「 米中戦略経済対話が突きつける自立国家としての日本の活路 」
『週刊ダイヤモンド』 2009年8月8日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 800
7月27日、28日の両日、ワシントンで米中戦略経済対話が持たれた。冒頭、オバマ大統領は「米中関係が21世紀を形づくる」「米中関係はいかなる2国間関係よりも重要」「この重要性がわれわれのパートナーシップを支えており、われわれは共に世界に責任を持たなければならない」と述べた。
米中が世界の枠組みを決める意気込みである。大統領が挙げた課題は経済再生、エネルギーと環境、核不拡散、国際テロの4点だった。
各分野で米中が打ち出す戦略は、間違いなく日本に特大の影響を与える。それだけに、日本が厳しく分析しなければならない点は多い。たとえば、中国が購入する米国債に注目するあまり、オバマ政権が中国に配慮し過ぎる場合のアジア戦略への影響。オバマ政権が民主主義や自由とはほど遠い中国の異質性に真剣に向き合わず、米国の国内経済の改善に集中する場合の世界への影響などである。
いずれも究極論に問われるのは、米国は日米同盟と米中関係のどちらを優先するのかということであり、米国の選択に対する日本側の準備をどう整えるかということだ。
核不拡散を例に考えてみる。大統領は、「米中双方共に、テロリストが核を入手したり、東アジアに核武装競争が起きてはならないと考える」と述べ、「朝鮮半島の非核化」「イランの核開発の阻止」を具体的に挙げた。
だが、米国で今年1月に出版された『核の急行列車・核拡散の政治的歴史的背景』によれば、第三世界への核拡散に手を貸してきたのは、まぎれもなく中国である。
同書の著者はT・リード、D・スティルマンの両氏。リード氏はレーガン政権での国家安全保障会議の一員、スティルマン氏は原爆開発で知られるロス・アラモス研究所に28年間勤めた専門家である。
その2人が共同執筆で世に問うたことの一つは、1980年代、鄧小平氏の下で、中国が第三世界に核・ミサイル技術を拡散することを決め、実行したという点だ。北朝鮮のみならず、パキスタン、イラン、シリア、リビア、エジプト、イエメンなどへの技術拡散は中国を源流とし、現在でも、北朝鮮を中継国として技術移転が続いているというのだ。
大統領は、だが、そのようなことには微塵も触れない。むしろ、米国の戦略では「東アジアでの核武装競争」の阻止の対象は、日本ではないかと思わせられる。72年の米中国交樹立を前に行なわれたキッシンジャー氏と周恩来氏の対話では、在日米軍の存在は日本の暴走を抑えるのが目的で、中国を狙ったものではないと、キッシンジャー氏は明言している。米国の抑制がなければ日本は軍国主義へと逆行し、核武装に走る危険な国であるというのが、同氏の現在における認識でもある。
つまり、アジアの安定の基本は、米中協調体制の下で日本を抑制し続けることだという見方である。中国はそのような見方を歓迎し同調してきた。
この種の対日観は、じつは、今も米国に根強い。今年4月、ワシントンでオバマ政権の安全保障政策に助言する人びとと意見交換を行ったが、彼らは日米安全保障条約を機能させるために日本の軍事力の、法的、物理的なよりいっそうの整備を望みつつも、核となると、強い警戒感ないし拒否反応を示した。北朝鮮の核を事実上認め、インド、パキスタンの核をすでに認めた米国が、そうした国々をはじめ第三世界に核・ミサイル技術を拡散した中国よりも、長年の同盟国である日本のほうを警戒しているのは、じつに皮肉だ。
「G2」とも称される米中関係は日本にとって苦難の道だ。日本の活路を開くには、まず、なによりも、日本が自立国家として軍事、外交の双方で力をつけなければならない。
日本は今こそ自立すべし…
日本と言う国は、今までは基本的に米国の傘の下でのうのうとひたすら経済成長だけに特化して繁栄して来た、言わば奇形児です。経済においては、バブルの頃はあの米国をもしのぎ、世界最強の国にまで登りつめてしまいました。所が失ったものが非常に多いです。それは日本独自…….
トラックバック by わし的世界見聞記♪ — 2009年08月30日 20:53