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2002.02.04 (月)

「 安部英氏 名誉毀損裁判 控訴を私は堂々と受けて立つ 」

『週刊ダイヤモンド』 2002年2月9日号
オピニオン縦横無尽 432回

私事だが、1月30日に民事裁判の判決を受けた。薬害エイズ事件報道で帝京大元副学長の安部英氏から名誉毀損で訴えられていたのである。

判決は私の側の完璧な勝ちであった。この判決を、私は自分のためだけでなく、足かけ6年にもわたる長い裁判のあいだ、遠くは九州や北海道、長野や大阪などからも傍聴に来てくださった被害患者や家族の方々とともに、心から喜びたいと思っている。

安部氏が訴えたのは、拙著『エイズ犯罪・血友病患者の悲劇』(中央公論社)のなかの著述である。私は安部氏が加熱濃縮製剤の治験の開始を遅らせたのはなぜかという点を問う文脈のなかで、安部氏が治験の時期にメーカー各社から寄付を募っていたことなどを指摘し、「加熱治験の代表責任者としての安部氏は、メーカーに対しては絶対的優位に立っており、その立場で寄付を強要したとなれば大問題だ」、安部氏は「一体いかほどの金に染まって医師の心を売り渡したのか。この疑問を解くために、ぜひ三菱銀行板橋支店の安部氏の一連の口座を、公開してほしいものだ」などを書いた。

安部氏は上のくだりを中心として拙著のなかのごく一部を取り出し、名誉毀損であるとし、1000万円と朝日新聞に、私の著述が「原告(安部氏)の名誉を著しく侵害する不法行為に該当する」との広告を出すよう要求した。

「原告の請求をいずれも棄却する」とした判決のなかで、裁判所は拙著の報じた内容で問題とされた箇所を六つの争点に整理し、いずれも「真実である」または「真実と信じるについて相当の理由があり、被告(筆者)には故意又は過失がない」と認定した。

『エイズ犯罪……』を執筆した1993年から94年にかけてのHIV患者を取り巻く状況は、今では信じがたいほどに強い偏見に満ちていた。東京地裁では東京HIV訴訟が進行中だった。取材は困難を極めた。患者の取材も困難だったが、製薬メーカーや医師たちの取材も容易ではなかった。

その点について判決は「薬害エイズの真相に迫るための最大限の努力を重ねた」としたうえで、当時の状況下では匿名でしか語ることのできなかった人びとへの取材を含めて「その調査資料や取材相手にも、特に信頼性に問題があるものはなく、むしろ、被告は、可能な限り直接的な情報を得るよう努めていた」と認定した。

判決の結論で拙著の記載は「原告(安部氏)の名誉を毀損するもの」だが、「その目的が専ら公益を図ることにあったことは争いがなく」と述べている。取材をして懸命に報じ続けてきた身としては、記者冥利に尽きる、とうれしい思いで聞いた判決だった。

安部氏側は直ちに控訴する方針だと報じられている。薬害エイズ事件で安部氏の責任を厳しく追及して、私同様に名誉毀損で訴えられた毎日新聞、保田行雄弁護士も、私同様、訴訟に勝っている。薬害エイズ報道は不当不法に安部氏の名誉を傷つけたという氏の主張は、3度続けて退けられたのだ。にもかかわらずの控訴である。

それにしても6年越しの裁判に、安部氏は一度も姿を見せなかった。3つの裁判すべてに一貫して姿を見せず、一言も語らずにきた。刑事法廷でも一度も本人尋問に応じなかった。応じれば安部氏は却って窮地に陥るとの判断が働いたと推測せざるをえない。しかし、メディアやジャーナリストや弁護士を訴えておいて、一度も法廷に姿を見せず、自らは一言も主張を展開しない姿勢には納得いかないのだ。

その安部氏との、これからも長くかかるであろう戦いを、私は一歩も引かずに受けとめる覚悟だ。6年越しの法廷を、一度も欠かすことなく傍聴してくださった遺族の方のためにも、私は堂々と戦っていこうと考えている。

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「 安部英氏 名誉毀損裁判 控訴を私は堂々と受けて立つ 」

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