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2006.04.13 (木)

「 いつ来るか、橋本氏の収支決算 」

『週刊新潮』 '06年4月13日号
日本ルネッサンス 第210回

多くのニュースの主人公たちを取材して感ずるのは、人生は帳尻が合うように出来ているということだ。

3月31日から4月1日のニュース報道、とりわけ『読売新聞』のスクープは、そうした想いをさらに深め、読む者の鼓動を思わず速め高めるものだった。

3月31日、『読売』朝刊一面トップには「中国側 機密執拗に要求」の大見出しが踊った。「自殺上海領事館員の遺書入手」「『館員情報言え』恫喝」の見出しに続き、「『次は暗号…』死を決意」との中見出しが目をとらえて離さない。記事は、遺書に沿って、女性問題で弱味を握られた日本の外交官が中国公安当局者に機密情報を要求され、死を決意するに至る心境を報じている。

『読売』のスクープから見えてくるのは、まさに「手段を選ばぬ情報戦」である。安倍晋三官房長官は同日の記者会見で「中国側公安当局による冷酷非情な脅迫、恫喝があったと認識している」と中国側を非難したが、全容が報じられた遺書からも「冷酷非情な脅迫、恫喝」がはっきりと窺える。自殺直前の中国公安当局者らとの最後の面談では外交官は約3時間にわたって詰問、恫喝されている。上の最後の面談は04年5月2日。外交官は4日後の6日に、再度、情報をもって来るように言われる。彼は、再度中国側と会えば自分の担当する通信システムの情報提供を強要されると察知するに至る。通信システムの情報を与えることは、日本国の暗号電文の解読情報を教えることだ。それは、日本国政府の情報を中国に筒抜けにすることである。

外交官は「もし、(彼らに)会ったら私は日本を裏切ることになりかねません」と書いた。情報を漏らすまいとしても、脅迫、恫喝の限りを尽くされ、自分の意思に反して喋らされるかもしれないという思いだろうか。そして次のように続けた。

「一生あの中国人達に国を売って苦しまされることを考えると、こういう形しかありませんでした」

外交官は遺書を認(したた)め、6日未明に領事館内で自殺を遂げた。

皮肉に満ちたタイミング

公安の目が国中に張り巡らされている中国で、この外交官は買春という過ちを犯した。その事自体、外交官としての心構えが出来ていなかったと批判されても仕方がない。しかし、彼は、渡せば国益を損ねることになる情報を要求されたとき、自分の命で全てを贖(あがな)った。命を捨てて国益を守ろうとしたその心を見せられ、彼を非難する日本人はいない。

そして同じ日、『読売』を除く他紙が一面トップで大きく伝えたのは日本歯科医師連盟(日歯連)から自民党旧橋本派への一億円裏献金事件で、政治資金規正法違反に問われていた元官房長官、村岡兼造氏に対する東京地裁の無罪判決だった。

東京地裁、川口政明裁判長は村岡氏を無罪とする一方で、判決文のなかで「派閥会長だった橋本龍太郎元首相や自民党の元宿仁事務局長に累が及ぶのを阻止するため、(会計責任者が)虚偽の供述をした可能性がある」と指摘した。各紙はその疑惑を見出しにとって、「日歯連1億円献金事件」「橋本氏あての可能性」(『毎日新聞』)「元会計担当の証言 信用性否定」「東京地裁『橋本氏らかばう』」(『朝日新聞』一面)「ヤミ献金判決 橋本氏らを批判」(『朝日新聞』社会面)などと報じた。

3月31日、各紙が一面から社会面まで割いて全力で報じた大ニュースの双方が、揃いも揃って、橋本元首相とは縁の浅からぬ縁のものだった。

そして、当の橋本氏はまさにこの同じ日、別のところでニュースの主役となっており、まず、31日のテレビ各局で、翌4月1日には、各紙で報じられた。氏は、日中友好七団体の団長として訪中し、胡錦濤国家主席と会談していたのだ。

靖国問題で日本を屈服させようと待ち構える胡主席は「A級戦犯が合祀されている靖国神社を日本の指導者たちがこれ以上参拝しなければ、首脳会談をいつでも行う用意がある」と1時間にわたって“講和”をしたそうだ。夕食会では唐家迺㍾走ア委員が、胡主席の発言は小泉氏以降の首相にも当てはまると述べた。

このニュースを各紙は翌4月1日、より詳しく報じた。日本への内政干渉の「重要講和」を聞いた橋本氏は「『率直な意見に感謝し、率直に受け止める』と述べるだけで目立った反論もしなかった」(『読売新聞』)そうである。

会談後、テレビカメラの前に立った橋本氏は、同日の村岡氏への無罪判決と橋本氏への疑惑が示唆されたことについて聞かれ、不機嫌そのものの表情だった。政界を退いた氏にとって久々のハレの舞台となるはずだった日中友好七団体の団長としての訪中は、地裁の村岡判決で、台なしにされたも同然だった。ただ、この先には高裁、最高裁があり、日歯連事件の決着はまだ必ずしも見えてはいない。

橋本元首相と中国人女性

橋本氏を見ていて、私は心中深く、外交官自殺事件との関連で氏の胸の内を忖度せずにはいられなかった。女性問題で弱味を握られながらも中国の恫喝に最後まで抗った一外交官。同じく女性問題で中国に弱味を握られていないかと疑われ、そのことをかつて国会で質問された橋本氏。

国会での質問に橋本氏はまともに答えることも、説明責任を果たすこともなかった。それでも疑惑を乗り切った氏は、言うまでもなく一外交官とは異なり、閣僚や首相を歴任した重要人物だ。氏の相手として疑われた中国人女性については、雑誌『諸君!』98年6月号で加藤昭氏が詳しく報じたが、それによると、女性は中国厚生省の官僚で、日本から無償のODAを引き出す任務を与えられ、橋本氏に接近したという。中国官憲の女性が日本の権力者に近づいて交際していたという十分な疑惑があったと、メディア及び国会で指摘され質問されても、氏はきちんと答えられなかった。先の外交官よりもはるかに重大な弱味を氏が中国側に握られている可能性は否定出来ないと言ってよいだろう。

その当人が、『読売』のスクープと同時期に新聞やテレビニュースに登場することの皮肉を何と形容すればよいのか。

かつて、イギリス陸軍大臣のプロヒューモはソ連と通じていた高級娼婦と関係し、国家の軍事機密漏洩事件で辞職した。保守党の「輝かしい星」とされていた彼は、辞職後はひたすら社会奉仕活動に身を投じ、世間の表舞台に出ようとはしなかった。エリザベス女王が彼を許し、反省に基づいた地道な社会奉仕活動を讃え、大英帝国勲章を与えたのは、彼の辞任から実に12年後だった。今年3月9日にプロヒューモは死去したが、英国人は、「スキャンダルよりもその後の社会貢献の功績で記憶されるべきだ」として彼を讃えた。

人生は本当に、収支決算が合うように出来ているのだ。

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