氏は訪中延期を決めたわけだ。

他方、NATOに対して、「必要なことは何でもしてほしい。彼らには米国よりも多くの掃海艇がある。派遣すべきだ」と要求した。

さらに、「米国はイランに強力な攻撃を加えているのだから、欧州はホルムズ海峡に軍を送り、ドローンや機雷攻撃で面倒を起こすイラン勢を撃退してほしい」と語っている。

命がけの任務

中国共産党の宣伝メディア、環球時報は「これは責任の共有なのか。それともワシントンが始めたものの終わらせられない戦争のリスクの共有か」と冷笑する論評を掲載した。

高市首相はこんな状況下の日本時間の今週木曜19日にトランプ氏とホワイト・ハウスで会談する。トランプ氏がわが国にも艦船派遣を要請済みであることは先述した。

石油の90%以上を中東諸国に依存し、ホルムズ海峡の航行の自由が生命線であるわが国が、当海峡の安全運航維持に力を尽くすのは当然だという見方は、トランプ氏のみならず、国際社会の見方でもあろう。

だが自民党政調会長、小林鷹之氏はわが国の憲法上の制約を念頭に、慎重姿勢を崩さない。その姿勢を支えるのは、米・イスラエルの対イラン攻撃が国際法に適合しない場合、集団的自衛権の発動を可能にする存立危機事態の認定は、わが国の法律上、無理だという理屈である。

右の主張は1991年、米軍を中心とする多国籍軍のイラク空爆の時と同じである。同年1月17日に空爆が始まり、2月24日から4日間の地上戦闘で戦いは終わった。

日本は当初、サウジアラビアを中心に展開する米軍のための人員、兵器、装備、食糧などの輸送(エア・リフト、シー・リフト)協力を要請された。だが、憲法9条第2項の解釈の延長として、兵器や兵員の輸送は集団的自衛権の行使となるので、行えないと日本政府は主張した。ちなみに当時の日本の中東石油への依存度は70%、今は90%以上だ。

なぜ、米軍に協力できないかというわが国の説明は、どの国にも到底理解されなかった。結局、増税までして130億ドルを拠出したがこれも全く評価されなかった。当時、駐米大使を務めていた村田良平氏が回想録で詳述しているが、わが国は全てをカネで済まそうとする卑怯な国として蔑まれた。そんな汚名を何とか返上しようとして決定されたのが、わが国の優れた掃海技術を活用することだった。掃海艇4隻、掃海母艦、補給艦の6隻の部隊が停戦2か月後にはペルシャ湾に向かった。当時、海上幕僚監部にいた古庄幸一氏が語る。

「ペルシャ湾まで約ひと月かかります。掃海任務は非常に危険で、私たちは犠牲者が出ることを覚悟して部隊を送り出しました。日本隊が到着すると、他国の掃海部隊が大方の掃海を終えていました。残されていたのはとても難しいところだけ。彼らは私たちに『俺たちの手には負えない。日本がやってくれ』と言いました。掃海艇4隻に隊員120人が乗ります。私は万が一に備えて各船に棺を10個ずつ、用意させました」

海自チームは4月から5か月、暑さの非常に厳しい海で命がけの任務に挑んだ。処理した機雷は34個、1人の犠牲者も出さなかった。

奈落の底に…

村田氏は海自のこの尊い努力が、「カネだけで終わらせようとする卑怯な日本」という国際社会に広がった不名誉を消し去ってくれたと、外交の現場で感じた旨、書き残した。

わが国はいままた同じ問題に直面している。GHQの定めた憲法に基づいた多くの縛りゆえに、まともな国として行動できないわが国をどう変えるのか。どのようにしたら普通の国になれるのか。再び35年前の湾岸戦争時と同じ過ちを犯してはならない。

シンクタンク、国家基本問題研究所の企画委員で元防衛庁情報本部長の太田文雄氏が指摘する。

「アメリカが求めているのは船舶の護衛です。戦争中だから何もできない、ではなく、自衛隊法に基づいて海上警備行動のために海上自衛隊の護衛艦を派遣するのがよいと思います。次に国会でホルムズ海峡での船舶護衛を正式の任務とする特別措置法を成立させ、その時点で海上自衛隊に船舶護衛の任務を与える。これは2009年にアデン湾での海賊対処の時に使った手法です。今回もそれに倣うのがよいと思います」

自民党幹部が語った。

「トランプ氏は中国にも協力を要請しています。日本が掃海艇派遣も含めて消極的な態度を貫き、中国が米国を助けることになれば、日米関係は相当悪化すると思います。中国はジブチに大きな基地をもっており、船も多い。自衛隊の基地もありますが、わが方の船は1隻だけです」

わが国の力は中国よりは明らかに小さい。軍の在り方も異なる。かといって、この局面で判断を間違えば奈落の底に落ちかねない。20年、安倍晋三首相の下で防衛省設置法に基づいて、民間船舶の護衛を「調査研究」の名目で可能にした事実もある。あらゆる知恵を使って、ホルムズ海峡の航行の安全確保を、米欧諸国と共にやり遂げることが国益である。現実をしっかりと見て、行動すること。高市政権の正念場である。

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