「 法案成立前に人件費も決め大学の裁量権を奪い去る国立大学法人化案の無謀 」
『週刊ダイヤモンド』 2003年7月12日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 501回
今、私の手元に「平成16年度国立大学法人教職員数試算基準(案)」と書かれた文部科学省の書類がある。国立大学法人化に関する書類で、注1に「本基準は、平成16年度概算要求参考資料(基礎額等調)に係わる教職員数調の各様式を作成する上で必要となる試算方法を示したもの」とある。
人事にまで踏み込んだ細かい指導が、法律も通らない前に、すでに行われているのだ。
「標準教職員数」は5分類され、それぞれ学部学生数に基づく標準教職員数、大学院学生数に基づく標準教職員数などと示されている。学部の場合、「文学、教育学」「法学、経済学、社会学、社会福祉関係」「理学、工学、農学、薬学、体育、栄養学、保健衛生」「家政、美術、音楽関係」「医学関係」「獣医学関係」に細分され、それぞれ学生何人につき教職員は何人、と定められている。
国立大学法人化は、人事、予算、組織などの面で大学の裁量を大幅に増やし、自由闊達な研究を可能にしていくためだったはずだ。ところが、遠山敦子文部科学大臣以下、資料が示すように、きっちり教職員数まで定め、大学から人事上の裁量権を奪い去ろうとしているのだ。同資料には、大学院、教員養成系学部、専門職大学院、連合大学院まですべてに学部同様の細かい規定が定められ、文科省の厳しい支配が見えてくる。
もっと驚くのは、人件費もすでに厳密に決められていることだ。
「人件費試算単価表(案)」は、ごていねいにも国立大学を5グループに分け、各大学の学長、理事、監事以下、教授、事務職員、医療技師、看護師など全職種の給料を定めている。
東京大学、東京医科歯科大学、東京芸術大学、東京工業大学、東京商船大学、東京水産大学、お茶の水女子大学、政策研究大学が一つのグループだ。なぜ、これらの大学が同一でなければならないのか、私には理解できないが、右グループには調整手当てが付いて、12%増しになっている。
学長と理事が基本給1203万6千円で、期末手当てや勤務手当てが加算されて年額1920万7千円。法律によって必ず2人置かなければならなくなった監事は年額1521万3千円、教授は945万4千円だ。
2つ目のグループは、京都大学、東京外語大学、一橋大学、大阪大学など15大学だ。基本給はどのグループの大学も同じだが、調整手当てが異なる。このグループの場合、10%である。結果として、学長と理事が年額1888万3千円、監事は1495万7千円、教授は929万3千円である。
3つ目は調整手当て6%のグループで、埼玉大学、千葉大学、九州大学、九州工芸大学、総合研究大学がここに入る。学長と理事は年額1823万2千円、監事は1444万2千円、教授は897万円。
4つ目のグループが、調整手当て3%の北海道大学、東北大学など17大学で、学長と理事が同1774万5千円、監事が1405万6千円、教授が872万9千円である。
その他の大学は調整手当て対象外グループとされ、学長と理事は同1725万7千円、監事が1367万1千円、教授は848万7千円である。
すでに気づかれた読者も多いことだろう。なぜ、学長と理事が同じ給料なのかと。なぜ、文科大臣が任命し、理事職とともに天下りポストになると見られている監事の給料がこれほど高いのかと。そしてなぜ、教授がはるかに少ない給料なのかと。
こうして理事、監事が新たに580人も生まれ、彼らの給与は、なんと計97億円にも上る。大学法人化は、大学の自主より官僚の利益確保が目的だと断ぜざるをえない。日本を食いつぶす官僚たち。これを大学のためと言いつくろう遠山大臣らは恥を知るべきだ。












