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2010.04.10 (土)

「 改名申請者の数が増える韓国 国力を衰えさせる危うさはないか 」

『週刊ダイヤモンド』   2010年4月10日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 833

韓国人の50に1人は改名を望み、親がつけてくれた名前をむやみに変えてはならないという儒教の伝統がすたれつつある。3月31日付の週刊新聞「統一日報」のコラム「裏窓」がこのように指摘していた。

非常に興味深い。もう少しご紹介すると、韓国で改名はもはやスポーツ選手やスターだけのことではなくなり、一般人でも珍しくなくなってきているという。2000年から09年までの10年間の改名申請者は84万4,600人あまりに上った。05年以降急増しており、今後も申請者は増加し続け、今年は20万人を超えることが「確実視」されているそうだ。

いったい、05年に何があったのか。その年の11月、最高裁判所が改名の申請は、「原則的に許可しなければならない」との判断を下したのだ。法の網をかいくぐったり、犯罪隠蔽の意図が認められない限り、改名を許すべきだという司法判断で、許可率は92%に達している。

隣国の内政にむやみに口を挟みたくはないが、この判例には、現在日本で論じられている夫婦別姓・親子別姓法案と同質の危うさを感じる。いずれも、その国の伝統的価値観を根底から否定し、究極的にはその社会の基本部分に深刻な質的変化を及ぼすと思われる。

韓国最高裁の右の判断は、盧武鉉政権下で下された。左翼思想の盧大統領にとって、韓国の儒教の伝統は否定すべきもので、むしろ北朝鮮の金日成、金正日体制の価値観のほうが重要だったはずだ。儒教の伝統を軸に織り成してきた伝統的な家族の絆も、盧大統領は否定したかったのではないか。国家の基本の最小単位である家族の力を弱めれば、韓国の国力はおのずと衰え、相対的に北朝鮮有利に傾くからだ。

そのような大統領の考え方、つまり政権の動向に、司法が敏感に反応した結果が、改名容認の最高裁判断だと思われる。こう考えるのにはそれなりの理由がある。

当時の最高裁長官は現在もその職にある李容薫(リ・ヨンフン)氏である。氏は、金大中大統領に見込まれ、同政権のときに最高裁判事に任命された。2000年10月には判事を退任して弁護士となった。盧大統領が弾劾され、危うく大統領職から追放されそうになった04年には盧大統領の元に駆けつけ代理人として弁護した。弾劾を免れた盧大統領は、同年、李氏を公職者倫理委員長に任命した。これは公職にある人々の不正を正す役割だが、盧大統領の政敵つぶしの格好の手段となった。そして、李氏は翌05年9月、最高裁長官に抜てきされた。長官就任後まもなく下した判断が改名にまつわる判断だった。

韓国の人々の改名の理由は他愛ない。いちばん多いのは「珍名だから」。男児が欲しい、女児はもう欲しくないという意味で、両親が女児に「末順」や「終末」、日本風にいえば「末子」や「留子」的な命名が少なくないそうだ。

気持ちはわからないでもない。それでも幾十万人もが改名を希望するのは驚きである。つい、韓国の韓国人と日本の在日の人びとを比べてしまう。日本では民団を中心に民族のアイデンティティを大事にせよとの教育や指導が在日の人びとに行われている。民団は地方参政権取得には大層前向きだが、国籍取得には後ろ向きだ。その理由の一つが、帰化に際して改名を迫られるというものだ。しかし、日本政府が国籍取得の条件に改名を求めることは、もはやないのが実態だ。日本は民族の出自を名前に残すことを正当な希望として受け入れている。

民団はまた、在日の人々に文化的アイデンティティをも保たせようと努めているように思える。その姿は好ましいが、いつの日か、海外の朝鮮民族は本国の人びとよりもっと朝鮮民族的だといわれるような変化が本国で起き続けている気がしてならない。

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