「 力で攻める中国に心で戦うチベット 」
『週刊ダイヤモンド』 2009年6月6日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 791
ケルサン・ギャルツェン氏は、チベット亡命政府特使として2002年以降、中国側との接触を重ねてきた。
「公式の接触は8回、非公式は1回です。ダライ・ラマ法王の求めは、主として3つ、国際社会の倫理に沿う人権の推進、宗教に基づく和の確立、チベット人の価値観の擁護と存続です。政治的要求を出したことはありません。年来の言動からも、法王が平和ひと筋であることは、よく分かるはずです」
ギャルツェン氏は流暢な英語で語る。氏は1951年、チベットのカム地方に生まれた。7歳のとき突然、中国軍が攻めてきた。両親、祖父母、4歳年長の叔父、3人の伯母らとともに、首都ラサを目指して逃げた。父と祖父はレジスタンスに加わり、家族はゲリラ部隊に守られながら移動した。
「現在の中国の領土の約4分の1がチベットの国土でした。その広い国土に数百万人が住んでいた。小さな集落が点在していたわけです。私たちは隣村に逃げ、数日様子を見ました。中国軍が引き揚げれば、元の村に戻れると大人たちは考えたのです。けれど、中国軍はどんどん前進してきました。そこで避難先の村人らとともに、また、次の村に逃げるという感じでした」
中国軍が、チベット人を村単位で攻略した様子が見えてくる。軍隊と村人との戦い、勝敗は明らかだ。
やがて、ギャルツェン氏一族はじめ村人たちは、3月10日のラサ陥落を知った。彼らは全員、手に手を取ってインドに逃れた。
「インドにたどり着くまで、1年4ヵ月かかりました。歩きに歩いたことや、馬の背に乗せられて、落ちないように馬の背にくくりつけられたことを覚えています。私はまだ子どもでしたから、苦労の記憶は薄いのですが、父母や祖父母、おとなたちの苦労と悲しみはどれほどだったかと思います」
63年、日本でいえば中学生になる頃、氏はスイスに留学した。そこで成人し、バンカーに。大手銀行の幹部となった氏は83年、ダラムサラに戻り、中央チベット行政府の外務省でボランティアとして1年間働いた。
「自分の生きる意味はここにあると思いました。以来、祖国チベットのために働いています」
氏は今、スイスのチベット事務所でダライ・ラマ法王の代弁者として活躍する。流暢な英語はヨーロッパ人への訴えに欠かせない武器となった。
「これまでの対話や交渉で、中国政府は一度も、チベットの現状に問題があることを認めていません。チベット人は今のままで幸せだと主張するのです。ではなぜ、毎年2,000人から3,000人ものチベット人が、人民解放軍に銃で撃たれ、極寒のヒマラヤ越えで命を落とす危険を顧みず、ダラムサラに逃げてくるのでしょうか」
ギャルツェン氏の問いはもっともだ。チベットの現状にチベット人が満足し、幸せを感じているなど、まともな国なら、恥ずかしくて言えないだろう。
法王特使として、ギャルツェン氏らは、チベット語使用の許可、文化・宗教の保護など11の項目を要望として出した。しかし、中国側はまったく関心を示さなかった。ギャルツェン氏は語る。
「法王は21世紀には、国境は意味を失い、人類は人間の自由と平和への共感によって統合されていくと信じておられます。だからこそ、チベット人がチベット人としての文化と価値観を失わずに存続すれば、チベット民族の未来も失われることはないとおっしゃるのです。現状は厳しいのですが、私たちは今、チベット人であり続けることに全力を挙げなければならず、その点について、アジアの大国、日本の支援を望んでいます」
力で攻める中国に、心で戦うチベット。追い詰められているチベットの人々に、私たち日本人は無条件の支援を差し伸べたいものだ。
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▲【参考映像】インド南部にあるセラ寺。今回の記事はこのお寺にいる僧侶からの情報です。
チベット独立組織「チベットの声」(本部:ノルウェイ)によれば8月27日、中国共産党の強権統治に抗議するチベット人が、四川省甘孜チベット族自治州石渠県の蝦扎区公安局の中国国旗を引きずり降ろし、逮捕者が出たようです。
詳細は以下より。
▲四川省甘孜チベット族自治州石渠県蝦扎区
これはインド南部のセラ寺に住む石渠県の僧侶が信頼できる筋から「チベットの声」に伝えたもので、石渠県蝦扎区の恰擦扎西格培林寺の経堂大殿の開光…
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