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2006.01.28 (土)

「 教育問題の根源は親にあり “親業教育”に多くを示唆する会津藩『日新館』の優れた教え 」

『週刊ダイヤモンド』    2006年1月28日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 626

日本の教育でいちばんの問題が、じつは親たちにあるということは、教育の実情を取材してみると意外に容易に見えてくる。むろん、子どもたちの非行や不登校、学力低下の責任が親だけにあるわけではない。しかし、少なくとも、親が主要原因の一つであることは確かだろう。

米国では早くも1960年代から、親のあり方、家庭のあり方が子どもたちに決定的な影響を及ぼすことを認識し、“親業教育”に力を入れてきた。親はどのように子どもに接し、どのように子どもを教育したらよいのか、よい親になるにはどんなことを心がければよいのかを教えるのが親業教育だ。日本では、教育改革国民会議が2000年に、親こそが子どもの人生の最初の教師であり、大きな責任があることを指摘した。現在、栃木、埼玉、滋賀、大阪、兵庫、奈良の六府県が、親教育(親学)の実施に向けて具体的内容の開発に着手したと、明星大学の髙橋史朗教授は指摘する。日本で本格的な親教育はこれからだといえる。

よい親になる教育は、親も含めた人間教育そのものに行き着く。人間教育という点で、ある種の懐かしさと感動を伴って迫ってくるのが、会津藩の日新館の物語だ。『日新館童子訓 現代語訳』{松平容頌(かたのぶ)著、土田真鎮現代語訳、三信図書}によると、会津藩の教育施設は、藩祖保科正之が1664年に学問所、稽古堂を設置したのが始まりだという。その後、五代藩主松平容頌が学問所を大拡張し、文武教場として日新館に改めた。

日新館の教えは優れたものだったが、朱子学と素読を中心とするもので、そこで学んだ幼少者がその教えを日常の倫理・行動に当てはめるのには無理があった。そこで、日本の倫理や伝統を踏まえて具体的事例を多く盛り込み、漢文ではなく和文で書いたのが『日新館童子訓』だ。武士の子どもたちがどのように教育され、躾(しつ)けられたか、当時の生活に即した七五話の具体例が入っているために、手に取るように理解できる。読んでみれば、人それぞれに感じ入る点は異なるだろう。しかし、武士階級に限らず昔の日本人の慎み深い挙措を思い出すとき、以下のくだりはなるほどと思わせる。

「父や母の前で、ものを吐いたり、げっぷをしたり、くしゃみやあくびをしたり、よだれ、はなみずをたらしたり、わき見、背伸び、物によりかかるなどしてはいけません。いずれも人に対してきわめて失礼な態度なのですから決してしてはなりません」

現在では考えられない挙措行動の美しさを、武士の子どもたちは幼少から教えられていたのだ。ほかにも、寒暖に負けて手を懐に入れたり、扇子であおいだりすることなども禁じ、下着をのぞかせるなどの見苦しい行為も戒めている。

そして、「父母が年老いて」そのようなことをしてしまうようになったときには、「それは年をとったせいですから、そのときは、父母が他人に対して恥ずかしい思いをしないように、人目にふれぬよう、ふきとってあげなさい」「父母が他人に気遣いをしないですむように努めなければなりません」と説いている。

世界一の高齢化社会を迎えている日本に、このような思いやりが世代間を超えて存在すればどれほどすばらしいことかと思う。「童子訓」の教えがそのまま現代社会に残っていることはありえないが、会津にはそれでも、その気風、その文明の香りが残っていると指摘するのは、福島県知事の佐藤栄佐久氏である。彼らを描写するのに“気骨”という言葉がふさわしいとは、多くの人が納得することだろう。彼らの美点を育んだ日新館の教えは、よき親になりたいと願うおとなにも、未来を担う子どもたちにも、多くを教えてくれるはずだ。

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トラックバック: 21件

  1. そんな思想伝えなくて良し!!

    またしてもこんなニュースがありました。

        msnニュース

    このての教師のことについては過去にも書きましたが、

    やっぱり許せな…

    トラックバック by ☆独断雑記 XYZ — 2006年01月30日  11:51

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    お茶の水女子大学教授
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    ■プロフィール
    ふじわら まさひこ
    昭和…

    トラックバック by 草莽崛起 ーPRIDE OF JAPAN — 2006年01月30日  18:53

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    「日本の息吹」2月号に掲載されている中西輝政京都大学教授の論文を転送いたします。ご参照いただければ幸いです。

    ■プロフィール
    なかにし てるまさ
    …

    トラックバック by 草莽崛起 ーPRIDE OF JAPAN — 2006年01月31日  07:18

  7. 皇室と王制との相違を知ればわかる男系の意義竏鋳・シ輝政京大教授

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    …

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    ホリエモン事件について考えてみたい。
    まずその事件の背景だ。実体の無いものを大きく見せかけ、欺いた。違法行為もさることながら、道義的、倫理的にもさばかれ…

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    トラックバック by 草莽崛起 ーPRIDE OF JAPAN — 2006年02月01日  07:34

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  11. 教育というものは・・・・

    人気プログランキングに参加しています。

    私も一応は親である。

    学校にとってはうるさ型といわれる保護者である。
    いろいろな問題を起こす生徒の親にとって…

    トラックバック by 手前ら、日本人なめんじゃあねぇ — 2006年02月01日  10:55

  12. テンプレート変更・天皇のまつりごと

    久しぶりにテンプレを変えました。

    なめ猫♪という名前にちなんで猫ちゃんのテンプレにしてみましたぁ。
    どうでしょうか?

    ところで皆さんにお願い…

    トラックバック by なめ猫♪ — 2006年02月01日  19:20

  13. 日教組 ~日本をダメにする自虐教育~

    “日教組”と聞いて、良いイメージを連想する日本人はどの位いるのでしょう?

    多いとは思えません。

    しかし教育現状を見てください。

    彼らの狙…

    トラックバック by ☆独断雑記 XYZ — 2006年02月03日  13:39

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    トラックバック by よろずBLOG — 2006年02月17日  12:24

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    皆さんは如何でしょうか?

        <家庭の教育力>9割が「低下」、背景に過保護 北海道調査
      
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    何故、日本の教科書に他国がいちいち絡むのでしょう?

      教科書検定で「日韓関係険悪な局面に」…韓国メディア
      
                  …

    トラックバック by ☆独断雑記 XYZ — 2006年03月30日  11:00

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    トラックバック by ほそかわ・かずひこの BLOG — 2006年03月30日  20:09

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