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2022.12.01 (木)

「 中間選挙が米国の新出発点となる 」

『週刊新潮』 2022年12月1日号
日本ルネッサンス 第1026回

米国の著名な政治学者、ウォルター・ラッセル・ミード氏が「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙でアメリカの展望について楽観的見通しを書いていた。氏はアメリカ合衆国の国歌から「ああ、星条旗はまだたなびいているか? 自由の地、勇者の故郷の上に!」の一節を引用して、アメリカの未来は大丈夫か、と自問した後、「中間選挙で米国の秩序(維持)は再確認された」と書いている。大丈夫だということだ。

全米で行われた上下両院議員及び州知事選挙の結果については、「米国は、国民の決定を尊重し、国民の意思を基盤とする極めて安定した国家である」ことを証明したと、非常に前向きだ。

中間選挙ではトランプ前大統領が推薦した上院議員候補の内、少なからぬ人々が落選した。ニューハンプシャー、ペンシルベニア、コロラド、アリゾナ、ネバダ、全て落選で共和党の力強い過半数制覇は夢に終わった。大差での勝利が予測されていた下院でも、共和党の議席は最大で218の過半数をわずか4議席上回る222にとどまる。

中間選挙は歴史的に見て、およそいつも政権与党が不利である。今回も民主党大敗はいわば予定調和だった。それが下院での過半数は失ったとはいえ、予想をはるかに上回る善戦をした。この結果はトランプ氏のせいだと多くの専門家に分析され、中間選挙の最大の敗者はトランプ氏だと断じられている。氏が2020年の大統領選挙の敗北を認めず、自分の主張に追随する候補者を推薦したために、質のよくない候補者が各選挙区に立ったという批判も根強い。とどの詰まり、トランプ氏が有権者の共和党離れを引き起こしたと結論づけているのだ。

トランプ氏の大衆への働きかけ、その吸引力を恐れて、表立ってトランプ批判ができなかった共和党は中間選挙で覚醒したといえる。いまや、アメリカの未来への信頼と期待は、➀脱トランプ、➁脱バイデンへの熱望と表裏一体である。米政界において広範な世代交替の波が起きるのは避けられない。

「トランプは3回も敗北した男」

バイデン大統領は11月20日で80歳になった。トランプ氏は76歳だ。両氏は対の関係にある。トランプ氏が11月15日、24年の大統領選挙に立候補すると発表し、バイデン氏はトランプ氏に勝てるのは自分だけだと信じて出馬をにおわす。2年後の大統領選挙は82歳と78歳の戦いになりかねない。

そんなことで大丈夫か。世界は今、プーチン露大統領がウクライナ侵略戦争で核を使用するかもしれないという瀬戸際にある。かつてない緊張の高まりの中で、いざ有事のとき、秒を争う決断が必要だ。バイデン氏は賢明に即断できるのか。気力、体力、知力は大丈夫か。誰しもが抱く疑問である。有事対応だけでなく、全ての能力において絶頂にある人物でなければ中国の習近平国家主席やプーチン氏に対峙して、米国及び西側社会全体を守り通すことは難しい。

バイデン氏の覚束ない歩行、か細い声、少なからぬ記憶違い。つい最近もカンボジアでの首脳会談で同国をコロンビアと言った。その前にはロシア軍がファルージャから撤退していると言った。ファルージャはイラクの都市だ。バイデン氏の肉体的、知能的衰えは隠しようがない。限界に近い人物にアメリカと西側諸国の安全を委ねるのは危険すぎるだろう。

11月10日から14日にかけて行われた「モーニング・コンサルト」の世論調査では、バイデン氏の再出馬を望まない人が65%に上った。同じ数字がトランプ氏についてもはじき出された。また別の調査では、両氏が出馬するなら、第三の候補に投票すると60%が答えた。アメリカ世論は明らかにトランプ、バイデン両氏を拒絶している。

そこで問題はトランプ氏である。氏の出馬を止めることができればバイデン氏の出馬も止められる。トランプ氏にはまだ熱狂的な支持があるとも言われるが、氏の最愛の娘、イヴァンカは、インスタグラムでトランプ氏のキャンペーンにも政治にもかかわらないと発信した。FOXもCNNも、トランプ氏の11月15日の出馬表明演説を冒頭だけ報じて途中で切った。

トランプ氏には政治資金が集まりにくくなってもいる。たとえばトランプ氏を支えた共和党に20年まで総額370万ドル(約5億円)を献金したブラックストーン社のCEO、シュワーツマン氏は「これからは共和党の新世代候補を支持する」と語っている。ヘッジファンド、シタデル社の創業者、グリフィン氏に至っては、「トランプは3回も敗北した男だ」と非難し、フロリダ州知事のロン・デサンティス氏支持を宣言した。

民主党の衰退は当然

3回の敗北とは、トランプ氏が大統領だったときの中間選挙で敗北したこと、20年の大統領選挙で敗北したこと、今回の中間選挙で敗北したことを指す。一方、デサンティス氏はトランプ氏の主張に全く同調せず、トランプ氏から激しく非難されながら、フロリダ州知事選で圧勝した。前回の知事選では3万数千票、0.4ポイントの僅差で勝利したが、今回は20ポイントもの大差での勝利だった。トランプ氏に従わなかったことは有権者に大いに評価された。

大統領候補について、民主党の状況はお寒い。本来なら副大統領のカマラ・ハリス氏が本命となるが、バイデン氏は彼女の能力欠如に目をつぶり、アメリカ社会の多様性を重視して、女性で非白人という視点でハリス氏を選んだ。アメリカ大統領府は副大統領も含めて全てにおいて賢く強くなければならない。そのことを忘れ、建前にこだわって間違った選択をした結果である。民主党の衰退は当然だろう。

他方、共和党は人材豊富だ。先述のデサンティス氏について、シンクタンク「国家基本問題研究所」研究員、島田洋一福井県立大学教授の指摘だ。

「彼は一期目の4年間、無党派層に支持を広げるには穏健路線を歩むのがよいとする考えを排して明確な保守の旗を立てました。左からの激しい攻撃にもたじろがず、リベラル色の強いフロリダで学校教育における自虐史観を否定し、子供の教育に関して両親の権利を重視しました。エネルギー問題でもいわゆる運動家の主張を悉(ことごと)く排除しています」

44歳のデサンティス氏に加えてバージニア州知事で55歳のグレン・ヨンキン氏ら新しい世代の政治家が揃っているのは、アメリカにとってだけでなく、日本にとっても心強いはずだ。

来年1月からは下院で多数をとった共和党が議長及び全委員長のポストを確保して議事運営の鍵を握る。注目の一人が下院外交委員長に就任予定のマイケル・マッコール議員だ。氏は台湾を事実上のアメリカの同盟国に格上げする台湾政策法の提出者である。米国は確実に中国に対してより厳しい政策を打ち出すだろう。共和党主導の米国と力を合わせることが日本の国益に適うはずだ。

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